1号ファンドは、10倍返し:サムライインキュベート榊原健太郎氏:VCの赤本⑪

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久々のVCの赤本、満を持してサムライインキュベートの榊原健太郎氏の登場です。榊原氏といえば皆さんのタイムライン上でも20代の起業論という本のプロモーションを最近見かけることでしょう。最近はリリースもあまり出さなくなり、実は実態はブラックボックス化しつつあるように見えます。地方SVSなどで活動的な様子は伝わってきますが。本にも書かれていないディープな内容と、本の内容の一部要約を本稿でお届けします。

尚、20代の起業論の帯にある「日本で最も愛されるインキュベーター」という言葉は、約2年前のThe Startupのこの過去記事から取ったのではないかと言われています(この記事で僕、坊主ですね…。独立する直前だなあ)実は榊原さんと僕はわりと昔からの仲であり、The Startup生みの親の一人として「インキュベーション実績に挙げていいか?」と聞かれることもあるほどです。僕が半年に一度のSVSの講演を受け続けるのも、榊原さんが起用し続けるのも、そういう昔からの関係があるかもしれません。

直近では9/28(土)のSVS8に朝一で登壇予定です。今回は講演テーマにかなり悩んでいるのですが、お時間ある方は早起きして観に来て下さいw

1号ファンドは10倍返しに:サムライのファンド成績に迫る

ファンドのリターンに関しては各社公開したがらないが、榊原氏はオープンに語ってくれた。サムライといえば現在は4号ファンドまであるが、1号ファンドでノボットのMedibaへのExitは業界では有名である。

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「1号ファンドは9社に投資しています。全社増資実行済みで、ノボットの他にもSynclogueを株式譲渡で売却し、利益を確定しています。約5,000万のファンドですが、現状ではリターンは6-7倍。

残りのサムラファンド1号数社企業のEXITや、 2014年以降に上場を予定しているグリーンエネルギーナビを運営するアイアンドシー・クルーズなどを含めればリターンは10倍を超える見込みです」

シードに特化しているという点もあるが、10倍返しファンドのリターンは立派といえよう。榊原氏の目標は各ファンドでの20倍のリターンだそうだ。

ちなみに2号ファンドで有名どころは、最近2億調達したtrippiece、2014年以降の上場を目指すソーシャルリクルーティング。既に35社出資しており、一見わけのわからないことになっている3号ファンドで注目の銘柄は部屋の写真のCGMアプリであるRoom Clipを運営するtunnel、子供が仕事とお金について学ぶことができるLiving Rooom、草野球リーグのG LEAGUEのギガストリート、職人が利用するプロショップのポータルである職人さんドットコムの4社を挙げた。このうちのどこが跳ねて、3号ファンドのリターンを挙げるのかに今後注目が集まる。

出資の傾向:地方とはぐれ者が今後の焦点か?

20代の起業論の中に、4号ファンドまでで投資してきた約70社とその周辺の関係者から成り立つ「サムライ軍団」の推薦があることが投資条件とあり(問い合わせベースでも月に100件を超えるそうだ)投資する際はシードということもあり人物重視を掲げている。そんな中で出資する際のキーワードとして「地方とはぐれ者」という興味深い2点を挙げた。

「今後は地方への投資を増やしていきたいと思います。東京は今となってはスタートアップがブームになっていますが、地方はまだ5-6年前の東京のような状態。しかし、地方へ積極的に赴き投資を真剣に検討する投資家はほとんどいません。例えば岐阜県の大垣市はソフトピアという施設に約180社のIT企業が入居しています。もともとエンジニアの育成に市を挙げて取り組んでいます。でもまだそこにインキュベーターはいません。そういう誰も未だ行っていない市場を開拓することにやり甲斐を感じます」

「あとはキャリアがピカピカではない起業家。キャリアがピカピカだと他のピカピカのVCからの出資を得やすいでしょうから、あまりサムライを必要としないかもしれません。毎回参加しているインキュベイトキャンプでも、誰も支援しないだろうという人に逆張りで支援したりしていますが、社会問題を解決するサービスに地道に取り組んでいれば、結果は自ずと付いてきます」

20代の起業論の見所:皆が知らない榊原氏の一面を知れる

ここで20代の起業論の感想を少し述べておこうと思うが、読む前は榊原さんのことはそれなりに知っているし、大体知っている内容が出てくるのだろうと思っていたが、序盤の物語は意外だった。

榊原さんのダメダメな社会人1-2年目の生活(医療系のMR的な営業で仕事の休憩中車の中で寝てる)とかサイバーエージェントに2度落ちた話とか。今はSVSのようなイベントを学園祭のようなノリで仕切るキャラだが、学生時代は全然パッとしなかったこと。成り上がり、といっては言葉が悪いかもしれないが、現在とのギャップが生々しく描かれている点が一番面白かった。

あとは3号の途中以降不明になっていた投資先一覧が後ろに記載されており、機会があればサムライの投資先を全て本誌で「仕分けしてみる」のもアリかと思った。3号ファンドはマジでよくわかりません…。こっからどこがどういう変化率を見せるのか。あと、榊原氏の100の事業アイディア。これも興味深く、僕と相性が良さそうなのが3つくらいあったな。

安易なピボットはよくない、ピボットしたところで成功した投資先はまだないという話も非常にリアリティがあり、面白かったです。

サムライは日本一のインキュベーターになったんだと思う

最後に。本稿はVCの赤本としておいたが、ここからは僕個人の意見を。2013年に入り、TV局もファンドを設立するようなご時勢で投資家の数は増え、スタートアップへの資金供給量自体は増えたと思う。しかし、シードラウンドに限っては目立ったプレイヤーは増えていない。

シードラウンドの投資、具体的には設立間もないスタートアップへ300-500万の投資をすること自体に賛否両論があるのも現状だ。現に、事業経験があり30代前後で起業する起業家は300-500万円程度の投資は自己資金で賄える懐事情もあり、特にバックグランドがピカピカ気味の起業家になればなるほどシード投資を必要としない傾向がある。一方でシードアクセラレーターの資金とノウハウを必要とする学生や事業経験が少ない起業家もいる。

シードラウンドで存在感があるのは投資社数にも現れているサムライインキュベート、そしてインキュベイトキャンプからの厳選投資をするインキュベイトファンドの2択であるといっても過言ではない。管理報酬だけでは食えないなどの構造上のリスクもあるが、優良なシードアクセラレーターが増えないのは業界の一つの課題といえよう。

正直、3号の投資先とかどこが当たるか全然読めないのだが、投資社数やイベントなどの盛り上げにより、シードといえばサムライというのは誰しもが認めざるを得ない存在になっていると思う。そういった意味においては、サムライ榊原氏は既に日本一のインキュベーターになったのだと思う。1号ファンドが10倍返しにまでなっているとは思いませんでした。

僕が独立した約2年前、榊原さんに会った際に「フリーランスなので、仕事下さい」というと「起業するなら出資しますよ」と言って下さいました。僕は当時も今も外部資本を受け入れるつもりはないのですが、こんなささやかなやり取りが嬉しかったことを覚えています。いざとなったらサムライから出資してもらおう。最近の出資先、ワケわかんないけど。そんな風に思っていました。

シード投資の是非という論点もありつつも、シード投資が必要と思われる方には選択肢の一つとしてサムライから投資を受けることのメリットについて説いている僕がたまにいたりもします。榊原さんのインキュベーション実績として胸を張ってもらえるよう、The Startupも頑張ろうと思いました。

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