日本国内におけるFacebookのアクティブユーザー数の低下が最近指摘され始めています。(参考記事)2012年3月に本誌で発表した、2013年には若い女性のFacebook離れが深刻化する?:4つのコミュニケーションツールの今後の使われ方、の「Facebook離れ」の予言の実現の予兆と見て良いと考えています。私なりの定性的な調査により、Facebookへの投稿パターン及びその投稿が減少する仮説を本稿で展開します。
注:未来予測記事です。長いです。6,000文字近くです。PCで閲覧推奨。
まずFacebookへの投稿は前提条件として、twitterと比較して何らかの承認欲求(リアクションが欲しい欲求)が高いと思われます。承認欲求の種類が人の性格や立場によって違うのではないかと仮説を立て、下記の4パターンに分類しました。FBに比較的頻繁に投稿される方は、いずれかのパターンに当てはまるかと思います。
1:「社長日報」に代表されるビジネス的なPRパターン
私のフレンドにスタートアップの経営者が多いことが多分に関係していると思われますが、毎日のように自社のトピックスやビジネス的な気づきを発信されているパターンは多数見かけます。すごくわかりやすいのが、KPIの達成報告です。この手の方は、常に自分(か自分のサービスに)注目されていたい深層心理があるのではないかと思う。顕示欲的な。
自社サービスに関すること以外でもビジネスの情報発信は多々あり、従来であればこの手のことは社内で完結させていそうなことです。社長の場合は社内で日報を書くこともない場合が多いと思いますので、敢えてこのパターンを「社長日報」パターンと名付けておきます。
社長日報の更新が多いと、周囲の関係者は「またかよ…」と思い、無言の「いいね!」圧力を感じます。ihayato.newsで「シャチクのミカタ」の記事がバズったのも、「社長日報」へのリアクションで疲弊した社畜の方々からの強力な共感があったからであると推測できます。
社長日報に限らず、どこかの会社のブログによくありそうな「今日の気づき」パターンもここに含まれます。気づき投稿は案外刺さることも少なくないようです。要はビジネスに関する何らかの投稿であり、自社サービスのPRよりもその人個人の思考に対しての方がリアクションは付きやすいように思えます。誰しもがPRを見たくてFBをやるわけではないのです。
注:皮肉っぽく書きましたが「社長日報」への批判ではございません。が、過剰な社長日報に対して従業員がストレスを溜める原因にもなり得ることは認識しておいても良いかと思います。こういうこともあり得ますので、気をつけましょう。「いいね!」強要する「ソーハラ」 上司や会社から慰謝料もらえるか?
2:twitterライクなどうでもいい独り言多いパターン
もともとtwitterが得意な人に見られるパターン。目安としては1万ツイートを超える程度のtwitterユーザーがtwitterの最近の殺伐とした空気に嫌気が差したり、アクティブ率の低下により感覚値としてRTやふぁぼが減ってきたので、FBに投稿してみるかという感じでしょうか。
よって基本的にわりとどうでもいいテキストの投稿が多い。ですが、どうでもいい投稿に対して「いいね!」が案外付くのが面白くて、またどうでもいいテキスト投稿をしてしまう。というループに入る。twitterでもいいんだけどFBの方が反応あるから。という何だかんだできっとリアクションが欲しいパターン。寂しがりや的な深層心理。
どうでもいい(もしくはネタ的な)テキスト投稿パターンは、不思議なことに長い文字数よりもtwitter程度(140文字くらい)の文字数へのリアクション率が一番高いように見ていて思えます。FBのタイムラインもtwitter同様フロー性が高いため、瞬時にコンテンツ内容を把握できた方がリアクションもしやすいという仮説が立てられます。
