上場承認(IPO)のイトクロ、6億以上の当期利益で公募時時価総額300億越えか?

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グノシー以来のIPO分析。イトクロに上場承認が出ました。イトクロといえば名前は聞いたことがあるものの(筆者のような2009入社前後の新卒採用のブランディングが強かった印象)何をやっている企業かはスタートアップ業界ではさほど知られていないかもしれません。他のスタートアップ系メディアでもほぼ見かけたことがありません。

イトクロ

ちなみに2月の月刊Umeki Salonでシレッとイトクロ上場説に触れていますが、的中ですね。ちなみにイトクロの株主構成を見るとVCがおらず、美しすぎる資本政策となっております。代表取締役山木学氏が77.59%、そしてなぜかイトクロ自身が19.90%というのがちょっと謎なのですが。。社名の由来には触れず、一の部を見ていきましょう。

時価総額予想:公募時で約300億円

まずは時価総額関連を。

公開日発行済株式総数:11,340,000株
TS予測公募価格:2,300円
TS予測公募時時価総額:約282億
TS予測当期利益:約6.5億円(2015年2Qの当期利益の2倍)
TS予測当期利益適用PER:約40倍(メディア事業の比率高いため)

出典:東京IPO

PLの詳細は後述しますが、2015年中間決算で売上17.4億、営業利益5.2億、当期利益3.2億出ています。通期ベースでは当期利益を軽く5億は超えるはずで、久々に安定性の高いネット企業のIPO銘柄といえそうです。社歴も比較的長いですし、昨年のVoyage並みの安定感かもしれません。

3期連続6億以上の営業利益!抜群の安定感

続いてPLを。かなりの安定感です。

スクリーンショット 2015-06-27 10.23.01今期に入って営業利益率が30%近くと改善されてきています。

スクリーンショット 2015-06-27 10.50.31営業利益率改善の要因はセグメント別でみると、メディア:コンサルの売上比率がメディアの方が上がっているからではないかと思われます。正確には2013年のセグメント別を見ないとわかりませんが、一の部に見当たらなかった気がします。

実際のメディア事業、コンサル事業の各営業利益は一の部上にはなかったのでわかりかねますが、事業特性上メディア事業はスケールすると運営効率が上がるので、利益率は上昇していきます。ゆえにメディア事業の伸びが利益率上昇を押し上げていると見るのが、一般的な考え方ではあります。

教育8個・金融4個の成果報酬型メディアが成長ドライバー

イトクロのセグメントは上記の通り「メディア」「コンサル」に分かれます。大口取引先別の売上を見てみましょう。

スクリーンショット 2015-06-27 10.50.36「メディア」ですが、教育と金融のポータルサイトをかなりの数運営しています。イトクロHP記載のメディア例は下記。単純に「教育!金融!」ではなく、かなりバーティカルに切った展開をしているのが特徴的です。

スクリーンショット 2015-06-27 10.35.38中でもCGMの「塾ナビ」が好調のようで、2014年通期の年間訪問者数が937万人。教育関連事業は8個の記載が一の部にはありました。上記表に出した大口クライアントのトライは家庭教師ですね。家庭教師比較ネットから売り上げていると予測されます。年間5億ということで年商約30億なのでイトクロの売上の1/6を占めます。

金融メディアは一の部に記載があったのは4個。カードやFX比較で、SBI関連の商材を扱う広告代理店カラックとの取引高が大きいですね。

サイト数が教育8:金融4といこともあり、2014年メディア関連売上18億に対して、教育11-12億、金融6-7億の売上と予測。ちなみにサービス系譜図を見ると、ビジネスモデルは成果報酬課金(問い合わせや申込者の提供)のようです。

コンサルセグメントに関しては「クライアントである教育・金融領域を中心とした集客支援」ということで、SEOやソーシャルメディアを活用した集客がコンサル内容と想定されます。

イトクロ代表取締役山木学氏の経歴を見るとリクルート→カカクコムということで、情報掲載型メディアも、SEOも、CGMも、メディアに関する全ての知見を有しているハイブリッド型の方なのであろうと予測がつきます。平たくいうと、なんでもできそうなユーティリティー・スーパーサイヤ人タイプの方です。

今後の成長性:爆発力はないかもだが、リスクは低い

メディア、コンサルの2つの事業でいうと、スケーラビリティがあるのはメディア事業です。メディア事業の中でも12個運営しているメディアの中には、「塾ナビ」のようなCGM型もあれば、「家庭教師比較ネット」や「銀行カードローン」のような比較サイトもあります。

まずCGM型はクックパッドや食べログを見るとわかるように、一度そのジャンルでNo.1の地位を築き上げれば10年以上に渡り利益を享受できるモデルです。口コミがストックされていく積み上げ型のビジネスモデルであり、口コミ数が増えれば増えるほど後々のマネタイズに効いてきます。塾や家庭教師というBからの課金でもあるので、CGM型は安定的に伸びていくのではないでしょうか。

比較サイトは筆者があまり馴染みのある分野ではないが、いくつかのワードで検索してもかなり競合が多く、「まだリスティングで疲弊してるの?」的な消耗戦に陥りやすい分野であると見受けられる。イトクロのメディアは教育系はCGM比率が高め、金融の4つは比較サイトとなっている。おそらく教育メディアの売上比率が高く、今後もそこを中心に伸ばしていくのでは?と思われます。金融の他領域も展開したいと記載がありましたが。

よって中長期で安定的な利益をもたらしそうなCGM教育メディアを中心に12個のメディアを持つポートフォリオ運用的観点からも、1つのメディアに依存する構成になっておらず、直近3年の売上と利益を見ていても、来期いきなり2倍になることもなければ、何らかの悪影響(Googleアルゴリズム変更)などで売上が半減することも考えにくいのがイトクロという企業ではないかと思われます。

IPO銘柄はボラティリティが高いことが多いですが、イトクロに関しては低いリスクで安定的な成長が見込めそうな、震災前の東電的な香りがする銘柄といえそうです。上場後は、金融の香りがする山木さんが既存事業以外にM&Aでどこまで業績を積み上げていくかがまだ見えないけれども、面白いポイントといえるのではないでしょうか。

IPO銘柄としては異例ともいえる安定性で「buy」とThe Startupでは判断します。



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