最低5年は粘れ!その先に果実が。月額課金12サービス数値比較

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インターネットビジネスで最も高利益率を確保できるのは月額課金モデルだと僕は考える。国内の上場企業およびスタートアップで月額課金サービスを提供する注目企業をピックアップして、その傾向を分析する。

月額課金

運営開始10年の老舗サービス:CGMとツールで月商億単位

スクリーンショット 2015-02-07 21.23.03まずは月額課金と聞いて本誌読者が真っ先に思い浮かべるであろうサービス群を紹介する。クックパッド、食べログ、ニコニコ動画あたりは本誌読者にも馴染みがあるだろう。全てCGM型でクックパッドに至っては既に15年、他2サービスも約10年の歴史を持つ。いずれでももちろん最初から課金サービスがあったわけではない。CGMである程度コンテンツ量が溜まった後に、そのコンテンツをランキングなどで並び替えて見せるなどの付加価値をスマホで閲覧するためには課金へという流れになる。

クックパッドと食べログに関しては「課金したら負けた気がする」「スマホでランキング見れないの不便だから課金した」など比較的負の感情でやむを得ず課金してしまったというユーザーの声を聞くことは少なくない。CGMによる圧倒的情報量を整理すると、ターゲットユーザーの一定層に対しては「課金せざるを得ない」魅力を持つといえそうだ。

ナビタイム、ルナルナという超老舗サービスも見逃せない。特にナビタイムはナビ情報の提供だけで400万人の有料会員を誇り、予測月商は12億円。CGMのような膨大な情報を集めるわけではなく、アルゴリズムを組んだシステム提供によるツールサービスだ。同様にルナルナも女性の生理日予測というログ化による単純なアルゴリズムで一時期は200万人の有料会員を獲得している。これもツールサービスであり、粗利率は相当に高い。

原価がさほどかからない両サービスは積極的な広告宣伝で有料会員数を伸ばしたと思われる。特にルナルナを運営するMTIは店舗(リアル)アフィリエイト事業にも昨今は力を入れているようだ。

1:デーティングは構造的に有料会員化率が上がりやすい

続いてスタートアップを見ていこう。7つのサービスをピックアップしたが、「デーティング」「コンテンツ」「動画学習」にカテゴライズできる。

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まず、「デーティング」を見ていこう。

本誌ではたびたびPairsを取り上げているが、基本的に男性が課金するモデルで「いいね!」し合ってマッチングするとメールを送ることができる。メールを送って開封し、返信するのには課金ユーザーになる必要がある。ゆえに、サービスの目的である婚活に近づけるためにメールして実際に会うには課金せざるを得ない。ゆえに課金率が他のカテゴリーのサービスより上昇しやすい。

全くモテずにマッチングしない男性からは課金できないが、メールのやり取りまで進めそうな男性であれば課金する。既存の代替課金は合コンなどであり、合コンで不毛な思いをするくらいなら、1度の1人分の飲み会費用である4,000円前後なら課金するというロジックが成り立っていることは、数字が証明している。目視や公表ユーザー数から、OmiaiとPairsは有料会員化率を推測し、月商を予測した。共に1億を越える規模と思われる。

◆参考記事:激戦のオンラインデーティング市場で抜け出した「pairs」

2:コンテンツは仕入原価が発生、利益率は一番低い

スクリーンショット 2015-02-08 22.02.13シナプス、cakes、NewsPicksをこのセグメントに置く。まずシナプスは本誌ではおなじみのサロンの運営社だ。サロンはコミュニティサービスともいえるが、FBグループで主宰者が投稿するコンテンツを軸としたコミュニティサービスであるため、コンテンツと分類する。

■サロン:ファンクラブからの転用の市場創出型だが、更なる可能性ある

サロンモデルは主宰者の魅力に紐づいて課金ユーザーが集まる。まだ新しい形態のため、市民権を得ているとは言い難いが、次世代型のファンクラブモデルといえ、今後5年程度で一般化する可能性はある。既に堀江貴文さんなどの大物主宰者を抱えており、予測課金者数は6,000人前後。2015年2月時点でのUmeki Salonは370人前後となっている(一時期500人に到達したが、サロン内で値上げを実施するなどして会員数を減らした)。

サロンに関しては今後「サロンプロデューサー」なる職業も生まれ得ると思う。僕のようなサロン運営経験者のノウハウを活かし、他のサロン運営のアドバイスに入るのだ。サロンプロデューサーとして他のサロンを一つ回すことは、2015年中の僕の一つの目標である。

■cakes / NewsPicks:10万人以上の有料会員を確保できるか

幅広いエンタメ?と経済ニュースというジャンルが違うだけで構造はほぼ同じである。cakesは新記事は無料で閲覧できるものが多いが、アーカイブを見るのに課金する。NewsPicksは新記事でも有料記事がいくつかあり、その記事を見るために課金する。NewsPicksはアーカイブを掘り起こしやすくするとより利便性が上がる気がするが、経済ニュースという観点では1年前の記事は価値がなくなってしまうのかもしれない。

僕が共同編集長を務める東京カレンダーはcakesのモデルを踏襲し、過去記事への導線を上手く作ることで課金ユーザー増加を狙う。

この「コンテンツ」セグメントは、仕入原価がどうしてもかかる。サロンは主宰者の取り分の方が大きく、プラットフォーム側の手数料率は約20%。cakesとNewsPicksは編集部を内製してコンテンツを作ったり、寄稿者にレベニューシェアなどで原稿料を支払う構造となる。ゆえに利益率が低い。

現にcakesは月額500円で有料会員数2万人と予想しているが、これでようやく月商1,000万円だ。有料会員数20万人でようやく月商が1億円となり、それくらいの規模になれば徐々に利益率は上がっていく。

