教育系スタートアップ企業(EdTech)が一部で盛り上がっているようだが、私はかなり懐疑的だ。いくつかの注目分野に関しては東洋経済オンラインで小特集として紹介しているが(今月は金融系スタートアップ、通称FinTech特集の予定)EdTechは一度候補に挙げながらも、特集を取りやめた経緯がある。
どんなプレイヤーが存在するのかは今回は個別に紹介しないので、知りたい方はこの辺の記事を読んでほしい。
国内教育系スタートアップ(EdTech)のまとめ及び事業モデルの考察
他のサイトの記事ですが。
2013年はEdTechの年!日本・海外のIT×教育系サービス総まとめ
EdTechの問題点:市場が細分化されすぎていて小さい
EdTechサービスにはどのようなものがあるのか。大きく分けて年代とジャンルに分けられるだろう。年代でいえば幼少から中高生や社会人向け。ジャンルでいえば英語や受験といったところが挙げられる。
市場を考える時に教育市場全体で数兆円あるとかそういったプレゼンをする場合もあるでしょうが、その中でもどの市場を狙うのか。細分化すると個々の市場はかなり小さい気がします。単独でIPOして数百億円後半の時価総額が付くイメージはありません。
想定される収益モデルはほとんどが課金です。月額課金が主流でしょう。広告やコマースで収益を上げることは考えにくい。無料ユーザーを数十万人か数百万人獲得してフリーミアム課金を考えるはずです。
ベネッセのM&Aあるか。しまじろうは現預金800億円保有
教育分野の巨人とえばベネッセです。ベネッセはQuipperにも投資しており、EdTechラボなどという施設も開設していて、スタートアップとの接触に積極的。進研ゼミで知育から中高生向けが強く、場合によってはスタートアップはしまじろうと市場を取り合うことになります。
しまじろうの直近決算資料を確認しましょう。
■しまじろうの懐事情
時価総額 :約4,000億円
売上高 :約4,500億円
営業利益 :約380億円
PER :17倍
現預金 :約800億円国内教育事業営業利益率:約12%
ベネッセホールディングス全体の営業利益率:約8%
しまじろうよ、けっこう儲かってるんだな。。俺も若い頃だいぶお前に貢だよ。しかも最近はベルリッツまでお買い上げして子会社化していたんだな。
ベネッセはホールディングス制をとっており、かなりの数の子会社があります。その中にはM&Aも多いでしょう。少子高齢化とはいえ、国内教育事業だけで毎年売上は2,500億円近く。月額課金でしまじろうに貢ぐ文化が既にある程度できているので、ここがいきなり崩れることはないはずです。営業利益も毎年400億円近く。安定的な優良企業じゃないか、しまじろう。
M&Aでシニアや語学企業をくっ付けてきたものの、売上の傘は伸びるがしまじろう事業と比べて利益率が低い。国内教育事業(しまじろう)単体の営業利益率は12%にも限らず、ホールディングス全体は8%程度。中長期では利益額のインパクトがある事業を買収して売上と利益率を伸ばしていきたいところ。
語学領域はベルリッツを子会社化していますが、利益率がかなり低いですね。ここはレアジョブとかを買収しても面白かったかも。いまからでも遅くないので、100億くらいで買っとくといいかもしれません。遅くないはず。
EdTech関連の方はしまじろうの決算はよく見ているでしょうが、結構面白い企業ですよね。しまじろうが数十億でホイホイスタートアップを買っていくのは今後あり得るんじゃないかと思います。
レアジョブのPLと推定時価総額を予測してみた
EdTechはそこそこスケールすればしまじろうが数十億円なら買ってくれるかもしれません。しかし、売上をしっかり上げるのもなかなか難しい市場だと思う。EdTechの雄、レアジョブの売上を推測しましょう。
■オンライン英会話のレアジョブ
2013年6月:3.3億円調達(KDDI、YJ、CA)
2013年10月:累計会員数が20万人突破*有料会員化率やLTVは非開示。
■レアジョブ売上予測
平均月額単価:ざっくり6,000円(料金体系は4プラン)
累計会員に対するアクティブ率:5%
(仮説:現状アクティブ会員率50%程度、その中の10%程度が有料)
月商:6,000円×1万人=6,000万円
年商:7.2億
売上原価:skype講師など(フィリピン現地人なので比較的安価)
広告宣伝費:そこそこありそう
営業利益:2.5-3億
営業利益率:30-40%
アクティブの仮説の詰めが甘いかもしれませんが、プレIPOステージのPLとしては非常に生々しい予測です。HPも綺麗になってますし、今年あたり上場しそうですよね。2013年の3.3億調達時のValuationは20-30億のレンジで、上場時は100-150億程度になると予測します。
追記:関係各者からツッコミがあり、官報からはむしろ直近は1億の赤字とのこと。アクティブの仮説か広告宣伝費あたりの仮説が甘かった感じですね、すいません。上記はベストケースくらいの想定で。苦笑い。
しかし、オンライン英会話の市場のアップサイドはtoC課金で見ると食べログやクックパッドほどは当然ないですよね。課金単価も10倍以上異なりますので単純比較はナンセンスですが、Skype英会話のライフタイムは3年とか5年にはならず、案外短い気がします。平均ライフタイム1年でLTV7.2万。みたいな。有料会員10万人いれば売上は72億なわけで、そこまでいけばウハウハですが、国内だけで見ると3-5万人が上限な気がする。あくまで感覚値ですがね。
レアジョブは手堅く上場してくれるでしょうが、スタートアップで他に注目銘柄といえば知育のスマートエデュケーションと中高生向け?のQuipperがありますね。両社はグローバル市場も狙っていると思いますので、どこまでスケールするかわかりませんが、経営陣がベテランなので手堅そうです。経営陣がシリアルだったりベテランだったりで確度全然違うなって最近よく思いますね。ベテランの海外展開は若手よりも確度高そうですよね。
国内EdTechスタートアップは10社以上あるのですが、2014年4月時点はこの3社以外は正直跳ねそうな気がしません。市場が細分化されているのでユーザー層が限られますし、収益モデルも月額課金以外スケーラブルなものはありません。CAVがこの分野に集中投資しているのが気になりますが、その中から跳ねるものは出てくるのでしょうか。あっ、schooもありましたね。好きなサービスなので頑張ってほしいです。
僕は多くのEdTechサービスが会員数などのKPIが思うように伸びず、シリーズAに進めないと読んでいます。進めたとしても「俺たちの〜」的なファンドからの調達になるでしょう。
スケーラビリティの観点から、有安先生のようなEXITが現実的で(Cytaは全然まだ伸びるとおもいますが)一定の会員数を確保してしまじろうに10億円くらいで売却するスタートアップが1,2社くらい出てきても良さそう。
【本日の問いかけ】
EdTechスタートアップについてどう思いますか?上記3社以外でどこか跳ねるところは出てくると思いますか?News Picksなどでぜひコメント下さい。
*EdTech関係の方は本稿でお気を悪くした方もいるかもしれませんが、僕の予測を覆すグロースを見せてくれるスタートアップが出てくることを期待しております。
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