しかし、このtwitterパターンの投稿が多い人もウザがられるでしょう。僕ももともとtwitterが好きな人なので、FBにおいて自分の行動が最も近いのはこのパターンです。twitterパターンの投稿が多い人を「ニュースフィードから非表示」している人も多いと思う。ほどよい投稿数(この種のデイリー投稿が1-2件)くらいがフレンド(そもそもFBフレンド=本当にフレンド?ではあるが)にウザがられないくらいのラインではないか。
注:twitter「男子」としましたが、ごく稀に女性でもテキスト投稿が多いパターンは存在します。
3:破壊的なコンテンツ力を有するキラキラリア充女子
続いてはFBで最も強力なコンテンツと思われる「自分の写真」を投下してくるキラキラリア充女子パターンです。キラキラリア充女子たちはオフの日に自分たちがいかにリア充であるかを証明する写真や、ライフイベント的な投稿をして、多数の「いいね!」を獲得していきます。逆にどうでもいいテキスト投稿はほぼ見かけません。
彼女たちの動機は「チヤホヤされたい!」が主であると断言して良いでしょう。「かわいい!」と言われることに貪欲な層です。なので下手なテキスト投稿でリアクションが少なかったりすると凹むため、リスクは取らないのです。その分、写真にはかなり命をかけて加工する人も少なくない。「かわいい中毒」に陥っているともいえる。
そもそもFBの最初の設計は、大学の女の子の写真2枚を表示して「どっちがかわいい?」にクリックするものだったと思う。(映画ソーシャルネットワークにあったと思う)要はFBはザッカーバーグという非リアが、「同じ授業取ってる可愛いあの子と近づきたいぜ!」という下心から始まったサービス。FBがあれば気になるあの子と近づけるさと。しかもオンラインでかわいい女子の写真を足跡もなしに見放題。これはFB内のクリック数を相当稼いでいるドル箱コンテンツだと思うのです。
現状のFB内ではドル箱コンテンツと思われるキラキラリア充女子の自分撮り写真ですが、FB内でのトラフィックの増加でアテンションを取りにくくなり、impressionが下がり、結果的に「いいね!」数が減っていくことで、次第に女子たちの投稿モチベーションも下がってくるのではないかと予測ています。この「投稿が減るロジック」は後述。
ちなみに僕はこの手の投稿には死んでもいいね!しません。自分の本心をオンライン上では伝えたくないのです。ですが内心、「いいね!」すぎて悶えることもあります。夜仕事してることが多い僕は、飲み会のキラキラ女子の写真が上がってくるとなんか負けた気持ちになります。
4:役立つと見せて、賢いだろ?ドヤ!キリッと思われたい
最後はわりと地味なんですが、「この記事、いい記事!」とか「この本、いい本だった!」と自分が良いと思ったものをレコメンドしてくれる人。僕のようなコンテンツ制作側にとっては最も有難い方々がこの層です。純粋に人の役に立ちたい(もしくはコンテンツ制作者への賛辞?)心理もあると思いますが、「この記事を見つけた俺、ドヤ!キリッ)」という心理もあるかと思われます。
僕はコンテンツ制作側なので、自分が書いた記事などは頑張ってシェアしなければなりません。あまり他人の記事をシェアすることはないので、いい人ではありませんし、ドヤ!キリッ)の心理も持ち合わせません。コンテンツ制作者として感じるのはこの手の層に刺さるのは「考察が鋭い」記事かと思います。
ネタ記事は2のtwittterパターンの方がお好きかと思いますので、「考察鋭い系」「ネタ系」でバズる起点は違ってくると思って良いでしょう。(稀に両方カバーするNHNの田端さんのような方もいますが)
ドヤ!キリッ)とか思ってないわ!と突っ込まれそうですが、基本的にこの層の方々はいい人だと思います。もっと僕の記事をシェアしてくれればいいのに。会った時に直接記事の感想を言われるのも嬉しいですが、シェアしてくれた方が数字に反映されますので、コンテンツ制作者はシェアされると喜ぶ。人を喜ばすことが好きな層がこのパターンともいえる。
2013年、日本のFB投稿が減るユーザー体験サイクルとは?
