*本記事は2011/1/19の著者別ブログからの転用の改訂版です。
22億でGREEがアトランティスを買収
ちなみにGREE株に関してはこの動きを好感したのか、最近値動きが少ないにも関わらず前日比+3.44%となっております。
今回はZyngaのウノウ買収以来の国内スタートアップの大型買収案件、という見方での取り上げられ方(TLの反応など)が多いが、僕は広告をビジネスモデルとするスタートアップのExitという観点で考察したい。まずは大枠で広告モデル、次に今回の案件の考え方、最後にスマートフォンアドネットワークの2社の比較で考えたい。
■1.広告モデルとは媒体、代理店、配信の3つがある。
とりわけネット企業に関しては、広告関連、コマース、コンテンツ、システム構築、この4つでほとんどのビジネスモデルを占めている。広告関連を細分化すると表題の3つになり、上場企業で例を挙げると
媒体(メディア):yahoo、mixi
*GREE、DeNAは売上比率からコンテンツ企業と定義しておく
代理店:サイバーエージェント、セプテー二、オプト
配信:アドウェイズ(AF)?
どこも広告専業というよりは、広告から始まり他の分野に裾野を広げよう、という企業が多い。
このセグメントの中で他のビジネスモデルの展開が容易なのはメディアであり、代理店は利益率の低さに苦しみ代理店業だけだと経営が傾き
(CA vs オプセプの差はそこにある)配信はそもそもそれ単独では上場できるほどの大きな利益を生まないと思われる。
スタートアップが広告モデルのビジネスを始めるとすると、Exitの考え方としては下記が適切ではないかと思われる。
メディア:上場、大手ベンチャーへのM&A
代理店:大手ベンチャーへM&Aされるほどの価値にすらならない
配信:大手ベンチャーへのM&A
メディアはネクストステージでの広告以外のマネタイズが容易であり、代理店と配信はそれ止まりなことが多いと思われる。これがプラットフォームとただの中間業者の違いである。
■2.今回のGREEのアトランティス買収の考察
今回の案件は2009年のGoogleのAdmob買収が類似ケースであろう。
たしか7-800億くらいだったと思いますが、素早い市場の読みと素早い実行力でGoogleが手を付けられていなかった隙間を上手く埋めにいき、Exitに持っていったgood dealだと私は思います。
今回の考え方としては、キャッシュが潤沢にあり広告を打ちまくりたくて仕方ないGREEが、アドエクスチェンジを自社に取り込むことにより配信ボリュームを厚くし、かつスマートフォン広告の市場占有率も早めに高めたい。ガラケーだけでなくスマートフォン配信の市場占有率を早めに高めたければ、一取引先として付き合うよりは22億払ってでも内製化した方が早いし、ただでさえスマートフォンでは遅れてるので危機感もあったのかもしれません。GREEのスマートフォン広告、最近やたら見かける気がします。
アトランティスがどう考えていたのかはしりませんが、Admobのケースは確実に頭にあったと思います。GREEでないにしろDeNAとかGoogleにExitという選択肢もあったかもしれません。アトランティスにとってはその辺ならどこに買われようが、事業シナジーは対して変わらず、配信ボリュームや買収金額、買収タイミングだけが違った。それだけのことだと思います。
■3.スマートフォンアドネットワーク市場
今後明らかに伸びる市場であり、アトランティスの競合としてノボットが好敵手かなと思います。*今回はこの市場のビジネスモデルや利益率、市場規模考察は割愛します。ビジネスモデルというよりはExitまでの過程にフォーカスしました。
営業資料などを見たことがなくHPからのみの情報ですが下記が特徴と思われます。
アトランティス:アドネットワークの老舗。スマフォ対応も。
ノボット:スマートフォン専業
ノボットさんに関しては非常に調子が良さそうという話を伺っており
スマートフォンのみに関してはノボットさんの方が、マーケットリーダーではないのかな、と感覚で思っておりましたが、私は正確な数値を存じ上げないため市場シェアに関しては皆様のご想像にお任せします。
GREEはアトランティスを選んだ。GREEからノボットさんにオファーがあってもおかしくなかったはずです。理由はアトランティスはスマートフォン専業ではないから。GREEはガラケーでほとんどなのでガラケーのアドネットワークもそれなりに欲しい。スマートフォンに関してはこれから一緒に頑張りましょう。そんな感じなのかなという気がしたのと、スマートフォンだけに20億くらいはまだ払いたくないよな。そんな心理があったのだろうかと推測します。
ノボットさんに関しては年末にアドウェイズとの協業を発表しており
同じアドネットワーク配信会社と組んで、まずはアドネットワークでのボリュームを取りに行った。という考え方でしょうか。アドウェイズにそのままExitという選択肢もあるかと思いますが、アドウェイズのBSでは20億というValuationでのExitはなく、もっと条件の良いとこをExit先に考えた方が、今後のスマートフォンアドネットワーク市場でのプレゼンスを保つためにも良いというのは明らかです。
ノボットさんの動きとしては海外展開の動きがとても気になります。
海外展開が上手く行けばシリコンバレー企業へのExitという選択肢も出てきて、金額もGREEのそれよりも上がるのでは、と思います。
早々とExitしたアトランティスに対し(*Exitという表現は嫌いで「Enter」という表現を好まれるようです)ノボットさんはいつどこにいくらでExitするのか。IPOという考え方事業特性上これからのマーケットではあり得ないと思うので、本記事のタイトルの回答としては広告配信モデルのスタートアップのExitは、ネットメディア等の大手に如何に高額で売却できるか。これに尽きると思います。
とりわけスマートフォン広告配信だと今年が旬だと思うので、市場の拡大と共にできるだけ早く市場シェアを拡大し、とっととExitする。というのが得策かと思います。
ノボットさんに関しては2011年末までに(というか末あたりがターゲット)シリコンバレーのどこかに30億以上でExitするのではないか?それがベストシナリオであり、希望的観測も含めてそれができると予測させて頂きます。*特に人から情報を聞いた訳ではなくあくまで僕の妄想の範囲内です。いくら利益を生むかはビジネスモデルをじっくり見ていないので
upsideは図りかねますがExitは国内で22億なら海外はもうちょいいくでしょ。というくらいの安易な考え方です。