起業家よ。経営と事業、どっちがやりたいかね?

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スタートアップ経営者の多くは、外部株主を迎え入れているのであれば、将来的に株主にリターンを返すため上場(IPO)か売却(M&A)で出口を作ることを求められがちだ。

国内のスタートアップ業界では5月の話題だけ取り挙げても、IPO市場ではイグニスの下方修正があった一方で、未上場市場では主にマッチングサービスのPairsを運営するエウレカが米国のIACグループに大型買収されるという案件があった。エウレカの買収価格に関しては、The Startup予測による営業利益をベースに妥当なPERを掛け合わせると、最低でも200億円規模と予想している。

こうしたスタートアップ村でのディールの動きを横目で見ているスタートアップ経営者にとって、「IPOかM&Aか」とテーマは今まさに一考に値するだろう。

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筆者の周りにはスタートアップ経営者は多く、今まで「IPO」しか言わなかった経営者が「やっぱM&Aかも・・」と言い出してきたりしている。

筆者は過去にM&Aの買収側のファイナンシャルアドバイザリーをやってきたこともあり、スタートアップ経営者に対して「企業価値を上げるか、事業価値を上げるか、どっちがやりたいことなんですか?」と問うてきたこともある。これはもっとシンプルにいうと、「経営したいか、事業をやりたいか」という問いである。

筆者が直接面識のあるスタートアップ業界の巨匠たちを見てみよう。

まず明らかに「経営」したそうなプレイヤーとしては、時価総額経営を標榜し「孫正義を超える」というじげんの平尾丈先生や、「小学校の頃から社長になりたかったんです」というBBQが嫌いなリブセンスの村上太一先生である。彼らはもちろん事業も好きなんだろうが、それよりも「経営」に対する発想や嗅覚が強いように思える。特に平尾先生。

次に「経営より事業が好きそう」なプレイヤーとしては、nanapiのけんすう先生然り、上述したエウレカの赤坂先生然り。彼らは事業を深堀りすることが好きそうな人であり、決して四半期決算に対応して「1,000億企業を創る!」と燃えそうな人には思えなかった。

その起業家は経営者タイプなのか事業家タイプなのか。経営者タイプであれば、上場に向く場合が多いだろうし、上場後に中長期的に繁栄する企業作りのために、事業だけではなく、株価を気にして、株価を上げる努力をしていくだろう。

とある経営者の友人曰く、対外的に「IPO目指すぞ!うおー!」とやるのは、採用や社内のモチベーション維持のため。「売却目指してるよ(ストックオプションも配らんよ)」という「IPO目指すぞ!ストックオプション配るぞ!」という企業と比すると採用で負けてしまうこともある。よって、口では「IPO」といっても、しっかりとM&Aの選択肢を見据える起業家も少なくはないのかもしれない。

周りにかなりの数のスタートアップ起業家がいるが、本当に経営がしたい。そして経営が向いているというタイプの起業家の方が少ないのではないかと思う。サービスの話は好きだが、サービスが一発当たった後に会社をどうしたいとか、そういう絵を描くのが好きかどうか。まだ見たことがない景色でもあろうから、想像するのは難しいだろうけど。この辺の見分け方として「稼いだお金をどう使いたいか」を起業家に聞いてみると良いかもしれない。サービスの深堀りなのか、M&Aや投資も考えていくのか。後者の発想がある方が、経営者向きといえそう。

現状のマザーズでは事実上「サービスが一発当たれ」ば上場できる状態であり、経営にさほど興味がない一発屋経営者も少なくないのではないか。

本稿がスタートアップ経営者の皆様に「自分は経営をしたいのか、事業がしたいのか」を再度考えるきっかけを提供できれば幸いである。「or」ではなく「and」ももちろんあり得るけど、どちらかというとこちらに適性があると認識しておくことで、EXITシナリオが変わってくると思う。

今回のタイトルはベストセラー「仕事は楽しいかね?」風にしてみた。



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