Airbnbの競合、HomeAwayがシンガポール企業買収で本格的にアジア進出

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夏休みに入ったみややっこです。ポールグレアム率いるベンチャーキャピタルYcombinatordropboxredditに継ぐ代表的なスタートアップとして、「部屋を借りたい人と貸したい人のためのプラットフォーム」のAirbnbがあります。今回はAirbnbの競合であるHomeAwayがシンガポールのバケーションレンディングサービスtravelmobを買収したというニュースから、二つのサービスにおける世界展開と今後についてご紹介します。

料金形態からみるAirbnbとHomeAwayの登録物件の違い

まずは二つのサービスの基本についてご説明します。2008年に誕生し2009年のYcombinatorセッションに参加したAirbnbに対して、HomeAwayは2005年に複数の企業を買収して誕生しました。物件数・総取引数ともにHomeAwayが大きく上回っています。

Airbnbは物件の登録自体は無料でき、「気軽に余った部屋を登録できる」というコンセプトが強いのに対して、HomeAwayは登録に年会費がかかります。年会費のランクに応じて検索結果の表示位置が変動するため、不動産や宿泊施設の有効活用を積極的に行うことができます。そのため、一部屋だけの物件が比較的多いAirbnbに比べて、HomeAwayでは一軒家の別荘といった賃料が高く長期利用が可能な物件が目立ちます。
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Airbnbの低コストスピード重視の地域拡大方法

Airbnb、HomeAwayともに多額の資金調達と積極的な企業買収を行っています。この二つの点から、それぞれのサービスのスケール方法についてご紹介します。Airbnbは2009年から2011年の間に総額約1億2000万ドルもの資金調達を実施しています。

■Airbnbファイナンス概要

シード①:2万ドル(Y Combinator)
シード②:60万ドル(Sequoia Capital, Youniversity Ventures)
シリーズA:720万ドル(SequoiaCapital, GreylockPartners, SV Angel等)
シリーズB:1億1200万ドル(Andreessen Horowitz, General Catalyst Partners等)

出典:Crunch Base

この資金調達以外では、ヨーロッパの競合サービスや位置情報を利用したサービスを買収しています。CashpadderとAcceleoはヨーロッパ進出のための買収と考えられ、その後ドイツ国内やロンドン市内にオフィスを展開しています。LocalmindやFondu, NabeWiseは位置情報に基づいた 情報提供を行うサービスであり、アプリの強化を目的としての買収と考えられます。実際にAirbnbのアプリは非常に高い評価を受けており、全体のトラフィックの26%がアプリからの閲覧だそうです。

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このようにAirbnbは単に他地域に展開している競合を買収するよりも、サービスの質を上げるための企業買収を行っていると考えられます。Airbnbは自動翻訳機能にも力を入れており、日本上陸の際には企業買収をすることなく、言語の問題を解決することで上陸を果たしました。日本語オーナーが物件を登録すると自動的に英語やその他の言語に翻訳されます。また逆に英語オーナーが物件を登録すると自動的に日本語にも翻訳されます。このようにして日本の物件数、日本からのアクセス数も年々増加しています。

HomeAwayの企業買収による地域拡大方法

AirbnbがシリーズBまで資金調達を行い、競合だけではなく位置情報を利用したサービスの買収を繰り返しているのに対して、HomeAwayの地域拡大方法は大きく異なります。HomeAwayは2005年から2010年の間に総額5億1300万ドルもの資金調達を実施しています。

■HomeAwayファイナンス概要

シリーズA:4900万ドル(Austin Ventures, Redpoint Ventures)
シリーズB:1億6000万ドル(Institutional Venture Partners, Trident Capital)
ベンチャーラウンド①:1150万ドル(American Capital)
シリーズE:2億5000万ドル(Technology Crossover Venturesなど) ベンチャーラウンド②:825万ドル(Google Ventures)
ベンチャーラウンド③:2500万ユーロ(Google Ventures)

出典:Crunch Base

このようにHomeAwayはAirbnbを大きく上回る額の資金調達を行っています。これはHomeAwayの新地域への進出方法がAirbnbよりも多額のコストを要するためと考えられます。下の表はHomeAwayがこれまでに買収した企業の一覧です。

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このようにHomeAwayは買収した企業の全てがバケーションレンタルサービスもしくはそのためのソフトウェアの企業です。またこの他に、HomeAwayは会社設立の際に2005年にHoliday-Rentals.co.ukをはじめとする5社を買収することでサービスを開始しており、一から物件とユーザーを集めたAirbnbとは大きく異なります。

Airbnbはアジアの企業は買収せずに日本進出を果たしていますが、 Homeawayはシンガポールのtravelmobを買収することでアジア太平洋地域 への進出を図ろうとしています。物件数を集めると言うことはユーザーの増加、さらに流通金額の増加も意味しますが、HomeAwayのように企業(サービス)そのものを買収するとなると多額の資金調達が必要となります。

また、HomeawayはNASDAQに上場しており、そういった意味でも株式未公開のAirbnbとは資金形態が異なります。今後シンガポールへ進出することで、日本進出も近い将来行われると考えられて、既に日本で浸透している Airbnbとどのように違いを見出すかがポイントになるでしょう。

今後:roomoramaも含めた3サービスの争いに?

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現在日本で展開している競合サービスはAirbnbの他にroomoramaがあります。roomoramaの物件数は60000と、AirbnbやHomeAwayと比べて規模は小さいながらも、着実に対応地域を拡大しています。

ユニークなサービスと手厚いサポートが売りのAirbnbか、莫大な資金力を誇るHomeAwayか、コツコツと対応地域を拡大するroomoramaか、それとも日本の既存の企業が新規参入するか。日本ではまだ浸透する余地のある分野ですので、今後が楽しみです。

蛇足:Umekiはこう思う

そもそもAirbnbは旅行時の短期滞在に利用するユーザーが多く、Homeawayはバケーションレンディングということで長期滞在が多そうという点で、競合なのか?とは思った。Airbnbの平均滞在日数などを知りたいところではある。知らないサービスだったこともあり、みややっこ氏の手腕に任せてみた。

部屋の貸し借りサービス自体には需要があるので、手堅く伸びていくだろう。不動産分野に関するスタートアップは今後日本でも増えていく兆しがある。元々の市場が大きいだけに、どんなサービス展開で市場を破壊していくのか、楽しみである。
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