「世界を変える」と言い続けてきた榊原氏、サムライインキュベートの歴史を振り返る

Pocket


サムライインキュベートの榊原さんと知り合ったのは2010年のことで、もう10年になる。B Dash Campで久々にお会いしたので「最近のサムライは何をしているのか」という取材でもしましょう!と盛り上がり、取材してきました。

サムライインキュベートは本誌読者の方では知らない方は少ないと思いますが、シードステージのVCの草分け的な存在。500万円をすぐに出資してくれるVCとして名を馳せていました。

82524808_1200600213465342_6180131920861462528_n

珍しく記念写真的なw

各ファンドのトレックレコードの:十分なリターンを達成か

ファンドサイズや投資社数を振り返ってみよう。

ファンド名:ファンド総額(組成時期)投資社数、代表案件

1号:5,150万(2009/6)9社、ノボット、SYG、I&Cクルーズ、軒先、f4samurai、エニドア

2号:6,200万(2011/1)10社、メンタルヘルステクノロジーズ、ポート、Nagisa、トリッピース

3号:2.1億(2011/9)35社、RoomClip、MAMORIO、Axismotion、Pathee、

4号:2.2億(2013/3)日本25社、イスラエル4社、日本>LinkSports、職人さんドットコム、エアークローゼット、OFFICE DE YASAI、ヤマップ、イスラエル>ZerobillBank

5号:8.4億(2014/12)日本31社、イスラエル26社、日本>ジオアドベンチャーズ、笑農和、レモネード、MyDearest、ワンダートランスポートテクノロジー、レアリスタ 、ミューニュー、Drone Future Aviation、Dreamstock、トワール、Elaly、イスラエル>OurDogiz、Hexa、The ElegantMoncky、Actifile

6号(AfricaFund1号含む):34.5億(2018/1)2019/12末現時点、日本17社、海外18社 Forema、No School、FLY、アフリカンインキュベーター、ConnectAfya

累計投資社数は2019年12月31日現在で172社
トータル:日本125社、イスラエル30社、アフリカ17社

1号、2号はファンド組成時期からするとほぼ回収が完了している。具体的なリターン倍率は非公開だが、十分にLPを満足させる倍率だったそうだ。

直近では2018年1月に34.5億円の6号ファンドを組成。今までサムライの規模と比較すると巨大化したが、シードステージへ投資する方針は変わらず、今後はその中からフォローオン出資も強化していくという。

サムライインキュベートといえば、イスラエル、アフリカにも拠点があることで知られる。榊原氏の謎の突破力で、イスラエル、アフリカといった日本人がほとんどいない地でも、投資を実行してきた。

近年はイスラエルやアフリカのイメージが強かったがサムライだが、ニュースリリースで見かけないだけで、日本での投資も着実に実行しており、今後も日本での投資を継続予定だ。

投資先の中から今後も数社のIPOが出る見込みとも語っており、シードステージのVCとしては投資先のIPO確率がかなり高いように思える。

ちなみに、本日リリースが出ており、20億円規模を目標とするアフリカ投資ファンド2号を立ち上げた。アフリカの起業家支援においてJICAとも連携する。

世界の中でもアフリカで先陣を切っているVCであり、米国の500startupsなどとアフリカ投資件数を競っているらしい。

アフリカ投資といえばサムライインキュベートと世界で謳われる日も、遠くないのかもしれない。

榊原氏のサムライインキュベートでの思い出トップ3

サムライインキュベートも2008年創業であり、今期で13年目となる。そこで、榊原氏にサムライでの思い出トップ3を語ってもらった。以下全て引用箇所は榊原氏のコメント。

一番はSVS(サムライ・ベンチャーズ・サミット)ですね。東京で11回やったほか、地方を回ったり、世界でも17都市で開催しました。Tech Crunch Disruptに投資先を引き連れていったりもしましたね。SVSは「世の中を先導している感」があって、好きでした。

ちなみにSVSには私もオープニングセッションとして直近半年のスタートアップトレンドを解説するセッションを何度も(5,6回?)務めさせていただいた。怪しい参加者が多いイベントではあったが、文化祭のような感じで、たしかに思い出深かった。

なお、現在の奥さんとは地方のSVSで知り合ったそうだ。

二番目はイスラエルに拠点を置いて、安倍首相とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との会談に同席させていただいたこと。

