美白を極めたSEO界の貴公子、高橋飛翔氏率いるヴォラーレが提供するアプリレビューサイトAppliv(以下アプリヴと表記)が2015年3月のアプリ提供開始から3ヶ月で100万DLを突破した。しかも100万DL到達までに投下した広告費は100万円弱。理論上、CPI1円以下でのグロースである。
上場説も噂れるヴォラーレだが、なぜ短期間でここまでのグロースを可能にしたのか。相変わらず美白なヴォラーレ代表取締役高橋飛翔氏に聞いた。
まずはwebでカテゴリー細分化したレビューを溜めた
アプリヴはweb版を2012年8月に開始。web版は2015年6月時点ではMAU600万に達している。
まずはレビューを内製で投稿していった。アプリのカテゴリーを階層化していき、大カテゴリー50から細分化し、1,500カテゴリーまで整備した。ユーザーが辿りやすい階層を持つサイトを構築したことで、Googleから評価されやすくなった。
今では検索ワード「アプリ」で1位。他にも「無料 アプリ」や目的名とアプリの掛け合わせ、たとえば「家計簿 アプリ」で1ページ目以内に表示される。この辺りはヴォラーレがSEOコンサルも手掛けており、その知見が存分に発揮されたといえよう。
アプリヴが3ヶ月で100万DLを達成したグロースハック手法
本稿で一番の見所はこの話かもしれない。アプリ提供3ヶ月で100万DLを突破した背景を説明しよう。通常、様々なアプリ広告手法を駆使して(時にはTVCMも)DL数を伸ばすアプリがかなり多い中で、100万DLに至るまで使った広告費はわずか100万円。それも初期にテスト的に使った程度。アプリヴの仕組み自体にその秘密がある。
ユーザーはスマホブラウザ上で検索でアプリヴの何かしらの画面に辿り着く。たとえばパズドラのアプリレビュー画面としよう。そこでアプリをDLしようとすると、アプリヴ自体のDLもお勧めされる。アプリヴのwebのトラフィックがDLに寄与しているのだ。上記の図でいうと、左上のwebからアプリのDL誘導の話となる。
アプリヴのアプリ内で投稿されるレビューはwebと同期されていき、レビュー数が増えることでweb上での検索流入の向上も見込めるサイクルだ。
ユーザー心理からすると、お勧めのアプリを教えてくれたことだし、アプリDLしてやってもいいか。という感じでDLするのであろう。
アプリだけ出してドーン!と広告を打つのではなく、ブラウザベースでメディアを先に立ち上げて軌道に乗せて、そこからオーガニックでアプリDLに結びつける手法はやっているところも多いであろう。だが、アプリヴの場合はレビューを読んでそのアプリを使いたくなっている気持ちが高まっているところでDL誘導をかけるという設計となっており、DLへのCVRが他のサービスのブラウザからアプリDLのCVRよりも高いと筆者は予測する。
飛翔、アプリ発見! 3日に1回訪れるユーザーが多い
ユーザー側の視点でアプリヴを見てみよう。webでは何かしらの目的を持って、たとえば「ゲーム アプリ」で検索して何か面白いアプリはないかなと探すユーザーもいるだろう。一方でアプリ版の方は暇つぶしに見てみるというか、ザッピングして面白そうなアプリないかなと探すような使われ方が多いのではないかという。
筆者の感覚では、ユーザーはスマホでSNS、ニュースアプリを回遊して、それでも暇なときにたまに見るという感覚だ。YouTubeも見飽きたし、たまにはアプリでも探すか。そんなノリではないだろうか。
私自身は2週間に1度くらいApp Storeを覗いてランキングを見て「おおー、アプリヴまだ100位以内にいるわ。それにしてもNagisaのアプリ多いな」と定点観測しますが、アプリヴのユーザーは3日に1回訪れるユーザーが多いらしく、アプリを探す頻度を想定すると、そんなところであろう。
高橋飛翔氏も懸命にレビューを投稿しており、上記のスクショの中に「オララララオラ!」とジョジョのアプリについて投稿しているのが見受けられる。彼のキャラクターをよく表していそうなレビューである。