3:動画学習は過去アーカイブ閲覧が主な提供価値

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最後のセグメントは動画学習だ。

ここには本誌読者に馴染みがあるであろうschooとあまり馴染みがないであろうアオイゼミを置く。

両サービスを比較するとなかなか興味深い。

schooは「卒業をなくす」をコンセプトに社会人学習を促すサービスだ。プログラミング学部の開設など、様々な施策を打っている。月額500円で様々な講義を受けることができる。他にもキャッシュポイントを設けていったり、値上げする可能性はあるだろうが、一定のユーザー層には確実に必要とされるサービスであろう。

月額課金だけでどこまでスケールするかはわからないが、「アーカイブへの価値」で運営年月が経つほどストックで価値が上がるモデルであり、日時課金者増加数のペースが急に上がっていくこともあるだろう。現に僕は2015年の10億調達候補の一つに挙げている。

◆参考記事:2015年に10億以上調達が予測されるスタートアップ6選
◆参考:schooでの梅木先生の授業

一方のアオイゼミは中高生の塾市場をリプレイスするモデルだ。厳密にいえば東進ハイスクールのオンライン版といえるだろう。特に地方の中高生にとっては近場に良い塾や講師がいなかったりする。現に僕は中高生の時に塾に通っておらず、浪人時代に代ゼミ札幌校の寮に入っていたので、ユーザー感覚として理解できる。近場の微妙な塾に行くくらいなら、オンラインで有名講師の授業を受けたいのだ。

塾のリプレイスであるがゆえに、それなりの単価を確保しやすい、プレミアム会員のメニューから推察するに平均単価は4,000円程度と見た。高校1年で始めれば卒業するまで使ってくれるかもなど、一定のライフタイムも見込みやすいかもしれない。高単価なのでそれなりの課金ハードルはあるが、塾の代替と考えれば高くはない。今後数年でブレイクしてくる可能性はある。

◆参考記事:打倒しまじろうを掲げる、中高生版schooのアオイゼミ

どちらのサービスも過去アーカイブの閲覧に課金するという点は共通しているが、特にschooに関してはライブに課金してもいい気がする。先生に質問して優先的に回答を得られるのであれば課金するユーザーはいるだろう。この辺はDeNAのSHOWROOMの感情課金に近しい。

◆参考記事:WEBコンテンツには、論理ではなく感情で課金する

月額課金は超時間がかかるが、その分果実も大きいかも

上場主要5サービス(注:ナビタイムは未上場)と未上場7サービスを見比べた。月商億単位となるサービスの多くは10年選手となっている。クックパッドや食べログのようなCGMは3年程度で結果の出るサービスではなく、5年単位で口コミを集めて、その後収穫フェーズへシフトする性質であるといえよう。

一方で開始2年程度で月商で億を越えると予想されるオンラインデーティングは、課金単価の高さと「出会い」という直接的な欲求を満たしているため、垂直立ち上げしやすかったのかもしれない。FB広告を回してユーザー数を伸ばし、ユーザー数が増えればマッチング数も増えるというSNSのような外部ネットワーク効果がある事業だ。これはかなりレアな市場ではないか。

海外ではSporifyのような音楽ストリーミングサービスやネットフリックスのような動画サービスが月額課金モデルで成立しており、YouTubeも月額か金サービスを始める(既に始めた?)という話もある。

■Spotify:有料会員数1,000万人 / 9.99ドル
◆参考記事:ストリーミングサービスSpotifyの有料会員が1000万人突破

■ネットフリックス:有料会員数1,304万人 / 8.99ドル
◆参考記事:営業益7割増。ネットフリックス、世界で急成長続く

音楽・動画といったコンテンツ領域では海外でこのような大きな成果が出ている。国内のcakesやNewsPicksのようなテキストコンテンツ市場も、この規模まではいかないとしても、10年スパンでの運用を頑張れば、それなりの規模に成長する可能性はある。

動画領域もネットフリックス以外にエンタメだとHuluもある。schooやアオイゼミのような学習領域も長期的に見ればアーカイブがロングテールでボディーブローのように効いてくるだろう。

月額課金モデルに共通していえるのは、オンラインデーティングのような特殊市場でない限りはそれなりの売上規模に達するのに3-5年はかかるということ。10年単位での運用を視野に入れて物事を考えた方が良い。

既に成功したサービスについてとやかく言うのは簡単だが、現時点のcakesに投資しようと思えるかどうかは投資センスの分かれ目だと思う。僕の肌感覚ではcakesに投資しようと判断する投資家の方が少ないが、それが正解だったか否かは5年くらい経たないとわからないかもしれない。「クックパッドに投資しておけば良かったぜ」という記事をどこかで見たこともある。

読者の皆様はインターネット業界の最前線に身を置いていると、トレンドの移り変わりが激しいことは身に染みて感じると思う。しかし、トレンドに左右されず、腰を据えて5年10年単位で既存の事業をネットに置き換えることを愚直にやっていけば、案外成果は出てくるのではないか。月額サービスの巨人たちが10年15年サービス運営している点を見てそう感じるし、そこに至るまでがかなりしんどいが、一度月額で一定数のユーザーを確保すれば、粗利率はうなぎ上りである。

短気なVCとは相性が良いモデルではないかもしれない。ファンド満期残り3-4年で投資して回収できるモデルではないだろう。だが、5年10年やればある程度の結果には繋がりやすいかもしれない。

月額課金モデルは長い目で見守るのがよかろう。

僕らは、近視眼的になりすぎたのかもしれない。

免責事項:未上場企業の数値は全て本誌独自予測であり、事業者から聞いたものではない。

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