アベノミクスを追い風にした空前のスタートアップバブルが到来しつつある昨今、投資側のプレイヤーが事業会社を中心に急増しています。事実上、スタートアップの売り手市場ということができるでしょう。投資側のプレイヤーは増えましたが、ハンズオンでバリューアップできる投資家がいきなり増えたわけではありません。スタートアップ側にとっては選択肢は増えたでしょうが、投資家の力量差は開くばかりといえるでしょう。
とはいえ、そんな業界事情を熟知しているスタートアップはさほど多くないはず。特にシードステージの起業家なら尚更です。起業家たちが資金調達に際し、本誌のVCの赤本を読み漁っているという話もよく聞きます。
VCファンドにとってはいい起業家やスタートアップを惹き付けるマーケティングが必要なはずです。私がVCファンドの運営者であれば、どのようなマーケティング施策を実行するかをいくつか考えてみました。担当者のトラックレコードや信頼できる人からの紹介が一番投資の確度が高いという話は前提条件として、それ以外の施策を。最後に「起業家に対する5つのThe Startup推奨ファンド」も挙げておきます。
①:自社HPなどで投資担当者のトラックレコードを強調
投資検討先には資料提出を細かく求めるくせに、自社HPがしょぼいVCファンドはかなり多いです。自社HPを充実させるという基本を押さえるだけで差別化できてしまいます。投資検討で忙しいからと言い訳せずに、自社HPをささっと整えましょう。投資担当者のトラックレコードが結局は一番強いマーケティングの武器となりますので、どの担当者がどんな案件を担当しているのかを掲載しておくといいでしょう。
ひいては、投資担当者およびファンドに対する投資先からのコメント(ユーザーの声)的なコンテンツを載せた、コンテンツマーケティングまでしっかりできているVCファンドは私が調べた限りでは見当たらず、そこまでやり切れば明確な差別化になるでしょう。意外にHPは見られているものです。私は定期的に各ファンドのHPを巡回しています。
②:メディアを上手く活用する
本誌も含めてですが、メディアという第三者を上手く活用することもブランディングの観点で好ましいでしょう。メディア露出が多いファンドは、活発に活動しているんだなという印象を受けます。たとえ中身が伴っていなくても、露出が多いだけ(勿論好意的な露出が多い方がいいですが、回数だけでも)で人々は勘違いするものです。
この点、露出の少ないファンドは「知る人ぞ知る」感を演出している場合もあるでしょうが、元々知名度が高い方が運用されているのであればいいのでしょうが、露出の多いファンドに対して知名度で不利に働いてしまうこともあります。後に「The Startup推奨ファンド」を発表しますが、メディアを通して良いレピュテーションを広めることは重要ではないでしょうか。
③:イベントを主催する、ブログを書く?
イベントを主催しているとメディアもネタにしやすいですし、イベント参加者はオフラインで投資担当者と知り合うことで親近感を持ち、印象が良くなったりするでしょう。イベントは大きいものでもいいですし、非公式な少人数の飲み会でもいいと思いますけどね。
なんだか3つとも至極普通な指摘になってしまった感がありますが、地道な施策をどれだけ継続できるかで他のファンドとの差別化になるでしょう。これからは投資プレイヤーが増えていくので、良い案件を獲得する難易度は上がってくるはずです。それこそ、VCの方々もブログでもやって、知見が高そうなPRをすると案件の情報が入りやすくなると思うのですが、定期的に継続される方はあまり多くない印象ですね。
起業家に対する5つのThe Startup推奨ファンド
投資側のプレイヤーが増えていますが、The Startupではメディア立ち上げ2年半の歴史を元に、スタートアップ側に対して投資を受けることを推奨できるファンドを5つ選定しましたので、発表します。本誌を長く読まれている方にとってはやっぱり感があるでしょうが、「推奨」と明言するのは始めてではないでしょうか。(注:金融商品としてのファンドの推奨ではありません。念のため)
いずれのファンドからもThe Startupは資本関係や広告出稿などはいただいておりません。あくまで独断による推奨ですが、市場コンセンサスと大幅な乖離はないと思われます。
■シードステージ:Incubate Fund
シードステージのファンドもいくつかありますが、Campでのブラッシュアップ具合やファンドのメンバーの個性を鑑みると、シードでは一番お勧めのファンドといえるでしょう。
■アーリーステージ:CAV
先日の1億「以下」調達まとめでも発表した通り、アーリーの投資件数はCAVが一番多いように見えます。比較的良い(手堅そうな)案件に投資されていらっしゃる印象です。おそらくアーリーステージでの増資を検討するスタートアップは大体一度はCAVにコンタクトしてるのではないでしょうか。
いうまでもない感じですが。今後も高い確率でIPO銘柄を輩出していくであろうGCPと、2012年のThe Startupが選ぶVC of the Yearを獲得したITVの2社がシリーズA(億単位)では双璧といえるかと思います。GCPは今野氏や高宮氏の切れ味が抜群。ITVは事業シナジーが見込め、あの熱い河野氏もいるという点は、市場にも広く知れ渡っていることでしょう。
■オールラウンド:DGインキュベーション
数千万円の投資もあれば、億単位もあるDG。ファンドではなく、デジタルガレージの100%出資ですが、シレっと入れておきます。私も以前外部アドバイザーで関わっていたオーセンス社に投資をされており、投資担当の石丸氏がデジタルガレージの資産を活用して、様々な専門家を送り込む手法は高い付加価値があると感じました。まさにインキュベーションといえるようなハンズオンが期待できるといえ、推奨VC(ファンドではないですが)に入れました。
私のイメージですが、これらの推奨ファンドから投資されている銘柄は「何となくのお洒落感」があるようにも市場から見られることもあるんじゃないかなと。金にお洒落もクソもないだろうというツッコミもあるでしょうが、ブランディングは大事ですよね。各ファンドの動向に、今後も注視したいと思います。
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