広告か課金か。スタートアップが凌ぎを削る動画市場の行方

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2015年に入り動画市場のスタートアップへの投資件数が加速しており、本誌調査で数えただけでも10件を越えます。

大きく分けて制作領域、広告領域(アドネットワーク的なものを含む)、コンシューマー向け領域、B2B領域の4つがあります。スマホでの動画視聴時間の伸びも加味すると、C向けコンテンツを提供できるプレイヤーの存在感が今後上がっていくだろうと思われます。

本稿ではC向け動画のスタートアップサービスに特化して、今後を予測していく。尚、2014年2月に本誌では下記のような記事を出している。

◆参考記事:スタートアップ動画市場をB2BとB2Cに分けて俯瞰してみた

本稿はこれのB2C版の続編に相当するだろう。

2015年4月に行われたB Dash Campの動画セッション記事も少しは参考になると思う。

◆参考記事:プロの動画が課金されるとは限らない。動画CGMの可能性

たった1年で多くのプレイヤーが参入したC向け動画市場

スクリーンショット 2015-05-17 16.22.37まずこの領域の大まかなプレイヤーを整理する。尚、1年前の記事に記載があったのはschooだけであり(uuumは今回は最近始めた「reel」を記載)

日本上陸が噂されるネットフリックスも含めて、1年で主要プレイヤーがこれだけ入れ替わる(というか新規参入)があるのがスタートアップ動画市場である。

まずCGMはこの1年でスタートアップ業界でもすっかり定着したMixChannel。ユーザーとして使っているスタートアップ業界の人はほぼいないだろうが、10代への影響力の高さは各所で報じられている。CGMであるがゆえに勝手に動画が生成され、再生回数が伸びていく。再生回数のスケールに応じたアドネットワーク収益は稼げるだろう。

ただし、後述するB2Cモデルでコンテンツプロバイダー(YouTuber)を抱えるサービス群と比べると、ナショクラから出稿されるようなメディアに育つかといえばまだ確信は持てない。ニコニコ動画のようにあそこまでスケールすればナショクラの出稿もあるであろうが、高校生のキス動画がたくさんあがる場にナショクラは金を払うだろうか。ポッキーとか、あり得るか。

スマホで見るC Channelの素人っぽい女性動画の威力

上記の図のB2Cのところに話を移そう。先行者としてはヒカキンのようなスターYouTuberを抱えるMCNのuuumがいて、後発で女性モデル系に特化した3MINUTESが登場した。若い女性(モデルというよりかは素人に近しい)という領域で2015年4月にC Channelが参入している。

当初はYouTubeというプラットフォームに依存するモデルにも見えたが、uuumが自社メディアのreelを投入してきたり、3MINUTESのクリエイターはインスタグラムにも強く、C Channelは最初から独自プラットフォーム上で展開するなど、脱YouTubeの動きも加速しているように思える。

スクリーンショット 2015-05-18 10.00.44
スマホでYouTubeを見るユーザーは増えているだろうが、必ずしもYouTubeの動画がスマホに最適化されているとはいえない。

特にYouTuberの動画は異様に長いものもあり、とてもスマホで見るに耐えない(途中で離脱するものも多い)。

そんな中で筆者が見ていて注目に値したのがC Channnelの動画であり、左の画像はクリッパー(C Channelで動画を投稿する人)が北海道旭川(筆者の地元)でアイスクリームを食べるという動画のスクショである。

C Channnel代表の森川氏のインタビュー記事を複数読むと「素人感(普通っぽさ)」を売りにしているようだが、スマホで見ると生々しさがあり、一歩間違えてると疑似デートを楽しんでいるかのような錯覚に陥り、かなりインパクトを感じた動画であった。作り込まれた動画よりも、こういったライブ感がある動画の方が、ユーザーは惹き込まれるのかもしれない。

ビジネスモデルの話に戻すと、CGMのよりも事業者がプラットフォーマーとしてコンテンツ制作にも噛んでいる動画の方が、クオリティが上がる可能性は当然高い。一定以上の質の動画が多く流れるプラットフォームはブランド力が増し、その上にナショクラの広告がついてくる可能性は、CGMより断然高いだろう。

C Channel上で資生堂の化粧品を使って化粧をするクリッパーの動画が流れるという日も遠くないはずだ。

月額課金はマーケットの大きさでワークするかが決まる

上記の3つのB2C型メディア(に近しい)サービスのuuum、3MINUTE、C Channelのビジネスモデルは主に広告収入になるだろう、すごいスケールした後には課金もあり得るだろうが、まずは広告からという流れに思える。

一方で、既に課金モデルを進めているプレイヤーを見てみよう。

国内ではもはや老舗といえるschooはスタートアップでも最初から課金モデルを押し進めてきた。いつのまにか月額980円に値上げしているようだが、おそらくまだ1万会員はいないだろう。課金モデル単体で月商1,000万は立っていないはずで、企業のプロモーションの場にも最近使われており、そういった企業アカウントから月額何十万円というメニューがあってもおかしくない(あくまで推測)。2015.2時点の月額課金サービス分析では、本誌はschooの月商を200万円と予測していた。

外資のネットフリックスの日本参入も噂されており、上記の図には含まなかったが、Huluの有料会員数が日本でも100万人を越えていると言われている。筆者も周りにヒアリングしてみると、意外にHulu課金ユーザーは多く、4人で飲んでいたら、自分以外は全員課金ユーザーだった。ということもあった。みんな暇なんでしょうね。

エンタメはマーケットが大きいし、それなりにコンテンツラインナップがあれば、十分課金でスケールし得ることを国内でも既にHuluが証明している。ネットフリックスも国内で十分に勝機があるでしょう。

schooに関しては「ニコニコ動画に俺はなる!」的なノリを感じますが、教育をいくら拡張してもエンタメ領域を全てカバーできるわけではなく、相対的にマーケットは狭いと言わざるを得ないと思います。森くんがIPO路線を主張し続ける中、本当にM&AでのEXITはあり得ないかというのが焦点になりますね。

課金に関してはエンタメ領域以外でそれなりの規模が成り立つのかに今後は注目していきたいですね。3MINUTEやC Channelのような女性特化モノも広義でみるとエンタメといえますし、スマホで消費されるコンテンツの動画比率は確実に上がっていくので、この領域でそれなり以上にスケールする勝者は必ず出てくると思っています。アーリーやシリーズAで投資するには、タイミング的に最もホットな分野であることは間違いなさそうですね。



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