CAスマホアプリ vs スタートアップ :群雄割拠の写真アプリ編

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*7月のThe Startupは平日1本配信される可能性がございます。

サイバーエージェント(以下CA)がスマホアプリ領域に特化し、様々なアプリをリリースしていくという戦略が発表され、一時期市場の注目を集めた。CAが今後どんなアプリをリリースしていくのか、このCAの戦略はスタートアップ界隈では大きな注目を集めている。自分たちの競合サービスがCAから出てくる可能性があるためである。

CAのゲーム以外のスマホアプリに特化して調べたところ、既にリリースされたアプリ、これからリリース予定のアプリで概要が明らかになっているのが22作品あった。驚くべきことにそのうち10作品が写真アプリに分類できた。ただでさえレッドオーシャンであった写真アプリ市場であるが、Facebookのinstagram買収が火に油を注ぎ、更なるレッドオーシャンと化す様相を示している。CAのリリース予定の写真スマホアプリと国内のメジャーな写真スマホアプリを比較し、本稿で今後の市場を占う。

CA写真アプリ①:ポストmy365系『思い出』写真アプリ

国内のヒット写真アプリの筆頭株ともいえるmy365は140万DLを突破。私の周辺でのアクティブ率は若干下がっては来ている気がするが、DL数は伸び、最近では柴咲コウなどの著名人も使い始めている。本誌でもリリース当初に取り上げている。

my365を『思い出系写真アプリ』と定義すると(コンセプト的に情緒に訴えかけている)それに類似するであろうサービスのリリースを4つも控えている。

①:アルバムアプリ『ALLbum』
②:赤ちゃん版my365『baby pic』
③:友達との楽しい日々を記録『友達年鑑』
④:タグであなたの写真が誰かのアルバムに『tagly』

my365はCAの子会社のシロクが運営している。写真アプリの中でもCA内ではレッドオーシャン化している『思い出系』アプリ。CAは昔から社内間競争を激化させることを好む傾向にあるが、各アプリとmy365とのポジショニングを見てみる。

思い出系写真アプリの重要KPIは多くの場合はMAUであろう。MAUを高めるには中毒性(継続率)を高める必要がある。その中で1日1枚というmy365の制約は上手く機能したと考えられる。アルバム系は「アルバムを作りたい」という必要性はあるものの、既にFacebookがアルバム機能を代替してしまっており、Facebookから別のプラットフォームに切り替えてアルバムを蓄積するというユーザー行動の敷居は高いであろう。

『baby pic』に関してはターゲットが生まれたばかりの子供を持つ親に絞られるため、マーケットはニッチだが確実な需要があるサービスと言えるであろう。my365で子供の写真を1日ずつ撮るユーザーは数%はいるであろうが、大きくカニバルほどではなく許容範囲といえるだろう。baby picはスマッシュヒットの可能性があると予測する。

『tagly』はオールジャンル×アルバムという切り口よりは、ソーシャル×アルバムという切り口の方が正しいであろう。他人の写真を自分のアルバムにするという発想は、Pinterestでの他人の写真をRepinしてBoardを作成するという行動設計に近く、Pinterestクローンの一種であろうと予測する。スケールの難易度は高いが、大穴となる可能性を秘めている。

懸念点としてはmy365の市場の喰い合いになるということ。写真アプリの中でも一歩抜出ている感のあるmy365から他のアプリにユーザーが流出することが想定される。あくまでこれからリリースされるアプリが流行ればだが。そしてmy365のプロモーションにおいてはこちらの記事で指摘している通り、CA女子や学生インフルエンサーを大きく巻き込み、 市場の話題をさらって立ち上げていった。

今回のアプリリースを乱発する戦略では、1つのアプリに特化してインフルエンサーを起点にバズらせていくという施策は有効に機能しないと考える。my365のような奇跡的な立ち上がりは期待できないであろう。

CAスマホアプリ②:難易度の高いCtoC取引系

このジャンルでは「毎日フリマ」「パシャオク」という写真を起点としたCtoC取引のアプリが2つリリース予定となっている。このジャンルは純粋な写真アプリというよりかは、CtoC取引サービスとして市場では見られるであろう。
CtoC取引の既存プレイヤーであるリブリス、Whytelistが競合にあたる。私もCtoC経験者として、こういうイベントを開催するなど、CtoCの難易度の高さは何度も訴えてきている。出品時に写真が必要となることが多い洋服などの場合は、ウェブブラウザではなく写真アプリの方が投稿ハードルが下がり、優位性はあると考えられる。

だが洋服をメインにした場合、既存のヤフオクなどは法人出品者が多く、法人出品者もokとするサービス文化とするのか、純粋なCユーザーのみとするのか。Cユーザーのみの場合は想定される市場規模はグッと下がり、立ち上げ時は特に商品の出品点数を集めることに頭を悩ませるであろう。

