GCP今野穣氏:DeNA共同創業者が立ち上げたQuipperにも投資、プラットフォーム事業を好む【VCの赤本①】

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キャピタリストに取材をして、そのポートフォリオや投資基準について迫る「VCの赤本」コーナーをスタートします。初回は「グロービス・キャピタル・パートナーズ (以下GCP)」の今野穣氏にお話を伺った。

GCPは本誌を以前からご覧の方でしたらご存知でしょうが、1億円単位のラウンドでの投資で名高いトップ・ティアVC。その充実のポートフォリオは魅力的です。億単位のラウンドでGCPが入っているディールは業界での見られ方が違うといっても過言ではありません。というほど私は一方的なファンであり昔から注目していました。

GCPのパフォーマンスについてはHPに記載のあるとおり、1号・2号ファンドでは投資社数60社中16社のIPO-Exit。1号・2号ファンドでは共に、同ヴィンテージの US VC と比較し、Top25%以上に入る高いリターンを実現している。3号ファンドも良いリターンを見込めそうとのことで、来年には次のファンドの組成の完了を目指しているとのこと。

そして先日、Tech Crunchでも報じられていますが、Quipperというモバイルのeラーニングへの投資案件の担当者でもあります。Quipperのディール詳細および、今野氏の投資の考え方などについて本稿でお届けします。

Quipperへの投資理由はやはりプラットフォームの可能性

詳細はTech Crunchをご覧頂くとして、今回のディールをマネジメントチームと事業領域という観点から見てみましょう。

マネジメントチームに関してはDeNA共同創業者である渡辺氏が代表、既にDeNA出身の個人投資家川田氏の資金も入っている。シリアルアントレプレナー案件といえ、マネジメントチームの経験は十分です。

事業領域に関して今野氏曰く「Quiz(ドリル)という日本やアジア的な教育メソッドと、Mobileというデバイスの特徴を組み合わせたサービス設計を、グローバルなバリューチェーンでプラットフォームとして構築しようとしている点が魅力的」とのこと。

Quipperはクイズ形式学習コンテンツを提供するプラットフォーム型アプリだが、コンテンツもユーザーが作成したものが20%を超えており「知のCtoC」を志向していくのではないかと思われる。

ライフネットなど11社の充実のポートフォリオ

担当案件は上記Quipperを入れて11社。3月にIPOを果たしたライフネット生命やワンオブゼム、みんなのウェディング、美人時計など、社会の大きなプラットフォームとなり得るポテンシャルのある案件が並ぶ。

投資先への関わり方としては1-2週間に1度、半日くらい経営会議に参加し、方向性のディスカッションや経営者が視野を拡げられるような気づきを与えることを心掛けているようです。11社担当しつつもしっかり投資先にコミットしている印象を受けました。

M&A狙いの投資はしない。産業を創れる案件に投資

日本国内では明らかにIPOまでの規模にならないであろう案件にシードアクセラレーターなどから資金が入るが、GCPと今野氏はM&A狙いの投資はしていないという。GCPと今野氏の方針として「日本初の新しい『産業』、グローバル企業の創造への貢献」「人の流れの、情報の流れ、金の流れを変えるプラットフォームの創造」を掲げている。

今野氏は現状の国内の「相場観のある」投資に懐疑的であり、投資金額は事業の成功に必要な金額を逆算で算出して決めるという方針を持つ。小粒の案件ではなく、あくまで産業を創れるようなIPOまでいけるポテンシャルのある案件に投資をする。結果的にM&AでのExitになっても、IPOできるくらいのポテンシャルがないとそれなりの額のM&Aは成立しないはずであると踏んでいる。

ちなみにGCPでは1セクターに1社しか投資しないようだ。魅力的な分野があり、その分野に投資に値するスタートアップがなければ、今後はファンド主導で事業創造することも考えているようだ。

事業面に対して、当然人材面も重要視する。今野氏の担当案件はいずれも経営者と最初にあって2年くらいして投資に至っているという。2年くらいかけて人間関係を構築し、経営者デューデリを行っているようだ。

ポストGCPラウンドも睨んでいきたい

日本国内のディールでは億単位のラウンドの次のラウンドの資本政策を見かけるケースは稀であるが、いわゆる「ポストGCPラウンド(筆者の造語)」のディールメイクにも今後は力を入れたいという。

ポストGCPラウンドで考えられるケースとしては、IPO前に海外展開をはじめたい場合が挙げられる。そのフェーズで海外のVCが参加するラウンドであったり、国内のネット系事業会社や携帯キャリアが参加することが考えられるという。特に事業会社やキャリアの場合は事業シナジーが目的であることが多いと想定されるため、そういうディールをどう調整するかがリードインベスターの腕の見せ所である。

今野氏の傾向と対策:早めにお会いしよう!

赤本っぽく傾向と対策で締めると、スケーラビリティの高い事業領域でないと今野氏から投資を受けるのは難しいであろう。M&A狙いではなく、IPO狙いで本当に中長期的に産業を創出する気概があるか否かが重要である。上記のエピソードにもあるとおり、人物デューデリは2年くらいかかるケースが多いため、とりあえずまずは今野氏に一度お会いして接点を作ると良いかもしれない。

今野氏が担当する投資先の某氏曰く、「近視眼的になりがちなところを経営会議で俯瞰的に今後の事業展開を示唆いただける点や、今野氏が主催する投資先や関係者を集めた通称『今野会』という定例会でアライアンスがいくつも決まっている」など、今野氏の支援に高い価値を感じている。

私自身の個人的な今野氏の印象としては、お会いする前に聞いていた話としては「とにかくロジカルなタイプ」と聞いており、若干怖い印象を勝手に持っていたが、実際にお会いすると物腰が柔らかく、相談しやすい方である印象を受けた。

このように「VCの赤本」シリーズではキャピタリストにフォーカスし、各々の投資に対する考え方や各社の傾向についてご紹介していきたい。取材にご協力頂けるキャピタリストの方はぜひFacebookでYuhei Umeki宛までご連絡頂きたいですし、他薦も受け付けております。



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