2015年上半期1億以上資金調達59社まとめ:動画、データ関連が人気

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定期的にやっていますが、ジャンルごとに整理すると思わぬ発見もあるシリーズ。ジャンルごとに調達ニュースをまとめていきます。2015年上半期で1億以上資金調達の投資件数が多かったジャンル順にご紹介。

最多は「動画」の9件でしたが、2位は「B2B」の7件。「ビッグデータ」が5件あったのが特徴的でした。2012-2013年には多そうに見えた「ゲーム」「写真」が2-3件ずつとかなり減ってきました。

7,000字以上の長文記事となりましたが、ここ半年のトレンドは相応に網羅できているかと思います。

2015.6.30追記:メドレーの3億円調達(2015.6.30発表)

2015

集計期間:2015.1.1-2015.6.30
並びは左から「社名サービス名」「領域」「調達額」「リリース掲載日」

動画:9件。C Channelや3ミニッツのエンタメに注目

Viibar 制作 7億
Crevo 制作 1億
90seconds 制作 1億?
OPEN8 広告 非公開
C Channel エンタメ 5億
3ミニッツ エンタメ 1億
スクー EdTech 3.4億
ClipLine ビジネスマネジメント 1.3億
レクミー 求人 1.7億

最多の9件となった動画分野。動画分野はほっとだったので、こちらにまとめております。詳しくは下記記事をご覧ください。

参考記事:広告か課金か。スタートアップが凌ぎを削る動画市場の行方

制作よりエンタメの方がスケーラビリティがあり、エンタメ動画がスマホでスケールした時にどんな世界ができているか。この領域は一足先にMCMのuuumが5億調達をしていますが、流れとしては「脱YouTube」が一つのキーワードで、YouTube依存ではなく、FacebookやInstagramも含めて各チャネルに最適な動画を作ってどう広めていくかという、分散型メディアの思考を要する領域かと思います。動画ではエンタメがどうなるかが一番面白みがあります。

参考記事:もう自社メディアはいらない?分散型メディアでコンテンツは流通する

B2B:anyperk・チャットワークなど7件

wizpra CRM 2.3億
anyperk 福利厚生 8.5億
フクロウラボ ディープリンク ?億
Coubic 予約システム自動化 3.1億
チャットワーク 業務ツール 3億
フロムスクラッチ デジタルマーケツール 3億
チームスピリット B2Bマネジメント 4億

ざっくりな領域でありますがB2B。動画にも4件くらいありますし、下記に記載するスタートアップでも例えば「コマース領域のB2B」「ビッグデータのB2B」とかありますが、それ以外に分類されたおおまかなB2Bです。

B2Bは地味ですからメディア映えせず、上記の中では福山太郎氏率いるanyperkとチャットワークくらいしか知名度がないかと思います。anyperkは調子いい説を聞きますね。チャットワークは黒船Slackに押され気味という話を聞きます。

ユーザー接点のB2Bサービスとして、wizplaやCoubicがあり、社内管理ツールとしてチームスピリットがあります。マーケのB2Bサービスとして、M&AでのEXIT説もあるディープリンクのフクロウラボがあり、B→DashというどこかのVCとよく似た名前のマーケティングプラットフォームを提供するフロムスクラッチというプレイヤーがいます。

B2Bは凄まじくスケールする領域には思えず、二桁億中盤を狙ってのM&Aが最も現実路線のEXITかと思います。投資プレイヤーはGREE VENTURESやDraper Nexsusが多かった(好みそうな)模様。

メディア:累計50億以上調達のスマートニュースなど6件

ママリ キュレーション:子供 1.5億 2015/3/3
Retty CGM:外食 10億 2015/3/16
Peatix イベントチケット 5億 2015/3/17
スマートニュース キュレーションアプリ 12億 2015/3/31
あそびゅー 体験予約 6億 2015/4/22
game with ゲーム 5億 2015/5/11

本誌でもカバーする機会が多いメディア領域。スマートニュースは未上場で50億以上調達していますから、上場時にいくらのバリュエーションで出てくるのかが論点という感じです。RettyはCGMなのでまだ時間がかかりそう。ママリはmeryやiemo的なキュレーションメディアですから、M&AでのEXITが濃厚かと思います。

