画像起点のセレブリティSNSを展開するリボルバー

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本業と趣味を兼ねてそれなりの数のスタートアップのビジネスモデルをみているが、「最近、お勧めのスタートアップは?」と聞かれることが多い。「お勧め」とか「注目」という言葉が肝で、「ここいいよね!」と言ったサービスが伸びなかったりすると私自身のレピュテーションリスクに繋がるため、軽率にお勧めスタートアップを挙げることはできない。

そこで、私がリスクを張ってまで「ここは面白い!伸びそう!」といえるスタートアップをこの「Hot Startup」というシリーズでご紹介する。PV度外視の玄人向けだ。

新コーナー「Hot Startup」は主にこういう構成でお送りする。

①:事業紹介と事業背景
②:ファイナンス概況
③:収益モデルとマーケット予測
④:Umekiの考察

初回は企業やセレブリティのコミュニティメディアプラットフォームを運営する株式会社リボルバーを紹介する。

BackplaneプロデュースのLittleMonsters.comモデル

まず、Backplaneをご存知だろうか。LADY GAGAのLittleMonsters.comというファン専用SNSを運営している米国のスタートアップだ。Google Venturesなどから$5.8Mを調達している。(出展:crunch base)ちなみに、LADY GAGAもBackplaneに出資しているようだ。

LittleMonsters.comに関しては本誌でも9月に一度お届けしている。(The startup:ファン同士もインタラクティブな新時代のオウンドメディア:LADY GAGAのLittleMonsters.com)しかし、記事の内容がイマイチだったのか、読者にセンスがなかったのか、今年度の本誌でワースト○位に入るPVであった。LittleMonsters.comに関しては上記の記事をご覧頂くとして、リボルバーについて深堀りしていきたい。

リボルバーはLittleMonsters.comのようなセレブリティや特定の企業のファンに特化したコミュニティを運営する。初期はAKB48の板野友美氏のTeamtomoから始まり、最近では土屋アンナ氏によるANNA’s HEARTを開始している。(下記の写真は倖田來未氏のpeeproom

写真が中心となるUIのSNSで、セレブ本人やスタッフによる投稿にファンが反応したり、ファンからの投稿にセレブ本人がコメントすることもある。ファンにはセレブ本人と交流できる点が最も喜ばれているようだ。Teamtomoのファン数は既に1万人台後半に上るという。リボルバーではアーティストに限らないセレブリティ(例:政治家)や写真起点のUIを活かし、FancyやFab.comのようなコマースモデルでの展開も視野にいれているという。

画像を中心にコアな話題を楽しむ次代のバーティカルSNS

リボルバーが運営するコミュニティにおいて「画像」「コアなファンとコアな話題」この2つの要素が欠かせない。

■画像がwebのトラフィックの起点、国境も超えていく:海外比率は30%

リボルバーを運営する小川浩氏は画像がトラフィックの中心となる時代が到来したと、アゴラでの寄稿:Twitter vs Instagram – 画像が生むトラフィックの奪い合いが始まった。にて指摘している。特に「ソーシャルメディア全体のトラフィック発生源(つまりクリックされているコンテンツ)の70%は画像」この事実は、画像コンテンツが中心となる世界に既になっていることを示している。Facebookだって「いいね!」が一番良く付くのは画像だ。

Pinterestのトラフィックの伸びや、Fab.comのような画像から購入まで少ないクリックで済むUXなど、急速に画像を中心としたwebの世界が拡がってきている。画像とスマホは特に相性が良く、セレンディピティも誘発しやすい。リボルバーの各コミュニティもスマホやタブレット対応しており、現状スマホとタブレットでトラフィックの70%となっているという。画像ベースであることで国境を越えることもでき、ユーザーの30%が海外からであるそうだ。

■Facebookに投稿できないコアなネタで盛り上がれる

「コアなファンとコアな話題」に関しては、Facebookで多くの人と交流しやすい時代になったとはいえ、1,000人のフレンドがいる人が、マニアックすぎるネタをFacebookに投稿しすぎるのは少し躊躇われる。AKB48のファンのFacebookの友人が、毎日AKBの写真をシェアしていたらフィード講読をやめる友人が増えても致し方ないであろう。

しかし、誰かとAKBについて語りたい。盛り上がりたいという欲求はある。その欲求に対するソリューションとなるのが、特定の話題に特化したバーティカルSNSだ。ここでなら思い切り好きなコンテンツの話ができる。しかも本人が自分の投稿にコメントをくれるかもしれないという。コアなファンにはたまらないであろう。

「画像」によるクリック誘発でトラフィックを最大化しつつ、コアなファンが好きにコアなネタを語ることができる。こうした要素から、リボルバーのコミュニティのMAUは50%前後という高いMAU率を実現している。

