instagramの事例から導き出す「FBやtwitterの盲点を突けるサービスの方程式」

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今のwebのトレンドとして、twitterやFBをベースとした「実名的な個人」を中心としたものと、旧来的なyahooや楽天のような「ポータル」、およびtwitterやFBとの連携が不十分な食べログのような「CGM」この3つがあると思います。

時系列的に見ると「ポータル⇒CGM⇒個人メディア」という流れで来ていて、正直今感じているのは、twitterやFB上でアプリか何かやればサービスが跳ねるだろう。マーケティングはソーシャルメディア頼みで。という極めて短絡的な思考が散見されます。

もはやスタートアップのマーケティングにソーシャルメディアが不可欠な存在であることは言うまでもありませんが、ソーシャルメディアがない時代のマーケティング手法を振り返ったり、ソーシャルメディアと極めて親和性が高いサイト設計を熟考する。そういうが必要性を感じています。

個人メディア時代の中でtwitterやFBがベースとなることは間違いありません。しかし両社でも若干プラットフォームとしての特性が違っていて
そこを把握した上でその盲点を突けるサービスがこれからは伸びると私は見ています。twitter、FB上とも連携はするけれども、twitterやFBでは提供し切れない領域をカバレッジして、単独サイトに誘引できるようなサイトが勝っていくと思います。逆に言えば例えばFB内で完結してしまうもののほとんどは流行っても一過性のものですぐに廃れてしまうと思います。

FB内の私自身の行動特性でいえば、ウォールに流れてきたもののリンクには飛びますが、わざわざ特定のファンページに毎日足は運ばない。しかし従来のようにブラウザのお気に入りに入れておけば暇な時に回遊してそのサイトを単独で訪れる可能性がある。結局はそういうインフラサイトが勝つと思うのです。

今更ですが、きっちりとtwitterとFBの「性質上の違い」を認識してユーザーとして活用すること、サービスのローンチの参考にすることは今だからこそ必要なことだと思います。下記でブレイクダウンします。

twitterの特性

■性質

・オープン/クローズド:完全オープン
・情報フロー型/ストック型:twilog見ない限りはフロー型
・モバイル/PC:若干モバイルに優位性あり

■コンテンツ親和性

・テキスト(独り言):◎
・ディスカッション(RT/mention):◎
・コミュニケーションハードル:△(FBのlikeよりも敷居が高い)
・メッセージング(DM):△(FBの方が見やすい)
・写真(twipicなど):○ (単発的なもの)
・動画:×(モバイルだと読み込みに時間がかかる)

■ユーザー行動特性

・視聴率:TLを全て追う人は稀。フォロワー×RT数が総imp数と見れるがその視聴率は恐ろしく低いだろう。
・投稿内容:FBよりも内容がないゴミ的なものの比率が多く、それが視聴率を下げる要因にもなる。
・投稿数:テキストがメインで元々が「つぶやき」という独り言性質が強いためFBよりテキスト投稿は多い。
・コネクト数:人によって「フォロー基準」が違うが日本ではFBより多い人が多い印象
・投稿心理:人によって様々だが、有益情報よりも自分の世界的な使い方の人がヘビーユーザーっぽい。
・世界観:自分の世界観を創り出せるため、コアなファンがつくことも。
・ユーザーエンゲージメント:TLでその人をよく追ったり、投稿数によるフリークエンシーが高いため、無意識にオナニーアカウントに対してヘビーエンゲージメントになる。

Facebookの特性

■性質

・オープン/クローズド:twitterよりはクローズド
・情報フロー型/ストック型:twtterよりはストック
・モバイル/PC:まだPCの方がユーザービリティ高い気が

■コンテンツ親和性

・テキスト(独り言):△(FB上は反応を目的としたコンテンツに需要があり、オナニーに需要はない)
・ディスカッション(コメント):△(コメント欄が盛り上がれば二人でチャットになり第三者は介入しにくい)
・コミュニケーションハードル:◎(RTやmentionよりもlikeの方が敷居が確実に低い)
・メッセージング:◎(十分携帯メールの代替機能となる)
・プロフィール:○(実名性を活かしたリアル経歴プロフ。そのうちLinkedin対策でレジュメ付くんじゃないか)
・写真(twipicなど):◎(まとまったアルバムにバリューはある)
・ゲーム:◎(独自。ソーシャル性でARPUが上がりやすい)
・ファンページ:◎(独自。企業の新しいプロモーションツールに)
・位置情報:○(4sq対策だが、iphoneアプリ上でやられるとうざい)
・イベント:○(Plancast対策?というよりは前からあった気が。フレンドと共有するイベントとの親和性は高い)
・Q&A:?(Quora対策か?最近始まったばかり)
・メモ:△(Evernote対策か?メモをシェアするシチュエーションは議事録くらいしかないと思うが)

■ユーザー行動特性

・視聴率:ウォールを全て追う人は稀だがハイライトにより良質(反応が多い)コンテンツの視聴率はtwitterより高い。
・投稿内容:tweetよりも読み応えのあるコンテンツが多い。
・投稿数:テキストよりもファンページのlikeやテキスト外のコンテンツが多い印象。
・コネクト数:twitterよりもリムーブハードルが高いためリアルに限定している人の方が多い印象。
・投稿心理:人によって様々だが、有益情報よりもオナニー的な使い方の人がヘビーユーザーっぽい。
・世界観:ファンページやリンクのlikeやshareによってテイストはわかるが、人間性はtwitterの方がわかりやすい。
・ユーザーエンゲージメント:世界観はテイストしかわからないが、likeのおかげで「相手に好意があるか」はわかりやすく、ライトなエンゲージメント がtwitterよりも醸成されやすい。