それ以外の3つのメディアがどうなるか予測が難しいところ。Peatixも相当時間がかかりそうなモデルです。ここも累計で既に10億近い調達額となっており、2014年5月に東洋経済オンラインで取材した際には2017年に100-150億でのM&AでのEXITが理想と分析しました。チケットキャンプが100億越えM&Aだからなくはないのか。いや、よほどのことがないと100億越えM&Aはないと思います。国内で買い手がいるのか?クロスボーダーM&Aであれば価格がつく可能性はあります。

続いてあそびゅー。JTBとの資本業務提携を発表。予約送客課金モデルでそこまでスケーラブルには見えません。IPOモデルではないと思うんですよねー。うーん。最後にgame with。かなり好調という噂を聞いています。これはソーシャルゲームインフォをコロプラが買ったように、ゲーム会社がM&Aするというシナリオが一番手っ取り早いですよね。

メディア系は大別するとグノシーやスマートニュースのような「キュレーションアプリ型」、meryやママリのような記事を作成する「キュレーションメディア型」系、食べログやRettyのような「CGM型」に分かれます。キュレーションアプリ、CGMはプラットフォームモデルで、キュレーションメディアはパブリッシャーモデル。過去実績を見てもプラットフォームの方がスケールしやすく、IPO向きではありますね。

コマース:40億調達のラクスルなど6件

ホワイトプラス クリーニング 4億 2015/2/10
ラクスル 印刷 40億 2015/2/17
Origami キュレーション 16億 2015/4/9
airCloset ファッション:レンタル 1億 2015/4/15
ネットコンシェルジェ 集客 2億 2015/4/27
ラファブリック ファッション:カスタマイズ 1億 2015/5/15

コマース。案外多かったなという印象ですが、2013年頃の「バーティカルコマース!( 笑)」と異なり、かなり細分化された印象。

印刷のラクスル、クリーニングのホワイトプラスは「サービスコマース」という言い方ができるでしょうし、ラファブリックはオーダーメイドなので「カスタムコマース」、airClosetはレンタルから売買に結びつけるはずで「レンタルコマース」といえます。

コマースの裾野分野として#Cartを提供するネットコンシェルジェ。集客分野はこれから資金調達や買収があると本誌では予測します。

Origamiに関してはKDDIからの出資の後にソフトバンクの出資という謎な展開となり、「本当に使われているのか?」と業界ではトラクションに不信感を持たれていますが、そこは本誌も同様の見解です。これはなんらかの大人ディールな香りがします。

コマースは一般的に利益率が低いですし、あまり魅力的な分野には思えません。直近のIPO銘柄では富士山マガジンサービスがありますが、想定公募時時価総額は40-50億レンジです。未上場でハイバリューを付けると結構苦しむのではないかと思います。コマースの裾野分野はまだしも、私ならシリーズB以降でのコマースへの投資は避けます。今後いくつかコマース銘柄のIPOはあるかと思いますが、いくらつくか楽しみにしています。

データ関連:アプリ解析など5件

Fuller アプリ視聴率調査 2.3億 2015/2/27
Repro アプリ解析 1億 2015/4/22
XICA 統計 2億 2015/5/15
ユーザローカル ビッグデータ解析 2.6億 2015/5/25
AIアナリスト データツール 3億 2015/6/8

データ関連のスタートアップにここまで投資が集中したのは2011年1月の本誌創刊以来見たことがありません。上場銘柄はホットリンクやデータセクションあたりですが、上場して500億以上になる香りはあまりない分野なんですが、中国ではApp Annieが人気でしたね。App Annieは日本でもよく使われていますが、ビジネスとしての規模感はどれくらいなのか。

アプリ解析関連ではFullerやReproがプレイヤー。AIアナリストのような人工知能で分析の労力をコストダウンするツールは人気が出そう。データ関連は主にB2Bで月額課金が主ですので、アプリの解析分野であればアプリ市場に連動します。XICAやユーザローカルはwebもカバーするので、そっちの方が市場は大きいので売上は立ちそう。この手のデータ関連企業はIPOとM&AどちらのEXITを見据えているのか。

EdTech:4件。高額課金領域にチャンスあり?