CAVがコンセプト段階で2,000万円を出資

本誌の「VCの赤本」コーナーに先日ご登場頂いたCAV代表取締役の田島氏がリードインベスターを務める。コンセプトを即座に理解し、マーケットニーズがあると判断した田島氏は、サービスリリース前のコンセプト段階で2,000万円の出資を実行した。

300万円程度の出資ならまだしも、サービスリリース前の数千万円台の出資は国内ではまだあまり多くない。田島氏の感度の高さが光ったといえるであろう。「投資家を入れているからには、何らかでのExitを強く意識している」(小川氏)。リボルバーは次のファイナンスに向けて現在動いている最中だという。

収益モデル:ファンからの月額課金とSNS内コマース

収益モデルは既存の会員制ファンクラブの年会費を参考にしつつ算出する月額課金と、SNS内でのコマースを考えているという。「年会費は3,000-5,000円が多く、それをベース考えると月額500-600円くらいを検討している」(小川氏)見込み獲得ファン数と収益モデルは下記の図の通り。

コミュニティへのトラフィックエンジンは、そのセレブリティの各ソーシャルメディアが担う。Facebookとtwitterを図では例としたが、実際はアメブロからのトラフィックも多いという。「トラフィックによる交流と、ビジネスの商流をこのプラットフォーム上で作りたい」(小川氏)と語るだけあり、マネタイズモデルも多様で魅力的だ。国内でのマーケットポテンシャルは下記。

ザックリとした数値でおいてみたが、国内のユーザー課金のみでもそれなりの市場にはなりそうだ。リボルバーでは2013年6月末までに30テナント、2013年中に100テナントの獲得を目指すという。

Umekiの考察:テナント獲得スピードが鍵

■画像×ファンクラブは既存市場の置き換えであり、ニーズあり

マネタイズの匂いがしない写真アプリが全盛な国内スタートアップご時勢だが、画像がトラフィックの中心となっていくことに間違いはないであろう。セレブリティという希少資源を活かしたリボルバーのモデルはマネタイズの香りもするし、従来のファンクラブという市場を現代風に置き換えた既にマーケットが存在するモデルである。

■バーティカルSNSの日本国内の歴史的背景と現況

バーティカルSNSという観点でいえば、従来のバーティカルSNSはmixiのUIをそのまま丸パクリしただけのものが多く、国内において上手くいったバーティカルSNSはなかっとのではないかと記憶している。就活生限定のSNSとかがあった気がするが、ライフタイムも短いしサステイナビリティが低いであろう。だが、ファンクラブ市場をSNS化できれば、ニーズはあるし、LTVは高められるのではないか。

Linkedinなどもある種ビジネスに特化したバーティカルSNSといえるだろう。米国では普及しており、株価も上がっている。しかし日本ではFacebookでビジネス上の人とも繋がる時代であり、現時点では普及するとは思えないというのが私の見解だ。ループスコミュニケーションの定番記事である、ニールセン調査でも、むしろユーザー数が下がっているほどである。ニールセン調査の項目からLinkedinが消える日も遠くない。

■事業上のセンターピン:テナント獲得スピード

テナント獲得スピード。これに尽きるシンプルなモデルである。トラフィックエンジンは各セレブリティに依存するモデルあるため、リボルバー単体のPR力を先に上げるよりも、とにかくテナントを早く獲得して、この市場の認知を早めること。コミュニティシステムに関しては正直競合優位性があるものではなく、セレブリティという希少資源を早く獲得できるかが鍵。テナント獲得難易度が高いため、競合が参入し難い市場である。この辺は「芸能人ブログ市場」とよく似ている。

尚、一度テナントを獲得して運営を始めれば、オペレーションコストはそこまで高くなく、高収益体質を築きやすいモデルでもある。

【参考URL】

■LittleMonsters.com関連

ファン同士もインタラクティブな新時代のオウンドメディア:LADY GAGAのLittleMonsters.com (The Startup)
レディ・ガガの新ソーシャルネットワーク「Little Monsters」が世界を変えるか!? from ソシエタ (wired)
Meet The Company Behind Lady Gaga’s Mega Community that’s Turning Brands into Rock Stars(Forbes)

■リボルバー関連

Twitter vs Instagram – 画像が生むトラフィックの奪い合いが始まった。(アゴラ)
大きな絵が描けて緻密な字を書ける経営チームへ投資したい:CAV田島聡一氏【VCの赤本⑧】(The Startup)
・リボルバーも出場:【速報】優勝はコイニー:CAV主催RISING EXPO登壇全20社ご紹介(The Startup)

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