キャピタリストは優れた戦略コンサルタントでもあるべき

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medium_6829385031キャピタリストの価値ってなんだろうか。

しばしば考えることがあるのだが、先日のIncubate Campに参加して得た視点を加えて、考えてみたい。

■投資後のキャピタリストの価値/能力

・本人価値
1人で投資先のサービスの戦略を構築し、必要あらば経営陣として投資先をハンドリングし、時にオペレーションまで遂行する能力

・他人価値
業界ネットワークによるアライアンスや、リクルーティングで他の人材を投資先に送り込む、次のラウンドの資金調達をアレンジする能力

「本人価値」「他人価値」という造語を作ったが、キャピタリスト1人が乗り込んだだけでも戦略策定やオペレーションで付加価値を出せるパターンと、キャピタリストが自身の周りの人的資本を投下してレバレッジを効かせるパターンがあるかと思う。

この両方の能力が高ければ高いほどキャピタリストとしての価値が高いといえるだろうが、現実問題としてどちらかに強いとか、本人価値でもビッグピクチャーを描くのに強いとか、オペレーションに強いとか、項目を細分化できる。個々のキャピタリストの能力を可視化すると、よくある五角形の図ができるだろう。

私が仮にキャピタリストをやるとして冷静に見ると、実は顔が広くないので他人価値でレバレッジを効かせるのは不得手だ。ここぞというピンポイントはできるかもしれないが、他人価値を最大化させるなら顔は広い方がいいし、ここに特化したキャピタリストもいるかと思う。

実際に私は今数社のコンサルティングを手掛けているが、経営戦略レイヤーというよりかはプロモーション戦略やそのディレクションが多い。よって、そこならまだ価値が出せるかもしれない。今回は本人価値について考える。

戦略コンサルタントとしての大きな誤解

多くの投資家に取材したり、Incubate Campで話を聞く中で、当初のビジネスプランよりも起業家を見て投資判断する方が圧倒的に多いということが判明した。よほどのプランじゃなければピボットしていく。狙うマーケットの軸はぶらさず、サービス内容を変えていく。その際に有用なのが多くのスタートアップの事例を見てきているキャピタリストの意見だ。

様々なスタートアップに外部から出入りしていた私は、キャピタリストだったり他の外部アドバイザーの意見で戦略が大きく変わる瞬間を、たびたび目にしてきた。本来は元のプランが良くて、経営者もキレキレであれば、戦略転換の助言は必要なく、経営者の戦略をサポートすれば良い。

私は戦略コンサルタント経験もなく(スタートアップのコンサルを少し手掛ける端くれだが)、経験ない奴が語るなとかいうワンパターンの批判がありそうだが、「自分の助言が起業家やサービスにどれだけインパクトを与えられるか」という点が価値であると思い込んでいた。誤解を恐れずにいえば、自分の意見が通れば通るほど、対象企業に対して価値を出せていると思っていた節があった。

有用な戦略オプションを提示することも、提供価値になる

仮に意見が通らなくても、起業家が気づかない視点を提供し、取り得るオプションを増やすことができれば、それも価値になっているといえるだろう。

決断するのは起業家自身だが、事業を前に進めるためにフォーカスしたりオプションを提示したりなど、戦略コンサルタント的な価値を1人で単独で発揮する能力もキャピタリストの高い付加価値となるのではないか。細分化して羅列するとこんな能力となるであろう。

・ビッグピクチャーを描く力
・ゼロベース思考(≒ウルトラC)
・コンセプトメイキング
・オペレーション構築および効率化

いずれも社内だけでは出てこない視点を提示することが価値となる。特にビックピクチャーを間違えると致命的で時間をロスするため、事業の本質を見抜き、ビジネスとして成立しスケールするプランを磨く力は重要だ。

戦略コンサルタントとしての側面を持つキャピタリスト

投資先よりもキャピタリストの方が数多くの事例を見ているため、ノウハウを蓄積している。そのノウハウを元に戦略オプションを提示したり、時に転換させるほどのインパクトを提供するという観点では戦略コンサルティング業と似ている。

私自身はキャピタリストではないが、外部アドバイザーとしてクライアントに提供できる価値の範囲はキャピタリストとさほど変わらないはず。「キャピタリストが入るよりも梅木が外部アドバイザーで入った方が事業価値が上がる」と言われるようになるというのが独立時の一つのベンチマークでもあったが、コンサルティングの精度はまだまだで、上げる余地が十分にある。

誰から調達するかが重要といわれるが、キャピタリストとのコミュニケーションから、本人価値が高いのか他人価値が高いのか、自社に必要なのはどういう能力に秀でたキャピタリストなのかを見極めることも必要であろう。「誰々がいい」という評判だけが立ち、中身はブラックボックスであることのが現状で、実際に調達に際しコミュニケーションした時か詳細なレファレンスを通してしかわからない。

どのタイプがいいというのではなく、結局は相性という無難な論に終始してしまう。1つだけいえるのは、キャピタリストとしての価値を向上するためには、他人価値も重要であるが、本人価値を高めて、単独でも大きく付加価値を提供できる能力を高めていく努力が求められるということ。私はメディアとして日々のニュースを追うだけでなく、実地と妄想のケーススタディを繰り広げ、その精度を高めたいと思う。

意識高い系の投稿となってしまったが、短時間で本質を見極めてビッグピクチャーを描き、コンセプトメイキングする力が、あの短期間のIncubate Campでは特に重要であり、キャピタリストの実力差が見えたと感じた。

メディアからヴェンチャーキャピタリストに転身された方もいらっしゃるが、私は当面ヴェンチャーキャピタリストになる予定はない。

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