三番目は最近感じたことですが、会社として組織力が高まってきたと感じたこと。実は一度、2年前に組織が崩壊したんです。

サムライに組織崩壊があったことは、風の噂で耳にしたことがあった。そのハードシングスについて、ストレートに榊原氏に伺った。

サムライの組織崩壊理由と天狗になっていた榊原氏

2017年の夏頃から、当時いたメンバーが順を追って辞めてしまい、現在のメンバーに、7割近く入れ替わったそうだ。

一番大きな要因は、ビジネスモデルにあったと思います。ファンドの管理報酬だけではそこまで大きなフィーにはならない。高い志を持って仕事をしてもらっている割には、給料が上がらないという矛盾がありました。メンバーを幸せにするという意識が、低かったのだと思います。

加えて、サムライ自身が資金調達をして自社のバランスシートを手厚くし、社員の給料を上げるという視点を当時は持っていなかったと榊原氏は語る。今は融資などでの資金調達もし、ビジネスモデルも大企業向けコンサルティングを2017年後半から本格的に手がけ始め、現在は会社としての売上の8割がコンサルティング収益だという。

2020年1月時点の社員数は23名(入社確定ベースだと27名)と、組織も拡大してきた。

組織崩壊の二つ目の理由は、僕がイスラエルに赴任した後に、日本に残ったメンバーにマネジメントを丸投げしてしまったことが良くなかったと思っています。

マネジメントの問題はスタートアップあるあるともいえるが、サムライとて例外ではなかったようだ。

加えて榊原氏は社員から「榊原さんって人に興味ないですよね?」と言われていたという。この話を聞いて、ドキッとした経営者の読者もいるのではないか。経営者の中には自分や事業への関心が高く、他人への関心が低いという人が少なくない。何を隠そう、私自身もその通りである。

組織が崩壊していたにもかかわらず、あまり精神的に病むことはありませんでした。組織が崩壊するより、メディアに叩かれる方がつらいですね。叩かれたことはありませんが。

あっ、梅木さん、叩かないでくださいね!

82188581_2554584944773887_4001008129260126208_n

榊原氏は組織崩壊前の自らについて、奥さんから「天狗」と言われていたそうだ。自分大好きすぎで、それゆえ組織崩壊よりもメディアに叩かれるほうが自尊心が傷つき、凹むのだろう。この心理にも見覚えがある経営者の読者は少なくないのではないか。

組織崩壊というハードシングスに見えたが、榊原氏にはさほどハードシングスには感じていなかったようだ。

当時の教訓を踏まえ、コンサルティング事業で売上を立て、組織崩壊前よりも従業員の報酬を上げることに成功している。そして、人に興味を持つように心がけているらしい。

榊原氏がどのような状態になったら「世界を変えた」のか

6号ファンドを現在運用中で、2号のアフリカファンドも始動したサムライインキュベート。2020年はアフリカでの活動を加速させ、「アフリカ54ヶ国でSVSをやりたいですね!」と榊原氏は不敵な笑みを浮かべる。

榊原氏は「やるかやらないか!」といったローランドが流行りだす前からローランドのような台詞を標語にしていたり、「世界を変える!」を合言葉のようにSVSでも毎回シャウトしていた。

榊原氏にとって、どのような状態になったら「世界を変えた」と実感するのだろうか。

グローバルでSVSを開催して、ザックバーグとかがゲストに来て対等に話せるとか、時価総額1兆円以上の会社を(投資先を通じて)作るとか。そういうことに「世界を変えた」と実感するかもしれません。

サムライをなぜ作ったかというと、日本は敗戦から復興してきたノウハウを持っている。「サムライ」という名前の由来は、ビジネス業界で戦うサムライたちをイメージして名付けました。日本の復興のノウハウを元に、投資を通して発展登場国を日本みたいな国にして、全人類が幸福で満たされる世界を作ることが、ゴールです。

壮大な野望を掲げる榊原氏。まずは身近な社員の幸福度も気にしつつ、アフリカ投資を通して、そのゴールを達成していただきたい。

サムライインキュベート:HP

82872470_457735265162353_73571801938001920_n

無駄なジャケ写感。

【not sponsored 記事】



Pocket

コメントを投稿する

「「世界を変える」と言い続けてきた榊原氏、サムライインキュベートの歴史を振り返る」に対してのコメントをどうぞ!