Not Owned Media , but Custom Media

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オウンドメディアという言葉を聞く機会が増えてきたが、どうもつまらない記事やメディアが多い。僕が様々な事情から書くことを躊躇っていたうちに、イケダさんが先にこんなことを書いている。

オウンドメディア(企業ブログ)が流行ってるけど、どれも面白くない件

僕もこれは激しく同意で、オウンドメディアの構造的な問題を少し考えた。それに付随して最近知った「カスタムメディア」の概念も紹介したい。

(つまらない)オウンドメディアあるある

僕の知見から、まずはあるあるを紹介。

■1:リスティングやリワードと並列でCPAを単一の成果指標とする

導入提案した企業(多くはB2Cサービス)ではCPAを成果指標とされ、「数字的に合わない」と言われて導入しないところがあった。各チャネルでCPAを測り効率的なところに投下していくのはマーケターのセオリーといえる。

しかし、サービスによっては目先のCPAよりも重要な指標がある。月額課金サービスの場合はリワードやアフィリエイトより記事を読んで登録したユーザーの方がサービス理解力が高く、サービスにとっての優良顧客である可能性も高く、LTVが結果的に高くなる場合も十分あり得る。

課金サービスであればLTVまで落とし込んで成果を図りやすいが、B2Cにおいては無料サービスも多く悩ましい。短期的にPVやCPAという表層的な指標に捉われ過ぎていて、ユーザーの種類を考えるという視点。ひいてはコンテンツで優良なユーザーを引っ張ってくるという視点に事業者が立てていない。だからリスティングやリワードと並列でコンテンツを考えてしまう。

■2:面白い尖った記事は企業側からストップがかかる

これは僕が実際に体験した例。よくあるユーザーインタビューの記事。B2BならともかくB2Cサービスでありきたりなインタビュー記事など誰も読みたくはない。そこで相当エッジを立たせた記事を作って見たが、クライアントからNGが出た。

僕のような経験はおそらく珍しくはなく、日常茶飯事だと思われる。「オウンドメディア」であるがゆえに、事業者にメディアのコントロール権がある。「編集の独立」を維持するのは難しく、リスクが一ミリでもありそうなら介入される。The Startupを定常的に見ている読者の方ならわかるだろうが、リスクを取った記事の方が、賛否両論あって面白い。全世界60億人に絶賛される記事などほぼない。

結果、企業は保身に走り、つまらないコンテンツが量産され、果てはクラウドソーシングで1記事100円で生産される顛末となる。もちろん、編集や書き手に100%任せ切って自由にさせてくれる企業もある。実際、僕のクライアントでもそういう企業はあった。しかし、企業の配下にある「オウンドメディア」では「企業ブログ」から脱却できないところが多い。僕はかつてこういう解釈をしていた。

■企業ブログ:自社のPR記事のみ
例:こんな機能追加しました!ユーザー100万人突破しました!

■オウンドメディア:自社に限らず業界の情報発信
例:Rettyのオウンドメディアで武田さんがTERIYAKIについて語る

おそらく、Rettyのオウンドメディアで武田さんはTERIYAKIについて語りません。同じグルメサービスの認知を「なぜRettyブランド上で上げねばならんのだ」と思われるはずです。ここにオウンドメディアの限界がある。

カスタムメディアとは:第三者による広告メディア?

広告のみの集客には限界があり、コンテンツでの集客を考える必要性があると僕は考えている。

そんな麗らかな4月の土曜の午後に、高広さんからメッセージがあった。あの(僕をよく弄る)タカヒロさんからだ。後日お茶をご一緒させていただいたのだが、そこではじめて聞いたのが「カスタムメディア」という概念だった。海外では少しあるようだが、日本国内ではほとんど耳慣れない。このようなイメージだ。

スクリーンショット 2014-04-29 13.11.42オウンドメディアは企業が自ら運営する。運営費は自社持ちだ。
カスタムメディアは第三者のメディアに対して企業が広告出稿する。

B2B企業は広告を出稿したいメディアが存在しない場合がある。だったらその企業が広告を出したいメディアを作ればいい。それがカスタムメディアの概念だ(高広氏)

カスタムメディアのようなメディアの例

2つカスタムメディアに近しいメディアがある。

■1:伊勢丹によるFASHION HEADLINE

伊勢丹とイードが合弁会社(第三者)を作り、そこでファッション業界のコンテンツを発信する。伊勢丹関連の情報は「10%以下」としているようであり、オウンドメディアとしてみれば比率は低いかもしれないが、カスタムメディアとしてみると妥当な比率と言えるかもしれない。

参考:三越伊勢丹のオウンドメディア「FASHION HEADLINE」が目指す成果目的とは?

