先日のCAV Rising Expo2013で勝手にThe Startup賞に輝いたKAIZEN platformのグロースハックツールplanBCD。グロースハック系ツールのリリースがここ最近相次いだことと、Rising Expoでプレゼンを聞いても詳細までわからなかったので、KAIZEN platform CEOの須藤憲司氏に話を伺った。本稿でplanBCDの名前は聞いたことがあっても、詳細はよくわからないという人の理解の一助になればと思う。
成果報酬型のグロースハッカーのクラウドソーシング
まずplanBCDがどういった製品なのかを説明しよう。
planBCDはABテストによるUI改善を驚くほど簡単にしたツールと謳っている。planBCD登場前と後のABテストは「自動車でいうマニュアル運転からオートマティック運転に変わったくらいの簡単さ」と須藤氏は語る。既存のUI改善には以下の3つの障害があった。
■UI改善の3つの課題
1:どんなテストをすればいいか考える工数がかかる
2:改善したクリエイティブをupするのに時間がかかる
3:運用に工数がかかる■planBCDによる課題解決
1:グロースハッカーの知見で勘所の良いテスト施策を実施できる
2:クリエイティブを簡単にupする時間を短縮できる
3:運用は自動化して効果の高いモノを残す
このツールの肝は課題解決1に当たるグロースハッカーをクラウドソーシング的に利用できる点にある。planBCDは発注者が案件を登録するとグロースハッカーからUIの改善提案を受け、採用したUIが採用後1ヶ月で採用前のUIよりも効果が高い場合に成果報酬でplanBCDにフィーを支払う。その内グロースハッカー側に70%、planBCDに30%というフィーの配分になる。
グロースハッカーという言葉はバズワード化しており、人によって定義が異なる。planBCDではどういう定義をしているのだろうか。
■planBCDのグロースハッカーの定義
・UI改善のノウハウを持つデザイナー
・UI改善のコピーが書けるコピーライター*2013年9月現在でplanBCDには日本のグロースハッカー120人、海外のグロースハッカー80人が登録。現在はクローズドだが徐々にオープン化予定。
■既存のグロースハッカーの定義
・エンジニアリングもできるマーケター
グロースハッカーの中心はデザイナーであると見なしている。planBCDに登録される案件の多くはUI改善で会員登録率を上げるなどのものであり、デザインが絡むものがほとんどになるだろう。また、コピーの文言でもCVRは変わってくる。UIの改善をひたすら実行してきてその知見があるグロースハッカーへの依頼は、テストの勘所へのショートカットとなり、UI改善の最短ルートとなる。気になる料金体系だが…
■planBCD料金体系
・月額:50万円〜(ツール利用料込み)
・1LP:10万円〜(成果報酬型)
従来のツール系サービス同様、月額制のプランもある。月額制の想定クライアントはグロースハッカーを内製している大手企業であるという。筆者はグロースハックツールに月額50万円出して運用するに値する企業はさほど多くないと思っている。その疑問をぶつけてみると、将来的には1LP10万円の単発のプランでの売上比率が高くなるという見通しを持っているようだ。
企業がこうしたツールをいくつも使うのは面倒で工数が増えるのではないか?という問いに対しては、DSPツールの例を挙げて説明いただいた。DSPツールだけでも3-4個のツールを使っているケースが多いようで、たしかにツールが増えるとオペレーションコストも増えているようだ。しかし、planBCDはそのサービス特性上むしろオペレーションコストを下げることができる、「テストのためのツールではなく、テストのための工数を削減するツール」でもあるという。
planBCD利用事例:期待してないデザインで174%の改善
planBCDの実際の利用例を一つ紹介しよう。本誌でも何度か登場している高級旅館予約サイトのreluxだ。ランディングページでのABテストの結果を共有してもらった。下記のABテストの数字は、元のデザインから会員登録率(CVR)がどれだけ上がったかという数字である。
relux運営者のLoco Partnersの篠塚氏にplanBCDを利用した感想を伺った。
PlanBCDは、プロデューサーにとっての正解がユーザーにとっての正解じゃないことを証明してくれました。UI/UXやデザインセンスはプロデューサーの意思決定やセンスに依存してしまいますが、本サービスは新たにたくさんのデザインを試せるので、「うーん」と思う施策すらも、良い意味で実施してみることが可能です。システムで自動制御されることもあり、効果が悪かったらカットできます。
使ってみると驚いたことに、期待していなかったデザインが、最も効果が良かったです。正直、既存デザインが一番良いと思っていたので悔しいのですが、ユーザーのリテンションこそが正解なので、そっちが正解なのだと確信しました。
一人のプロデューサーとしては判断できなかった打ち手が、本来のユーザーフレンドリーな改善に繋がり、冒頭のプロデューサーの正解とユーザーの正解のズレを教えてくれたのです(篠塚氏談)
篠塚氏曰く、クラウドソーシングで提案されたモノを選び、自動で改善してくれるという使い勝手の良さと、成果が改善されなかったら無料という点が気に入っているとのこと。たしかに、成果報酬であれば試してみない手はないだろう。
グローバル展開も見据えて足下固める事業シナジーを模索
planBCDを運営するKAIZEN platformは既にシードラウンドでGREEベンチャーズ、GMOVP、CAV、を引受先とする$800,000の資金調達を実施している。本社は実は米国カリフォルニア州だ。シードラウンドの投資家選定では、アライアンス先や営業先の開拓で事業シナジーを期待できそうなVCからの出資を選んだという。
昨今の市場環境ではValuationが高騰しがちだが、決してValuationで条件の良いところを選んだ訳ではなく、あくまで事業シナジーを出せて足下を固められそうなパートナーを選定したという。
最後に、筆者は直接面識はなかったものの、KAIZENの須藤氏はなにやら「ヤバい人材だ」とちらほら耳にしていたことがある。そのヤバさについて、取材に同行いただいた同社の栄井徹氏に話を伺うと
「須藤は流行に流されずに物事の本質を見極める人間だと思います。33歳ですが、50歳くらいなんじゃないかと思うほどのクレバーさです。私利私欲に流されず、目線が高い。グローバル展開を目指している点や妻子持ちでも挑戦するという気概に共感し、私はKAIZEN platformにジョインすることを決めました」(栄井氏談)
須藤氏は前職のリクルートで最年少執行役員などの実績を残してきたことで知られる。リクルート出身の起業家が増えていると感じる昨今だが、筆者界隈ではリクルート出身の起業家はデキル人が多いと評判だ。
KAIZEN platformは久々にスケール感を感じる2013年銘柄の希有なスタートアップであった。planBCDは今後徐々にオープン化されていくようなので、デザイナーやコピーライターでグロースハックに興味がある人は試してみると良いだろう。成果報酬での1LP10万円という予算感はスタートアップに好評のようで、既に導入しているスタートアップを何社も聞いている。
*この記事は広告記事ではございません。
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