FB連携かつFB外で機能するプラットフォームが勝つ

twitterはオナニーな方がむしろ面白いメディアです。フォロワーおよびフレンドが何を求めているかを意識して情報を流していくべきなのでしょうが、そんな戦略的な人ばかりなわけないのですが最低限主張したいのが、「twitterとFBを連携させて同じ情報を両方のTL/ウォールに流すな」ということです。

情報発信側の心理としては「1度のアクティビティで2つに流すことができると楽だ」と思うのはよくわかるのですが、twitterとFB両方で繋がっている人にとっては同じ情報が2度登場するのは、かなりユーザーストレスが高い状態だといえると思います。視聴率が元々高くない人はそういうノイズは気にならないかもしれませんが、僕のようなかなり情報を絞る人にとってはだいぶストレスです。

サービスを考えるには上記の特性を踏まえた上で、twitterよりはプラットフォーム性が強いFBを見て、FBの盲点をどうカバレッジするか、FBを活かしてどういうプロモーションをするかを考えていった方が成功確度が上がると思います。

先述したように私が考える「次代のブレイクするスタートアップサービス」はFB上でも展開できるがFBに依存しない「ブラウザ上でお気に入りされる」ようなサイトだと思います。そしてそのサイトの特性はいうまでもなく「インフラ」的な性質があります。FBはフリークエンシーを高めるプロモーションツールとして使えますが、軸足を完全にFBというプラットフォーム上に置いてしまうことは極めて危険であり「そのプラットフォームなくなったら死んじゃうじゃん!」と思うわけです。

FB/twitter上でレバレッジを効かせつつ、独自のプラットフォームを築きつつあるinstagramがこれからのスタートアップの大きなヒントになると思うので、改めてinstagramの事例を考察します。

Facebookの盲点を突いたinstagram

最近記事としてはDont’t be lameのinstagramの記事が参考になります。

私が5ヶ月前にinstagramを別の記事で考察していますが、前回の考察をベースにして言えることは「サイト設計がシンプルであること」がブレイクの要因であることでした。twitterとFBの基本機能やユーザー行動特性の上記の分析により「サイト設計がシンプルであること」以外のinstagramがブレイクした要因を発見しました。

写真の共有はフリッカーやFBでいいと言われていた側面もありましたが
同じ写真共有でも写真を投稿する動機や閲覧するシチュエーションが全く異なりFBでできないことをinstagramがやれたからこそinstagramはブレイクしたのではないか。FBとinstagramを下記に比較します。

■Facebook

①PC/モバイル:アルバムの閲覧はモバイルではきつい。モバイルでアルバムを作成する奴もいない。PCの方がbetter。
②投稿するユーザーの動機:思い出を共有する「アルバム」にしたい。
③投稿される写真の性質:あくまで身内的なものが多いがストック型のロングテールコンテンツとなる。
④閲覧されるシチュエーション:ウォールで気になったらリンクに飛ぶ。あくまでコンテンツの一つでおまけ。一方でフレンドのプロフィールページからじっくり閲覧される機会もある。

■instagram

①PC/モバイル:モバイルメインでPCはおまけ。
②投稿するユーザーの動機:「この一瞬」を誰かと共有したい。
③投稿される写真の性質:身内的なものもある一方で、芸術的センスの高いものも多く、そういうアカウントにフォロワーが集まりやすい。写真でのセレンディピティがある。
④閲覧されるシチュエーション:写真しかないので、暇つぶしにTLを追い、likeやコメントでライトなコミュニケーションを取ることもできる。

以上の比較をベースに考えると、この4つのセグメントで「FBがFBであるからこそ手が出せない」ような盲点をinstagramが巧みについているという見方もできます。一種の「柔道ストラテジー」です。

■instagramにできてFBにできなかったこと

FBはコンテンツ過多なため写真だけに特化することはできない。写真もアルバムのようなロングテールコンテンツとしては残せるけど、写真だけに特化した「ワンショット」での投稿を共有するウォールも作れなくはないが、モバイルからの投稿がFBの場合少ないためわざわざウォール作っても投稿が見込みにくい。

ソーシャルグラフに縛られているため、instagramの機能のような「人気写真」のようなページを作ったとしてもFBにある過多なコンテンツに埋もれてしまい、そのページにさほどトラフィックが集まるとは思えず、写真発見のセレンディピティは生まれにくい。

FBでは「身内的な写真」をupする文化がある中、「芸術的な写真」が人気を集めるinstagramの風土とは逆である。FB内でinstagramの投稿をしている人はたくさんいますが、FB写真でわざわざinstagram的なものをやる必要性やモチベーションはinstagramほど高くないでしょう。エフェクトとかに乏しいですし。

その結果、instagramはFBが支配していなかったフォトサービスのブルーオーシャンを制し、FBやtwitterを経由せずとも直接instagramのアプリに飛んで楽しむユーザーを獲得することに成功していっている。といえるのではないでしょうか。

instagramの例を一般化して導き出す「FBの盲点を突けるサービスの方程式」

1.写真などのなんらかのインフラになるようなセグメントに特化する
2.ソーシャルグラフではリーチできないセレンディピティを誘発させる
3.FBにはカバレッジできないユーザーの行動特性を醸成する
4.ソーシャルメディアに頼らず単独サイトに流入できる吸引力がある

この4つを全てカバーできるインフラ的なサービスは成功の確度が高いと思います。これをカバーできそうなサービスは下記

Four square(3.が怪しいですが既にインフラになってるので…)
Plancast(特に2.の力が強い)
Quora(全然話を聞かなくなりましたが、一応上記4つを網羅)

あたりですかね。Getglueとかはまだリサーチをしっかりしていないのでなんともいえないですが、一応FBの盲点を突くカテゴリーには入っていけるかなと思います。



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