CtoCはかなり忍耐強い姿勢が要求され、数ヶ月後の達成KPIで撤退の有無が決められるような運営姿勢だとヒットは難しいであろう。胆力が必要な分野である。

CAスマホアプリ③:ジャンル特化型写真アプリ

ジャンル特化型は3つ。(『baby pic』を含めると4つ)ジャンル特化型はテイストグラフを形成しやすいため、それなりのマーケットニーズはあると思われる。

飲食系ではmiilにそっくりな『ペコリ』というアプリがあり、miilとの違いはリリース情報からは「手料理に特化するのかな?」くらいしかわからない。先行者にガチンコで挑んでも難しいのではないか。

動物系では『パシャっとmyペット』。ペット写真ジャンルは強い競合もいないため、マーケットが飲食ほどは大きくないであろうが、動物の写真を眺めるのが好きな人にとっては刺さる可能性が高く、スマッシュヒットの可能性はあるであろう。

『センスフル』というおもしろ画像コミュニティもある。これは面白そうなジャンルであり、たしかにソーシャル上では面白い画像がバズる傾向が強い。そうしたバズを乱発させられるアプリになると、良いトラフィックエンジンとなるアプリとなるかもしれない。強いて言えばnavarまとめが競合であろう。大穴として注目したい。

CAスマホアプリ④:写真加工系アプリ

写真加工系では『Mono Grapher』というモノ撮りをプロ風にできるという写真がある。MonoGrapherは撮った写真をジャンルごとに分け、コレクションとして他人と共有するとあり、Pinterest風な香りもする。

写真加工系ではデコレーションは先行者にSnapeeeDECOPICがいる。共に100万DL以上を達成しており、アジア圏での人気も高いという。Mono Grapherはこの2サービスとはポジショニング的には限らず、その写真の画質の精度にも依るが、「クールな写真を撮る」という観点では、最大の競合はinstagramだと考えられる。

写真アプリ市場はポジショニングを明確に意識せよ

CAスマホアプリ10個とその競合や市場のメインプレイヤー5個(リブリストwhytelistは比較対象には出したが写真アプリではないので外す)を比較して写真アプリ市場の概要は掴めてきたであろう。

ただ、ユーザーは写真アプリをいくつも使うだろうか?私がユーザーとして実際にたまに見ているのはinstagramとmy365であり、様々な人にヒアリングしても一般的に使われている写真アプリはinstagramだ。そして特にアルバム系写真はFacebookという大きな牙城がある。よほどの写真好きでなければ人はいくつも写真アプリを定常的に利用しない。

単独の写真アプリであればinstagramが現在は市場で最強であり、my365がそれを追随し、女性であればSnapeeeやDECOPIC、飲食ではmiilという相関図が現在の写真アプリマーケットの勢力図だ。よってジャンル特化型であればまだ可能性はあるであろうが、オールジャンルやアルバム型はinstagramやFacebookの牙城を崩すのは相当難しいであろう。

一方でPinterest風写真アプリは未開拓市場であり、Pinterest本体でも写真アプリ機能はあるものの自分で撮った写真を掲載している人は多くないように見え、新しい文化を創れるか否か、市場の可能性はあると思われる。

買収までは予測できなかったが、instagramが人気を博した理由に関しては2011年5月の本誌のinstagramの事例から導き出す「FBやtwitterの盲点を突けるサービスの方程式」が参考になるであろう。大手ができない点を突く柔道ストラテジー的な発想の紹介だ。

写真アプリのExitストーリー:プラットフォームへの売却

写真アプリはinstagramがFacebookに10億ドルで買収されたことにより、プラットフォームへの買収の親和性が高いものの、そのマネタイズに関してはあまり有効な検証ができていない。広告やフィルター課金ではある程度限界があるであろう。単独でIPOまでいくほどの収益を確保するのは難しく、プラットフォームへのトラフィックエンジンとして役割を果たすとことを期待され、プラットフォームへの売却路線が適当であろう。

一方でCAのスマホ写真アプリは、アメーバのユーザー層である女性ユーザーと相性が良いであろうため、写真アプリ単体でさほど収益が上がらなくても結果的にアメーバへ流し込めれば良いのではないだろうか。

今回のCAのスマホリリース戦略全般に言える話であるが、アプリ単独でのマネタイズは狙っておらず、アメーバへ流し込み、ピグで課金という絵が「デカグラフ」構想ではなかろうか。トラフィックエンジンとしてアプリを育て、100万DLやコミュニティとして大きく育った段階でアメーバと連携するという形になるのではないかと予測する。

「写真アプリ以外」のCAスマホアプリも今後紹介したい。

参考リンク集

CAスマートフォン向けリリース予定サービス一覧:CAのHP
Snapeee以上の衝撃を受けたライフアルバム写真共有アプリ「my365」:The Startup 2011/10/31
佐々木俊尚氏よりCA女子がWebサービスのプロモーション起点に最適な3つの理由:The Startup 2012/4/16
instagramの事例から導き出す「FBやtwitterの盲点を突けるサービスの方程式」:The Startup 2011/5/3
Amebaの「デカグラフ」構想:Cnet 2012/4/24

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