メディアアクティブ 知育? 2億 2015/3/30
スタディプラス SNS 1.85億 2015/5/8
資格スクエア 動画 1億 2015/5/26
アルクテラス ノートまとめ 1.3億 2015/6/24

案外多かったのがEdTech。動画に分類したschooも含めると5件。EdTech儲からない説を提唱する本誌ですが、塾などのCGMメディアを展開するイトクロが上場承認され、イトクロが未上場のドナドナEdTech銘柄を買収するプレイヤーとなると予測します。

スタディプラスは以前も億調達をしており追加調達の模様。他の3案件は今回初登場です。メディアアクティブは「鬼から電話」という人気の知育アプリを提供していますが、スマートエデュケーションがさほど跳ねていないと業界では聞いており、知育分野は国内のみではビジネスとして成立せず、海外でどれだけスケールできるかが鍵と思われます。

続いて資格スクエア。これは資格勉強版のアオイゼミ(というか東進)とでもいえばいいかもしれません。単価の高い動画学習はプログラミング教育のCodeCampも含めて、売上立てやすそうですね。

アルクテラスはClaerという勉強ノートまとめアプリ。Evernoteの勉強特化版でしょうか?フリーミアムモデルですごくスケールしないとキツイのではないかなと感じました。

EdTech系はレアジョブ、イトクロのIPO、CytaのM&Aがありましたが、今後売上が思うように伸びず資金調達に苦しむEdTech銘柄は買収されていくのかリビングデッドと化すのか。高額課金が可能な分野はそれなりに儲かると思うのですが、それ以外がどうなるかなと。

金融:Bitcoin中心に3件

ビットフライヤー ビットコイン 1.3億 2015/1/28
Zaif Exchange ビットコイン 1億 2015/3/5
クラウドクレジット ソーシャルレンディング 2億 2015/3/3

金融はソーシャルレンディング1件とBitcoin2件。Bitcoinは私には難しすぎて、金融インフラが整っていない新興国の方がスケールが早そうということくらいしかわからないのですが、1億くらい張っておけば、将来大化けした時にかなり儲かりそうな分野ではあります。でもよくわからない。

アドテク:IPO間近のメタップスなど3件

メタップス アドネットワーク 43億 2015/2/11
Fringe81 いろいろ 4.2億 2015/2/20
ログリー ネイティブアド 3億 2015/6/12

フリークアウトやVoyageなどRTB銘柄の上場が昨年はありましたが、宇宙とか決済だ!とかいろいろやっているメタップスを広告の売上が高そうだからととりあえずアドテクに突っ込んでおきました。SPIKEの売上はどれくらいなんでしょうかね。

ログリーはネイティブアドネットワーク領域だと思いますが、この3億の増資でVoyageの持分法適用会社(Voyageの持分が20-50%)となっています。VoyageはSSPのKauliを14.8億で買収もしており、アドテク領域のM&Aが活発です。Fringe81に関してはHPを見ても全然わからなかったので、スルーしておきます。

ネイティブアド領域ではpopInがバイドゥに推定数十億円で買収されていますし、今後M&Aはまだありそうな領域です。RTBほどの大波ではなく、小波という感じですね。

写真:3件

miil 内食 2億 2015/2/16
ネイルブック ネイル 1億 2015/2/26
winker snapchat的動画送信 1億 2015/6/10

これも2012-2013年頃はけっこう多かった気がしますが。ネイルブックは本誌でも取材したことがありますが、ネイルサロンへの送客という明確なキャッシュポイントがあるので、単なる写真アプリとは一線を画していて良いと思います。確実にM&Aで出口がありそうです。

winkerはsnapchatっぽいものですね。日本でsnapchat普及の兆しは見えませんが、mix channelのようにいつ何が当たるかわからないのがインターネット業界なので、なんともいえません。

miilは類似のsnap dishを株主のDGインキュベーションがもう株式を売却しているという情報も耳にしており、食の写真というのは売上が立つのか懐疑的なところです。すでにバリュエーションも10億とかあるでしょうし、クックパッドは買ってくれないでしょう。リビングデッド行きと予測。

ゲーム:ゲーム買収のマイネットなど2件

マイネット ゲーム買収 7.3億 2015/2/5
オリフラム ゲーム 5億? 2015/2/17

ゲームも一時期に比べてだいぶ減りましたね。マイネットはセカンダリーマケーットのゲームを買収していくゲームコングロマリットといえます。モルスタ出身のCFO嶺井氏が加入してからその戦略を取ったのでしょうか。ゲーム業界でこのプレイをしているプレイヤーはおらず、ユニークですね。IPO説も聞いています。