既に一部ではFB投稿が減ってきていることに気づいていたり、昔はたまに投稿していたけど、最近はめっきりロムになったユーザーもいるでしょう。2013年は「1:社長日報パターン」の投稿こそ増えども、プライベートな投稿に関しては減っていくと、下記のサイクルから仮説を立てます。
■1:フレンド数が増えすぎてしまった
フレンド申請を断れない日本人。FB内では公私の人間関係が混合しており、Linkedinが日本で流行らないであろう要因にもなっています。フレンド数が増えることで、特定の誰かに向けた投稿は更にしにくくなる。
■2:誰に見られているかわからず、気軽な投稿がしにくくなった
1の要因から、特にプライベートなどうでもいいこととかを投稿しにくくなる。これ投稿すると、あの人に見られるとマズいかな?という心理が働き、投稿が自分の中で制限されていく。
■3:全体のトラフィック量の増加により、個人へのいいね!数は減る
フレンド数が増え、それによって皆のタイムラインに表示される情報量も増える。1日にFBで過ごす時間が大きく変わらなければ、トラフィックが増えることで、1投稿あたりに対するアテンションは下がり、結果的に投稿に対する「いいね!」CTRは下がります(一部のいいね!を集めるコンテンツがさらに強くなる、というロジックにもなる)
■4:いいね!数が減ることで投稿モチベーションが下がる
人々の投稿モチベーションは「いいね!」をもらえることですから、「いいね!」が付かなくなってくると、もういいやと投稿をやめていきます。いいね!がなくても投稿し続けられるのはtwitter慣れしている独り言が多い層くらいです。
■5:確実にいいね!数を稼げそうなライフイベント系のみの投稿となる
結果的には、仕事上の大きな成果や転職、交際ステータスの変更に関する投稿のような、確実に「いいね!」がもらえそうなライフイベント系のみに絞った投稿へ収斂し、FBへの投稿数が減っていくと仮説を立てます。
このロジックのサイクル以外に、「そもそも、いいね!するの、ダルいわ」という昔でいうmixi疲れのようなFacebook疲れも発症するダブルパンチが予測されます。
ポストFB – ①:会話目的のLINEと感情共有のPath
とはいえFBは大きなプラットフォームの地位を維持し続けることは間違いないと見ています。緩やかにトラフィックは落ちていくと思いますが。ポストFBにおけるコミュニケーションツールは昨年の記事と同じく引き続きLINEとPathで見ていきます。
LINEグループでコミュニケーションを取る人も多いと聞きますが(僕はほとんど使ったことないです。男同士でLINEのスタンプ送ってても気持ち悪い)LINEはコミュニケーションが主目的で、Pathは鍵を付けてtwitterをやっている心理に近いといえます。
Pathは牧歌的という表現も昔はしたことがありますが、皆さんかなり赤裸々な感情を投稿されますね。独り言だけど、身近な人には知っておいてほしいとか、自分の感情のログにしたいとか、そういうニーズがある。現在僕自身が最もアクティブなSNSはPathであると、Pathフレンドの皆さんはお分かりだと思います。
Pathがなくなったらマジ困る」という女性ユーザーは結構いるんじゃないかな。Pathは感情を投稿するSNSです。感情は身近な人々だけになら共有してもいいと思うユーザーが多いのでは。ただし、ビジネスとしては外部ネットワーク性とトレードオフなのでスケールしにくいことは明らか。ですが、SNSは「会話が主目的」ではないと思うので、ポストFBという観点ではPathのコンセプトは時流に合っていると思う。
■参考記事:「恋愛」「秘密」などの独自の投稿パターン:Pathの4段階のUXフェーズ
ポストFB – ②:RettyやSumallyなどのバーティカルSNS
FBのコミュニケーションが主目的な投稿はLINEへ、感情共有はPathへ流れます。一方で「このレストランの料理、美味かった!」や「この靴買ったんだ!見てみて!」という投稿はFBでスルーされて友人からの「いいね!」もどんどん減っていく流れが予測されます。
本誌では「テイストグラフ」という呼び方も昔はしましたが、FB連携をベースとした特定の分野に特化したSNS、いわゆる「バーティカルSNS」がスケールする土壌が2013年は整ってきたといえると思います。食ならRetty、衣服などのモノならSumally、ファンクラブならRevolver、女子会ならGIRL’S TALK。(GIRL’S TALKはFB連携のメリットはないが、ニーズは強くある)
本誌で取り上げてきたバーティカルSNSはFBの流れの影響を大きく受けると僕は思う。FBでのユーザー体験の反動(FB内にその趣味を共有できる友人が少なく、投稿に対してリアクションがない。けど、その趣味について話したい!)が大きくなり、ユーザーニーズを満たし、上記に挙げたサービスは全てある程度までスケールすると踏んでいます。FB疲れというコンテクストの流れの上に、有利に成立する時流に沿ったサービスだから。
■参考記事
1:iQonとRettyにみる成功するテイストグラフの特性
2:なぜPinterestよりもSumallyにハマるのか?
3:Teamtomoなど画像起点のセレブリティSNSを展開するリボルバー
4:GIRL’S TALKにみる匿名と相性が良いバーティカルテキストメディアの可能性
FBの影響をどう受けるのか、スタートアップは考えよう
とても長い記事になってしまいましたが、本誌のメイン読者である経営者や投資家の皆さんはポストFB時代に関するご自身なりの仮説をお持ちだと思います。自分が携わるサービスに有利な流れになるのか不利な流れになるのか。FBの凋落が顕在化してきてからの対策では遅いので、未来を創造する立場の方々は時代の三歩くらい先を読み通す必要があるでしょう。
今後は私も時間を作って未来予測の妄想記事を増やしていこうと思う。
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