マネタイズはCPI課金中心のAppliv Ad:予想月商5,000万
マネタイズはユーザーがアプリを見た後に「ストアで見る」をクリックして遷移したCPIベースでの課金広告が中心だ。その広告をAppliv Adとして販売している。アプリにもよるが非ゲームは250円前後、ゲームだと700-800円のCPIが多いようだ。CPIは代理店が買っていくことが多いようだが、ストアに遷移させるまでのCPC広告は8円程度から販売しており、Googleアドワーズのように中小企業でも自分でアカウントを開いて運用できる。
既にアプリヴでは月間数百万件のアプリがダウンロードされており、もちろんオーガニックなダウンロードの方が比率が多いであろうが、仮にCPI500円で月間10万DLあれば売上は月商5,000万円という数字になる。
数百万件のDLとしたときにその5-10%にあたる比率が広告ではないかというのは、無理のない試算であると本誌では推計する。ちなみに広告主はゲーム系が多いようだ。アプリ広告の市場自体、ゲーム:非ゲーム=7:3のようで、アプリヴの広告売上比率も同様ではないかと推測される。
非ゲームアプリ市場が勃興してくれないと、困りますね。
高橋飛翔氏は苦悶の表情を浮かべながらそう語る。
効果指標としては、アプリヴ経由でDLしたユーザーは継続率が高いというデータもある。レビューを読み込んでからDLしているユーザー比率が一般の広告より高いであろうがゆえ、アプリに対する理解があり、高い継続率に寄与していると思われる。広告主によってはアプリヴ経由の継続率が他のチャネルの2倍であることもあり、その分2倍のCPIを支払ってもアプリヴ経由で獲得したいという声もあるようだ。
アプリヴが追うKPI:アプリDLのタップ数
アプリヴが追うKPIはアプリDL、いわばスマホビューの各コメントの右下にある「ストアで見る」のタップ数だという。CPC課金にもなるし、その後のダウンロードにもつながる。売上に直結するKPIであるが、よくよく聞くと興味深く、事業のセンターピンを突いている。
アプリのレビュー内容(ヴォラーレでは「レビュー」ではなく「コメント」と呼んでいるようだが)が面白ければアプリを使ってみようと思い、「ストアで見る」をタップする。アプリヴでアプリをダウンロードし、面白いアプリを見つけることができたというユーザー体験を積むと、継続率が上がる。アプリのレビュー内容の良し悪しによるタップ数の変動はDAUと連動しているといえる。
アプリヴはCGMサービスだが、投稿数をKPIと置いていないようだ。普通のCGMでは投稿数100万件突破しました!とかドヤるものだが、その中には1行程度の全然価値のないレビューも散見され、そういった投稿比率が高い場合もある。投稿の質にこだわり、質の高いコメントを優先的にタイムラインに表示させることで、アプリDLへの遷移のCTRを上げていく。現状のアプリヴでは、一定のクオリティ担保のためのフィルタは入れており、今後さらに人気が高い投稿が上位表示されるアルゴリズムを導入することを検討しているという。
CGMサービスにおいて投稿の重み付けをするのは難しく、食べログではピックアップ口コミがレビューの最上位にくるくらい。それ以外はヘビーレビューあとライトレビュアーで場合分けし、最新投稿日順に並べていると予想される。アプリヴのようにこれからさらなるスケールをするCGMが早い段階で投稿の重み付けができていると、スケールスピード(特に売上の)は加速させやすいかもしれない。
アプリヴは今夏以降にフィリピンやアメリカ、スペインでの展開を準備しているという。海外に出て行っている国内勢アプリがほぼ当たっていない中で、どれだけ海外で戦えるかが今後最大の焦点だ。
美白とSEOを極めた貴公子は、果たして世界へ飛翔できるだろうか。
全国の飛翔ファンが固唾を飲んで見守っている。