■2:コロプラによるSocial game info

ソシャゲ業界メディアでありgloopsの子会社として立ち上げたオウンドメディアといえるが、コロプラに買収されている。その後同サイトではコロプラの採用情報が右カラムに優先的に置かれ、コロプラに関する情報発信の優先度が高そうだ(全体に対する比率は数%程度と思われるが)

■ケーススタディ:The Crowdsourcing

新規でカスタムメディアを作るのであればどんなメディアが考えられるか。例えば「The Crowdsourcing」というメディアを立ち上げ、月次で各クラウドソーシングサービスの月間流通取扱高や、oDeskのような海外サービスの動きを紹介する。そこにC社やL社が広告出稿する、ないしは運営費を支払うという構造だ。

企業の認知の場を生み出すという発想がカスタムメディア

なぜカスタムメディアが必要とされるのか。企業がサービスの認知を上げるために広告を出稿したくとも、サービスと相性の良い適切な広告媒体が存在しない場合がある。B2CよりB2Bサービスにおいて顕著な傾向である。

B2Bサービスにおいてはそのサービスを導入する意思決定者にサービスを認知し、理解してもらう必要がある。実際に問い合わせに至るまでのフローを簡略化すると下記が想定される。

■B2Bサービスの問い合わせ過程の短絡的な設計

1:サービスAを知った!
2:Aを使ってみたいから問い合わせよう!

■B2Bサービスの問い合わせ過程の綿密な設計

1:サービスAを知った!
2:サービスAを少しだけ理解できた!
3:Aを使ってみたいから問い合わせよう!

特にB2Bにおいては2の「サービスの理解」があるか否かで問い合わせ率が大きく変動するはずだ。単純なリスティング広告やFB広告では遷移先にサービス理解を促進するランディングページを置いているだろうが、そのLPも数がそんなに多いわけでもなく、LPに対してSEOで多くの人が流入してくることも考えにくい。「サービスの理解」を促進するためにコンテンツは相性が良い。まずその観点で、特にB2Bサービスにおいてはコンテンツが必要なのである。

次にオウンドメディアではなくなぜカスタムメディアなのか。冒頭に述べた通り、オウンドメディアでは企業の配下にあることからも、面白いコンテンツを生産しにくく、どうしても企業色が拭い切れないことが多い。カスタムメディアのような第三者運営によるメディアであれば、編集がよりフラットに機能しやすく(広告主による意向はあるにせよ)コンテンツの自由度は増す。特定の企業に関する情報ではなく、特定の業界に関するメディアの方が広く読者に関心を持たれやすい。

カスタムメディアで一定の集客が機能すれば、広告主もその恩恵を受け、一定の認知を上げることができる。オウンドメディアで集客するよりも幅広い読者層を獲得し、認知を上げるというクライアントゴールもオウンドメディアよりも達成できる確率が上がる。集客ができるカスタムメディアはオウンドメディアより効果があり、特にB2Bで広告予算の投下先が乏しい企業であればカスタムメディアへの投資が機能する確率は高いと考える。

スタートアップに応用するのであれば、大型資金調達が多い業界で取り組むのもありかもしれない。例えば、「The FinTech」というカスタムメディアを僕がマネーフォワードとfreeeを広告主として立ち上げる。そんなイメージだ。両社とも既にオウンドメディアを持っているが、8億円と6億円の投下先としてカスタムメディアをやってみるのもありかもしれない。

カスタムメディアの可能性、みなさんどうお考えでしょうか。NewsPicksなどでぜひご意見下さい。

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