incubate fund本間真彦氏:シード・アーリーステージで3,000万を投資【VCの赤本②】

Pocket

約1ヶ月前にリリースしたシリーズ企画「VCの赤本」。前回の記事にご登場いただいたGCP今野氏の推薦により、incubate fund本間真彦氏に迫る。

incubate fundといえばDeNAを中心とした出資者から30億ほどファンドレイズし、設立当初からソーシャルゲームの大型投資に積極的であった。ここ1年ではincubate campというシードのスタートアップを発掘するプログラムを展開しており、シードラウンドでのプレゼンスも高めてきている。今回は本間氏個人に焦点を当て、話を伺った。

32歳で3億のVCファンド:コア・ピープルパートナーズ設立

本間氏はジャフコに新卒で入社しVCとしてシリコンバレーやイスラエルのスタートアップへの投資経験を積んだ後、転職先のアクセンチュアなどでも投資事業に携わってきた。2007年に32歳の時に3億のVCファンド「コア・ピープルパートナーズ」を個人で設立。10社ほどに投資をしてきた。代表的な案件はソーシャルゲーム系のgumiやポケラボ、CGM系のみんなのウェディング、などがある。ファンド設立から5年ほどだが、既にパフォーマンスはプラスに転じているという。

2010年に設立して共同代表パートナーとして参画したincubate fundではファンド全体で2012年6月現在までで累計24社に投資。ポケラボやAimingという大型案件から、incubate camp経由でWhyteboadやiettyなどに投資をしている。本間氏の担当案件は、ポケラボ、 アクセルマーク(旧エフルート)、チケットストリートMUGENUPなど。最近の興味分野はスマートフォン、ゲーム、クラウドソーシングやコミュニケーション、Eコマース関連とのこと。

シードで3,000万:初期のネットビジネスの立ち上げに十分

投資方針は平均で2,000-3,000万をシードステージないしはアーリーステージで単独あるいはリードインベスターとして投資する。20%前後のシェアを取得することが多いという。昨今の300万のシードラウンドブームとは違い、本間氏はコア・ピープル時代からこの手法が多いようだ。今活躍するgumiもポケラボも同じ投資手法で立ち上げてきている。

3,000万くらいあれば1年から2年は少数精鋭のチームがサービスの立ち上げに専念でき、ネットビジネスは立ち上げられるケースが多いと考えている。最初から無駄に巨額の資金は投じず、事業が回り始めてから合理的にアクセルを踏むステップを好む。本間氏の担当案件ではビジネスの立ち上げから2-3年後に大型調達に至っている案件も少なくない。じっくりサービスとチームを作り上げることが、後々の高い評価額での資金調達に繋がっているという。

最近流行に見える、立ち上げたばかりのスタートアップが、十分なサービスやビジネスモデルの証明ができないまま、1億円規模で調達することには懐疑的なようだ。サービスやモデルの証明もないまま、巨額のファイナンスをすると、投資家から経営者へプレッシャーがかかる。その正しさを証明しながら、売上や利益作りをしなくてはいけない。そういった環境での経営は大変なので、あまり薦めていないと指摘する。

投資する起業家のタイプは、しっかりサービスを作り、他人を巻き込める人。資金調達を派手に繰り返すのではなく、サービス作りに愚直に没頭できる人。後に10億円のファイナンスをしたポケラボの創業者も、初期はマンションの一室に住み込んで朝から晩まで開発に没頭した。1年から2年くらい籠ってサービス開発をするのに必要な資金が3,000万くらいであると本間氏は考えている。他人を巻き込む力があり、良いチームを作り上げられるかどうかも重要なポイントと考えている。

投資先の能力を最大限に引き出すサポートを心掛ける

自身が提供できる最大のバリューは、起業家が自分の構想を実現する為の「ビジネスモデルのチューニング」であると本間氏は語る。投資先のピボット戦略も本間氏が起点で実行したこともあり、ビジネスモデルの引き出しは多そうだ。ビジネスモデルを考えるのが好きで、事業モデルのスライド資料を自分で作成することもあるようだ。エンドユーザから課金するモデルを好み、メディア・コマース・ゲームを得意としているようだ。

「起業家やチームのポテンシャルを最大限に引き出すサポーターであること」がベストな投資家の条件であると本間氏は考えている。投資先チームの資産を最大限に活かすことを考えている。

目下、インキュベイトファンドは、日本のスタートアップへの投資のカバー率をもっと高めて、シードラウンド時に引受先の候補に必ず名前が挙がるVCを目指している。今後は更に、日本発のスタートアップで、グローバルにスケールできる事業の育成を行うべく、4名のパートナーのうち本間氏がシンガポールに移住し、投資先の海外展開支援を強化する予定であるようだ。

M&Aの出口も視野に入れることが出来る若い経営者に期待

VCを巡る環境について、本間氏からいくつかの面白い意見があった。

従来、VCは黒子役に徹することが多かったが、ある程度積極的にマーケティングする力が重要になってきていると語る。ファンドの運用のみならず、メディア露出やイベントによって若手や面白い人を引きつけ、そのVCを中心としたエコシステムを形成していく力が、ファンドとしての中長期の競争力に繋がるという。本間氏自身も、ブログで積極的に情報発信をしている。

独立系のシードアクセラレーターがもっと活躍するのではないかという意見も出た。本間氏はジャフコにてサラリーマンとしてVCを経験しているが、現在はincubate fundという独立系ファンドで勝負しており、特に会社の立ち上げ期で、起業家にも投資家にも熱量が必要なシードステージでは、投資先に対する気持ちの入れようや必死さは全然異なるのではないかという。シリコンバレーでは投資家も起業家であることが一般的であり、投資家も起業家同様のリスクを負っている。

IPOを狙うだけでなく、M&Aも視野にいれることが出来る若手経営者に投資したいという意見もあった。全体を俯瞰した視点と、Exit戦略を描いてすぐに理解できる能力を持つ若手起業家は少なく、VC出身者含め、そのような思考ができる若手経営者がもっと出てきて欲しいと考えている。投資した案件に対して、3-5年で一気に企業を急成長させることができる経営者、Exitを含めて次のステージに持っていけるような経営者を探したいという考えがあるようだ。多少、PEに近い考え方であるともいえるだろう。

本間氏の攻略法:サービス開発に没頭せよ

「VCの赤本」として、本間氏の傾向と対策をまとめると、「サービス開発に没頭する姿勢」をアピールすることが最大のポイントとなるであろう。



Pocket

コメントを投稿する

「incubate fund本間真彦氏:シード・アーリーステージで3,000万を投資【VCの赤本②】」に対してのコメントをどうぞ!