motionBEAT丸山聡氏:今後もアーリーステージへの精力的な投資を継続【VCの赤本③】

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コアな読者に人気のVCの赤本シリーズ。今回は旧ngi、現motionBEATの丸山聡氏にお話をお伺いした。

経営企画からM&A助言、起業まで経て現在はVC

丸山氏は証券会社でキャリアをスタートさせ、証券会社でVC業務に携わり、その後上場している事業会社の経営企画やIR、銀行系VCでM&Aアドバイザー、ベンチャー企業でIPO準備の責任者としてIPOに導くなどを経験しつつ、自身での起業経験もある。様々なフェーズや役割を経験した後、2007年に旧ngiに入社。

ngiでは社長室を経て投資事業に携わり始める。VC業界歴は4年強だ。

エニグモなど直近IPO&Exit実績と注目のポートフォリオ

ngiといえば業界では老舗のインキュベーターである。過去にはmixiなど多数Exit実績があるが、会社としての直近のExti実績と注目のポートフォリオに迫る。

まずはIPO&Exit実績から。先日の本誌でもお伝えしたエニグモ。長期保有でIPOまで支援。春にIPOしたライフネットにも株主として名を連ねる。本誌読者であれば知らない人はいないであろう、昨年のExitディールとして有名なノボットにも投資。

一押しディールとして3社、踏み込んでご紹介する。1社目はミュージックセキュリティーズ。「マイクロ投資プラットフォーム」として音楽アーティストの支援を出発点であった同社だが、昨年の震災後に被災地支援にいち早く取り組んだことがメディアなどで頻繁に取り上げられ、投資家も増え大企業とのアライアンスも進み、事業として伸びていっているという。

2社目は本誌でもご紹介したスマホリワード広告のメタップス。今回のファイナンスでも追加出資をしているが、その前のラウンドから参画し、ファイナンスの支援などを手掛けてきた。経営者のビジョンや成功に対する執念を高く評価しており、良いチームビルディングができているという。

3社目は翻訳サービスのConyacを運営するエニドア。月額課金プランの導入後、 順調に事業が伸びているという。たしかにニーズはあるサービスで、英語が苦手ながら外国人と英語メールのやりとりをする必要のある人にとってはMediumプランくらいに課金しても十分ROIが良いであろう。

次のファンドも組成予定。投資はドンドンやる

旧ngiがDACに買収されmotionBEATとなった関係もあり、業界内では「今後投資にそんなに力を入れないのではないか」という憶測があるが、今後も力を入れていくと丸山氏は語る。投資の体制も整え、今後もファンド組成を行っていくようだ。

ステージとしては今まで同様アーリーステージで2,000-5,000万ほどのレンジでの投資を考えている。シードステージのプレイヤーが豊富で、億単位ラウンドではGCPやITVが控える中で、2,000-5,000万レンジのアーリーステージを担うプレイヤーは現状では少ない希有なプレイヤーである。この金額レンジでは自己資金で賄うのが難しく、サービスができたばかりでこれから検証に入る段階であることが多い。そのステージで本質的な価値を見抜いて、リスクを取って投資をしていくことに意義があると丸山氏は考えている。

シードアクセラレーターの次のラウンドでは、旧ngi時代はSamurai incubateの次のラウンドでの引き受け実績が多く、ノボット、情報プラネット、エニドア、ブクペなどがそれに当たる。

注目分野はコマース、O2O、クラウドソーシング

大のインターネット好きを自認する丸山氏。VCとして投資するかは別として、今は下記の3つの分野に注目しているようだ。

1つはコマース。スマートフォンの更なる普及で、インターネットでの購買行動パターンが進化するのではないかと踏んでいる。計画購入ではなく、衝動買いが増えるなど。あとは最近流行の定期購入(サブスクリプションコマース)。「消費されるもの」が定期購入と相性が良いと考え、SAKE LIFEなどの酒類をはじめとした嗜好品やバニラなどの女性の生理用品は定期購入と相性が良いだろうと考える。日本では新聞や牛乳、生協などの文化があるため定期購入は馴染みやすいのではないかというご指摘もあった。参考:定期購入サービスのnavarまとめ

2つ目は位置情報とmeet upが絡んだもの。言い換えるとO2Oやローカルアドという分野になる。丸山氏自身もエバンジェリスト認定されているCoffeeMeetingなどは「空き時間+場所」×「meet up」であり、ユーザーとして面白みを感じているという。

3つ目はクラウドソーシング。丸山氏はこれを「自己実現型サービス」と言い換えていたのが象徴的であった。普及に時間はかかるであろうが、個々人がやりたいことを実現するのを後押しするサービスに興味を持っている。「クラウドソーシング」というジャンルの中でWish Scopeという単語が出てきたのが筆者には興味深かった。Wish Scopeはある側面ではクラウドソーシングと言うこともでき、汎用性の高いサービスであろう。

丸山氏の4つの傾向と対策:incubate和田氏から投資を…

丸山氏を攻略するには4つの傾向と対策がある。

1つ目はまず「ユーザーに愛されるサービス作り」ができているか否か。「ワクワクするサービス」とも言い換えられるが、ユーザーに愛される温度感があるサービスが伸びるサービスであり、成長ポテンシャルが高いと考えているようだ。

2つ目は「経営チームにマネタイズスキルがあること。基本的にコンシューマ向けサービスへの投資を好む丸山氏だが、コンシューマ向けでも企業側からとコンシューマ側からと、複数の課金ポイントからなる事業を好まれるようだ。クックパッドや価格コムのビジネスモデルを「ビューティフルである」と称している。

3つ目は「経営者が人を巻き込む力を持っている」こと。一人では大きな事業はなし得ないため、良い経営チームを築いたり、色んな人を巻き込んでいく必要がある。人から協力を得やすかったり、巻き込む力のある経営者はやはり魅力的であるようだ。

4つ目は「incubate fund和田氏から投資を受けている」こと。これは半ば冗談に聞こえるが、感性的に丸山氏と和田氏は合うらしく、和田氏の投資案件であれば丸山氏が投資を検討できる確率は上がるといえるであろう。VC同士の相性というものもあるので、 無視できないユニークな観点だ。

丸山氏はかなり情報収集に力を入れているようで、中でもお勧めの記事をブログでキュレーションして配信している。昨今、記事キュレーション型のサービスも出ているが、丸山氏が人力でキュレーションしたお勧めブログ記事は大変参考になる。No Guts, No Growh

コーヒーミーティングで随時meet upも受け付けているようなのでぜひ。

VCの赤本シリーズでは、ご登場頂ける方を募集しています。取材をご希望される方はUmekiにFacebookでご連絡ください。

参考リンク集

【丸山氏関連URL】
motionBEAT:投資先一覧
丸山氏ブログ:No Guts, No Growh
丸山氏:コーヒーミーティング

【The Startup関連URL】
VCの赤本①:GCP今野氏
VCの赤本②:incubate fund本間氏
エニグモ:BUYMAの分析記事
メタップス:関連記事

【その他関連URL】
定期購入サービス:navarまとめ 



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