目利き力のあるメディアを本誌は目指している。メディアで紹介されることにより投資家や他のメディア、スタートアップへの転職希望者からの認知が上がり、良いサイクルに入るという、かつての米国の「Tech Crunchループ」の構築を狙っているが、まだまだ道半ばである。The Startupで紹介されたスタートアップは確実に伸びる。そんなブランドを築きたいものだ。
そうした気概を立ち上げ当初から持っていたが、実際に今まで紹介してきたスタートアップは今どうなっているのか。2011年中に紹介した17サービスに関して、トラッキングし、傾向を分析した。メディアが煽っても大きく外れるサービスもあるため、メディアとしては過去を振り返って自らの目利き力のなさを振り返るコンテンツを出すなど自殺行為に等しいかもしれない。
そんな無責任なメディアにはなりたくないので、過去を振り返り反省し、今後も取り上げるサービスは厳密に選定するという姿勢を崩さないよう心掛けたい。まずは下記の表をご覧いただこう。2011年当時のThe Startupは2013年現在とは異なり、資金調達関連のリリースは取り上げていない。資金調達前(サービスローンチ直後など)にサービスを取り上げて執筆しているため、結果的に目利き力を問いやすいだろう。
堅調な伸びを示すサービスは6サービス(確率:35%)
図表の「サービス現況」の「○」に該当するサービスは6サービスとなった。億調達はレアジョブ、Retty、iQonとなり、数千万円調達でもZaim、talknoteは堅調にユーザー数を伸ばしている。スタートアップ企業ではないがクラウドファンディングのReady for?もプロジェクト数や成約額は伸びていっている。
「△」としたところでも、ロコンドは上り調子という話を聞くし、販売台数を公開していないテラモーターズも中長期的にtake offしてくる可能性は高いと見ている。ゆえに結果的には取り上げたスタートアップサービスのうち半数は堅調に伸びているといえよう。
事業売却は5サービス:売却後はサービスは堅調ではない?
17サービス中5サービスが事業売却という結果となった。ノボットのmedibaによる買収は2011年のスタートアップファイナンス業界では大きな話題となり、これは事業売却として成功したといって差し支えないだろう。しかし、買収後のAdmarkerの調子はすこぶる良い訳ではなさそうで、動きが激しすぎるスマホアドネットワーク業界では現在あまり話を聞かない。
他に話題になった事業売却はリブリスを運営するkamadoのmixiへの売却と、ソーシャルランチのDonutsへの売却。この2社の売却価格は2億〜3億円程度と噂される。両案件ともいわゆる「Aqqui-Hire」と言われており、人材採用のための買収。買収先とサービスのシナジーは高いとはいえず、サービスのアクティブ率は低下傾向にあるといえよう。この売却が社会的に成功というか否かは賛否両論分れているだろう。賛否両論分れていること自体も他のメディアでは報じられませんね。
my365に関してはサービスリリース2日後に本誌で取り上げたが、結果的には「シロク」としてサイバーエージェントの子会社となり、DL数の伸びも100万DL突破以降は会社の公式リリースにはない。カンバン娘も事業譲渡したと聞いていますが、サービスのアクティブ率はかなり低そうです。
撤退ないしは厳しいサービスは6つ(確率:35%)
上記の事業売却でリブリスは注力していないようだし、ソーシャルランチは就活生向けにピボットしている、よって事実上の撤退と見なして差し支えはないだろう。カンバン娘も上記の通り。
grow!やwonder shakeは2011年メディアでそれなりに話題になったが、この2つのサービスも撤退し、全く別の事業を手掛けている。ピボットというレベルではなく、全く別と言ってよいだろう。Nagisaに関しては当時紹介した購買履歴のBlippy的なサービスはローンチすらしていない。最近はカメカメラで話題ではあるようだが。
結論:1/3が伸び、1/3が停滞、1/3が撤退
確率的にはこんな結論に。ベンチーマークがないが(他のメディアを目視で調べれば出せますが、そこまではやりません)一つのメディアの事例としては参考になるかなと。
何が言いたいかという、メディアは無責任過ぎるのではないかということ。結局、伸びないサービスばかりを紹介していると「このメディアが言っていることは信頼できない」となり、メディアのブランド価値は毀損していくでしょう。Tech Waveなどはその最たる例かと思います。学生ベンチャー系を推しに推して、それらはほとんど外れているといって差し支えないかと。虚構新聞かと思われる信頼性のないメディアに失墜してはなりません。
私もこの17サービスに関しては「伸びる!」と推したものもあれば、紹介に留めた程度のものもあるでしょう。しかし、紹介しているということは少しだけは推していることと同義と見なされるので、外したサービスが6つもあることに関して非常に反省しています。読者の皆様にお詫び申し上げます。
当時のThe Startupは立ち上げ当初だったこともあり、特に書いてくれという依頼は今ほど多くはなく、ネット上で拾った情報を元に自分なりに考察していました。最近は依頼されることも多いですが、依頼された場合はほとんど断っています。私個人のポリシーとしては価値ある情報を伝えるべきだと考えており、すぐに撤退する事業の情報に価値があるとは思いません。堅調に伸びて人々の生活をより良くするインフラになるようなサービスを広く伝えることに価値があると考えています。
多くのメディアに目利き力はさほどないと言っても過言ではないでしょうし、そのメディアを通した情報を鵜呑みにする多くの読者にも目利き力はあまりないでしょう。(もちろん一部はあると思いますが、比率の問題)だからこそメディアは読者を騙さないためにも、プライドを持って情報を伝えるべきでしょう。結果的に流行らなかったサーヴィスをあたかもイケているように伝えてしまうのは読者に対する背任行為であるといえます。市場の自浄効果でそういったメディアは信頼されなくなっていくと思いますが。
過去の自分のヒット率を算出して、今後取り上げる個別スタートアップ銘柄に関してはより慎重になろうと改めた思った次第であります。
【参考記事】
当時のタイトリングは神がかり的に下手くそですね。タイトル長過ぎる…。最近は少しは改善されたかと思います。読むに耐えない記事も多く紛れ込んでいますが、参考までに。
・アトランティスとノボットの比較で見る、広告配信モデルのスタートアップのExit戦略とは?
・コスト構造や月額課金モデルから考察するレアジョブのビジネスモ
・購買履歴共有サービスの今後〜
・EVのテラモーターズの成長の鍵
・日本版ザッポスになり得るか?謎の「ロコンド」の正体に迫る
・人々を『ほっこり』させる永続的なコンセプトを持つgiftee
・マイクロパトロンプラットフォームの『Grow!』をGrow!
・Wonder Shake:ジオロケーション×テイストグラフ=精度の高い『
・マネー・コミュニケーション・
・味気ないコマースを一変し、モノにストーリを付加する「
・イート系テイストグラフ「Retty」が満たすアンメットニーズと今後のポジショニング
・Wonder Shake,Ready for ,Rettyを事例に見る「応援されるスタートアップ」のキャラの共通項
・iQonとRettyにみる成功するテイストグラフの特性
・Snapeee以上の衝撃を受けたライフアルバム写真共有アプリ「my365」
・toCからtoBへのピボットでブレイクの兆しが見えてきたTalknote、KDDIにテスト導入
・ランチの価値を「食事」ではなく「近所で気楽なmeet up」と再定義した「ソーシャルランチ」が再ローンチ
・AKB的な心理を突く「オフ」ラインto「オン」ラインでリアル店舗コミュニティ創造を狙うカンバン娘
注:デザイン変更前の記事なので、記事によってはものすごく見づらいですがご了承ください
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