となると純粋なゲーム会社はコロプラから調達したオリフラムくらいか。DeNAやスクエニ出身の方々が作るとのことで、玄人感ありますね。エイミングのように大化けしたりするとIPO後に500億以上の時価総額付くのがゲーム業界です。

不動産:カウカモのツクルバなど2件

キャッシュバック賃貸 賃貸 1億 2015/2/4
ツクルバ 売買 ?億 2015/2/25

不動産は2014年下半期だとiettyなどもあり、地味に投資件数は伸びています。ただ、IPO銘柄はオウチーノで時価総額20億くらいと苦しい。特に情報掲載型だとSUUMOやHOME’Sが圧倒的に強いわけで、賃貸の情報掲載や送客課金モデルだと勝てないと思いますね。よって賃貸系のスタートアップのほとんどがリビングデッド行きと予測します。

売買は仲介手数料を取れますから、着実に売上があがります。カウカモを提供するツクルバがどこまで伸びるか注目しているカモ。

C2C:2件

any+times 家事 2.3億 2015/5/21
スマオク ブランド品 2.5億 2015/6/11

C2Cの話題は全てメルカリに持って行かれている感もありますが。同じ売買系でいうとブランド品特化のスマオク。元はwish scopeも運営しているザワットなわけですが、運営するのはどっちかに集中した方がいいと思いますが。調達もシンガポール系からだったりと謎です。

サービスC2Cとして家事などを依頼できるany+times。GREEとDeNAが同時に出資しているという点が興味深いですね。株主総会とかで両社が喧嘩したりしないんでしょうか。私もユーザーとして使ったことがありますが、綺麗なお姉さんが掃除に来てくれるなど、ベアーズとかと比べて「業者感がない」のがいいと思います。

その他:7件。オンラインベッティングに可能性

SORACOM IOT 7億 2015/6/12
Gengo クラウドソーシング:翻訳 540万$ 2015/4/22
エストコーポレーション 医療 3.5億 2015/2/23
SENSY ファッション 1.4億 2015/5/14
Kibow ベッティング 1億 2015/4/15
ファイルフォース クラウドファイル共有 非公開 2015/5/21
メドレー 医療求人 3億 2015/5/21

ジャンルとして2つ以上見つからなかったものを。掲載順は調達額順。

簡単に各企業の解説を。SORACOMはIVS開催中に発表され、中身はIOTということ以外はよくわかりません。最近めっきりIVPの国内ディールが減っていますが、頑張って下さい!

Gengoは翻訳クラウドソーシングですが、2013年に1,200万ドル調達しています。巨額調達でIPOで回収できるモデルかは懐疑的です。エストコーポレーションはじげんが19.5%取得。病院検索予約とか内科アプリとか医療系のサービスをいくつか手掛けています。マクロでみるとヘルスケアはもっと案件が多くていいはずですが、プレイヤーがいません。需要に対して供給が足りていないので、今後プレイヤーが増える市場かも。

SENSYはファッション版Tinderという感じか。使ってみたけど全然ピンとこず。Kibowはベッティングというのが面白い。カジノが日本に来るようですし、eSports同様オンラインベッティングというのも今後のエンタメの方向としてアリだと思います。どんなサービスとなってスケールするか注目。ファイルフォースはクラウドストレージ。企業に求められるセキュリティが〜と謳っており、Dropboxだと不安なB向けサービスということか。これもB2B領域に入れとけばよかったですが、まあいいか。

最後にこの記事を見てこの記事を出した3時間後に調達リリースを出したメドレーを追記しておきます。詳しくはこちらの記事で。

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以上、2015年上半期1億以上調達企業58社分野別まとめでした。上半期で58社なので、年間100社超えそうですね。ちなみに2012年以降に本誌で集計を始めて以来、年間100社超えはありません。

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自分で作成していてもかなり勉強になりますけどね。読むより作成する方が情報は身に付きますね。各社の資金調達事情はスラスラいえますし(記事制作してるから覚えている)マーケットの肌感覚を掴む一助になっています。ちなみにThe Starupではここに記載のある企業ない企業ありますが、2015年上半期は3社の資金調達をアレンジしました(2件は1億以上)。下半期はM&A含め、またコツコツとアレンジを頑張っていきたいと思います。



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