写真アプリで上場は無理だろ

マネタイズ無視のユーザー・グロースが優先されがちなスタートアップ業界ですが、その最たる例なのが写真アプリ。instagramですらマネタイズがままならない中、写真アプリ系スタートアップに未来はあるのでしょうか。

国内主要写真アプリ7社とそのビジネスモデル

まずは国内の主要写真アプリスタートアップ7社と直近の資金調達状況やマネタイズ方法を整理しました。敢えて黄色掛けでEXIT済みのコミュニティファクトリーが展開するDECOPICとinstagramも入れました。

注：「リリース日」は資金調達および買収のリリース日であり、サービスリリース日ではない。

インターネットサービスのマネタイズは広告、課金、コマースの3つが主軸です。各々のモデルを写真アプリに照らし合わせて考えましょう。

広告は、タイアップや枠売り、プレミアムアカウントなどが想定される。トラフィックに連動して価値が高まるのが一般的であり、ツール系よりはSNS系の方がDAU高いだろうから、価値はあがりやすい。とはいえFacebookなどのSNSほどの滞在時間にはならないだろうから（感覚値的にはその1/10程度）広告価値のアップサイドも限定的である。

課金に関してはTOLOT（１冊５００円）のようなフォトブックはわかりやすく、大手ではmixiのノハナ（ただし月１冊は無料）も同様のモデル。あとはスタンプなどの従量課金。しかし、子供向け以外で毎月フォトブックが必要なユーザーは、よほどモノ好きな人くらいかと思われる。

コマースは成功しているところはほとんどないだろうが、Pinterestのようの写真から商品ページに遷移してアフィリエイトが主流パターンとして考えられる。スケールしないと自社で在庫は持てない。SEOが効くwebベースのメディアコマースの方がまだ売上が立ちやすい。

おそらく写真アプリ事業者はいずれの方法もトライしてはいるだろうが、思ったよりアップサイドが低く、ぐぬぬ感に苛まれる状況ではないかと。

ユーザーはせいぜい写真アプリは2-3個しか使わない

事業者からユーザーへと視点を変えよう。私は女性と話す機会があるたびに、ひたすらどの写真アプリを使っているかをヒアリングしてきた。N=具体的な数字はいえないのだが、平均するとSNS系2つツール系1つ程度使うユーザーが多いように見受けられた。

SNSはinstagramが当然主流であり、あとはジャンル特化で使われる場合がある。ツール系はpapelookや美白にする詐欺写を作成する加工アプリの利用が多いようだが、デイリーユースではなく、月2-3回程度の利用頻度。

よって事業者がDL数やユーザー数が伸び、DAUやMAUが30％ありますと発表したところで、思ったほどには使われていないのではないか。月に１度の起動でMAUとカウントしていたのでは本当に使われているわけではない。人間の可処分時間が限られている以上、1ユーザーが使う写真アプリ数が増えることは考えにくく、パイの取り合いである。

ポータルへの集客装置としても機能しているか怪しい

写真アプリで単独で上場できるほどの収益を上げることは難しい。ならばサイバーエージェントのように写真アプリを乱発し、Amebaのようなポータルへの集客措置として有効に機能するのだろうか。

数字が開示されていないので断言しにくいが、写真アプリを売上が立たないコストセンターとするのであれば、そのコストを補い利益を出せるほどのトラフィックをポータルに誘導できているのかは疑わしい。買収前のinstagramのように低コスト運用で莫大なPVを上げる算段があればいいが。それなりのPVがあってもポータルへの集客にさほど寄与しないのであれば、Yahoo!やサイバーエージェントのような大手による買収も期待しにくい。

スタートアップの仕事は、不可能を可能にすることであるということは理解している。だが、明らかに不可能なものは早めに見切りを付けることも大事である。イケルヨ・モメンタムにハマってしまい、現実が見えていないスタートアップや投資家も少なくない。それとも僕には見えていない景色が彼らには見えているのか。その場合は記事をシェアして「写真アプリでも余裕で上場できますよ」と根拠と共にコメントいただきたい。

たまに業界外の人から「これってどうやって儲かるの？」とイノセンスに聞かれて答えに詰まることが少なくない。見えていないものを見えているフリをすることは良くない。

写真アプリはビジネスとしてどれほど収益を上げられるのか？皆さん、ぜひ考えてみて下さい。

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