ざっくりいうと…
・NHNは収益の約6割がポータルサイトNAVER.com関連の広告事業
・広告事業は安定的で、ゲームはちょっと不安定
・LINEのNHN全体の売上比率は8%程度だが、最も伸びしろのあるセグメントのため、LINEのマネタイズ施策などに注視したい
上場企業分析シリーズ。1社目のサイバーエージェントに続き、2社目はNHNです。2013/1Qの決算を見ていきます。NHNは韓国の企業で、コスダック(韓国取引所)に上場しています。主要サービスはNAVER.com。日本でいうYahoo!JAPANのようなポータルです。広告事業はサーチ型とディスプレイ型でセグメントが分れています。あとはハンゲームに代表されるゲーム事業、そしてothers事業にLINEが含まれています。下記がハイライト。まず全体概要、その後セグメント別に見ましょう。
営業利益率は30%前後で推移。自社メディアを持っているところはどこも営業利益率が比較的高い。
NAVER事業はポータルであるがゆえ安定性が高い
まずはサーチ事業から。ほぼPPC(リスティング)と捉えて良いでしょう。Yahoo!JAPANと同様、ポータルとしてNAVERの地位を脅かすほどの競合がなければ、上記の資料の下部にある検索クエリが年々上昇しているため、収益は下がりにくいと考えられます。上部の資料によるとスマホの浸透によるものなのか、モバイル比率も上がっています。
リスク要因としては広告の効果が見合わずに、PPCの単価が下落していくくらいではないでしょうか。ディスプレイよりは広告効果も計測しやすいと思うので、ボラティリティは低く、スマホ普及による検索クエリの上昇で収益が拡大する見込みが高いです。
続いてディスプレイ。Q/Qで少し下がってます。ディスプレイって四半期ごとの季節要因がありますので、あまり気にしなくて良い凹みかなと思います。Y/Yで微増ならokというところではないでしょうか。ディスプレイ広告もサイト自体のPVが伸びれば、広告単価が下がらない限り売上増が見込める分野なので、リスク要因は広告単価の低下くらいで、ボラティリティは低いといえそうです。
よってNAVER事業は今後も堅調に推移していくことが予測されます。
ハンゲームは売上減少、スマホではSAP的立ち位置で不安定
続いてはゲーム。PCオンラインゲーム中心のハンゲームとカカオにSAP的に出しているスマホゲームで構成されています。ハンゲームの売上が下がり、スマホゲームの売上が上がっているとのことですが、合算するとY/Yでは下がっていますね。ハンゲームはNHNが保有するプラットフォームであることに対し、スマホゲームはカカオなどのプラットフォームにタイトルを提供するSAPの立ち位置。
ゲームに関しては前回のサイバーエージェント同様、ボラティリティが高いので突っ込んだコメントは差し控えますが、プラットフォーマーからSAP比率が上がるとボラティリティが高いため、ゲーム事業は大きなリスク要因となるでしょうね。アップサイドもダウンサイドも判断しにくいです。
やはりNHN JAPANのLINE事業が今後の成長ドライバー
本稿の最初でセグメント別売上高をレート換算で算出しているが、トピックをまとめると下記。
■NHN JAPAN2013/1Q
売上:約132億
LINE:約58億
LINE事業のNHN全体売上比率:約8%*海外拠点は米国、中国、ベトナム、SGにもあるが、一番上の図表の海外売上高は約153億。8割型がJAPANによる売上と考えてよいだろう。
ちなみにここでいうwebサービスは、ポータルサイトLivedoorやNAVERまとめのことを指すのでしょうかね。最も大きなグロースはLINE事業なので、他のセグメントの大きな動きがなさそうなNHNにおいては、LINEが成長ドライバーになるのは明白といえそうです。
LINEの2億人突破とかは、本稿で触れなくても皆さんご存知かと思いますので、そういったニュースはコモディティメディアでご覧下さい。LINEのキャッシュポイントを下記に挙げます。
■LINEのキャッシュポイント
▷toC課金
・ゲーム(LINE POPなど)
・スタンプ課金
・LINE CHANEL(マンガ、占い、クーポンなど)▷toB課金
・公式アカウントおよびLINE@
LINEの四半期58億の売上の内訳は分かりかねますが、各チャネルがどれくらいのアップサイドポテンシャルを秘めるのか。LINE自体は今後は東南アジアやスペイン、南米でのグロースを目指すとあり、年内3億ユーザーをターゲットとしているとのこと。投資判断時に気をつけるべきリスクは下記。
【LINE事業の着眼点】
■1:ユーザー数のスケールおよび獲得スピード
we chatやカカオトーク、what’s appなどがある中で、メッセンジャー市場においてはFacebookやtwitterほどスイッチングコストが高くないことが考えられ、相対的に市場シェアの流動性が高いと予想される。
ただ、日本国内のユーザー行動を見ると、日本で後発のカカオトークやcommに追いつかれる気配はない。(commに至っては事業縮小)ユーザー数増加により外部ネットワーク性が効き、ユーザー獲得スピードは上昇する傾向にあるのは、従来のSNS同様の傾向といえる。スピード勝負でグローバルでユーザーを一旦獲得してしまえば、さほどスイッチされず、盤石なプラットフォームとして機能していく可能性は高いのではないか。
■2:toC課金でi modeのようなプラットフォームの世界観を再現できるか
ベースとなるユーザー数は上記のシナリオで増えたと仮定し、その上で各コンテンツがどう売上を上げていくのか。ゲーム、スタンプ、デジコンってどこかで見た景色。スタンプを絵文字やデコメにすれば、LINE上で提供するコンテンツってキャリアの公式サイトみたいな感じになってます。スマートパスなどキャリア公式のプラットフォームはまだありますが、キャリア縛りであるがゆえスケールが効きません。LINEの方がキャリア関係ないので、スケーラビリティがある。
と、LINEプラットフォーム無敵に一見見える訳ですが、各キャッシュポイントはどんな感じで今後売り上がっていくのでしょうか。
■LINE事業課金コンテンツの行く末
ゲーム:ボラティリティ高い(参考:最近盛り上がりに欠けるLINEゲームの勢いについて調べるお from SociApp)
スタンプ:デコメでそこそこの市場規模があったが購入頻度はどうなんだ?
マンガ、占い:一定のニーズがあるが、特に占いは価格が高い気が
おそらく現状はゲームの売上比率が高いでしょうね。マンガとか占いは月額課金でやると収益が安定していいと思うんですがね。決済の仕様でなかなかできないんでしたっけ。この辺のコンテンツを楽しむために、既にリワード広告である「LINEフリーコイン」という仮想通貨も登場し、メタップスなどをパートナーに迎えています。仮想通貨の導入はアクティブ率を維持する(もしくは向上する)施策ともいえそう。
ユーザー増加と共に、アクティブ率の維持が焦点になっていくだろう。落ち目といえるGREEやmobageのアクティブ率の推移をベンチーマークしても良いでしょう。ただ、GREEやmobageとの最大の違いはコミュニケーションプラットフォーム上にあるという点で、前者2社と比べて必要性の高いプラットフォームの上に乗っているため、アクティブ率のダウンサイドリスクは低いかもしれません。アクティブ率の維持の施策と思われる、LINE NEWSも最近ローンチされました。
■3:toB課金のアップサイドは限定的
公式アカウントに関しては、下記の記事を参考。日本国内においてはLINE公式アカウントを継続利用するクライアント数は限られると考え、グローバル展開した際にどこまでスケールするかがポイントですが、toC課金ほどはスケールしないと判断します。仮に月商3.5億でカウントするとQで10億程度。2013/1QのLINE事業58億に対して、2割程度の比率です。
公式アカウントは月商3.5億?:植原正太郎氏に聞くLINEマーケティング
結論:ゲームの凋落は広告でカバー、LINEで爆発で買い
まだまだマネタイズ余力があるとも言われているLINE、今後どのようなアクティブ率維持やマネタイズ施策を打ってくるのでしょうか。NHNへの投資判断に関しては、他の事業が安定的なので、LINEにさえ注視ていれば良いと言い切っても差し支えないでしょう。
最後に直近2年間の株価の推移を見ておきましょう。
LINEの盛り上がりとともに上がっている。気もしますね。時価総額は1兆円前後といったところ。日本でいうと楽天と近しい。
アップサイド要因:LINEの爆発とスマホによる広告事業の手堅い伸び
ダウンサイド要因:ゲームの不安定さ(セグメント比率20-25%)
天秤にかけると、アップサイドのインパクトの方が大きいため(ゲームが落ちても広告で穴埋めできるとも考えられ、+αでLINEを見ることもできる)、NHNは買い。と言っちゃっていいんじゃないですかね。
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