久々の上場企業決算分析シリーズ。今回はニコニコ動画を運営するドワンゴ(正式には子会社のニワンゴの運営)を分析します。2013年9月30日に1:200の株式分割も実施しており、今後のアップサイドがどれほど見込めるのか、考察します。ニコ動のプレミアム会員が売上を牽引しており、月額課金サービスといえばクックパッドが雄とされていますが、クックパッドは月額294円(iPhoneアプリは350円)で100万ユーザー。(注:2013/10/4にご指摘いただき、クックパッドの価格を修正)ニコ動は月額525円で200万ユーザー。ニコ動、美味しいなという感じです。
注:niconicoとブランド表記されてますが、ニコ動の方が親しみやすいため、本稿ではニコ動画と表記します。
2013年10月2日時点では時価総額は約700億円です。5月くらいに株価が上がっているのは、第二四半期の決算が好調だったからでしょう。第三四半期の決算発表をした8月上旬は、後述するポータル事業の営業利益が下がっていることを受け、株価が鈍化していると推測されます。第三四半期に該当する2013年4月にニコニコ超会議が実施され、赤字計上していることが営業利益減の主要な要因と考えられます。
ニコニコ動画とドワンゴ.jp中心のモバイルで、売上の8割
いつも通りセグメントから見ていきます。セグメントは5つと多めです。
■ドワンド事業セグメント解説
1:ポータル事業(ニコニコ動画関連)
2:モバイル事業(dwango.jpに代表される着うた、アニメなど)
3:ゲーム事業(家庭用ゲーム向けソフト開発)
4:ライブ事業(ニコファーレ運営)
5:その他事業(アニメイベントの運営など)
ドワンゴの売上と利益の8割型をポータル事業とゲーム事業で占めており、他の3事業が爆発的に伸びて利益貢献することは予測しにくいため、本稿ではポータル事業とゲーム事業の二点に焦点を当てます。
ニコ動プレミアム会員は、3年程度で300-400万人へ伸びる
まずは3Qまでの売上と営利の昨年対比。
■2013/3Q
売上:117億円
営利:18億円■2012/3Q
売上:101億円
営利:7億円
ポータル事業の構造を把握するための最重要な図を決算資料から拝借。プレミアム会員(月額525円)事業の売上構成比が最大で、直近では75%程度。広告やアフィリのインパクトは小さいですが、「ポイント・その他売上」が6億円近くあるのは気になりますね。おそらく、ニコニコポイントという仮想通貨の売上が主と思われます。
上記が売上を牽引するニコ動のユーザー数の伸び。月額525円でプレミアム会員200万人ですから、月商10億。月額課金サービスなので、会員が増えれば増えるほど利幅が上がり、ニコ動の売上セグメントを見ても仮想通貨であるポイントと並ぶくらいの利益率になってきると推測されます。
今後の主な焦点は、プレミアム会員数がどこまで伸びるか。ロジックを立てるのが難しいのですが、2つの観点から予測してみます。
■①:プレミアム会員構成比率
通常はユーザー数が伸びると比率が下がりそうですが比較すると…むしろ上昇しています。
2010/1Q:会員1,500万 / プレミアム60万=構成比約4%
2013/3Q:会員3,500万 / プレミアム200万=構成比約6%
■②:現在のプレミアム機能からの変更の可能性
現在の提供価値は下記が主要
・動画の読み込みが快適
・生放送の配信/専用入口からの入場/後で見るが可能
これだけではスケールに限界があると想定され、Huluのようなプレミアム会員限定の動画配信などがアドオンされてくると、スケールの確度が上がると予測する。
■結論:緩やかにプレミアム会員は300-400万人程度までは伸びる
①のプレミアム会員構成比率が下がっていない点と、②プレミアム会員の提供サービスの見直しの余地により、感覚値となりますが今後3年程度で300-400万人となり得るポテンシャルはあると見込みます。この根拠は、無料ユーザー数が約5,000万人まで増えたと仮定した際のプレミアム会員構成比率を現状の6%から8%程度への上昇を見込んだ数値です。
過去実績を見ても丸4年近くで約150万人増で、増加率が上昇する要因もなさそうなため、成長確度が上がることは考えにくいですが(②のサービス見直しがあるなら、特殊要因となり得る)、スマホで動画を見るユーザー行動も増えると想定すると、プレミアム会員が減るというリスクは低いと思われます。ニコ動と似たコンテンツが見れる競合サービスもないですし。(YouTubeなどは直接的な競合とは考えにくく、競合リスクは低い)
ドワンゴも例外ではないフィーチャーフォン依存のモバイル
モバイル事業はフィーチャーフォン時代の着うたの売上が中心でしょうか。
・フィーチャーフォン事業はスマホ移行の影響を受け、会員数減少
・スマホ会員獲得の広告宣伝費を絞ったため、会員数減少(広告宣伝費を絞ったことによる2013/3Qの営業利益増と読める)
フィーチャーフォン時代に謳歌したCPは軒並み苦しそうですが、ドワンゴとて例外ではなかったということですね。特にスマホで着うた使ってる人って、フィーチャーフォン時代より見かけませんし、厳しい市場です。モバイル事業はフィーチャーフォンの残存者利益を粛々といただくくらいしか打ち手はないでしょう。他CPと比較するとニコ動の存在は本当に救いですね。
結論:ニコ動の成長性など3つの理由から買い推奨スタート
結論としては、モバイル事業は緩やかに衰退しつつも、ニコ動でそれをカバーして余りあるはずの成長を見せるはずです。いっそのこと、モバイル事業はどこかに事業譲渡した方が、株式市場では純粋にニコ動の価値=ドワンゴの価値と見なしやすいので、評価されやすくなるでしょう。
■ドワンドの株価形成要因
①:期待値=ニコ動の成長>モバイル事業の衰退
②:株式分割による購入単元価格の低下による若干の流動性の上昇
③:ウルトラCでモバイル事業売却による株式市場の評価の上昇余地
(イベントを期待した仕込み)
*ニコ動事業=月額課金中心事業の類似比較として、クックパッドのPERは2013年10月3日時点で103倍となっている
この3点を根拠に、The Startupでは「買い推奨」でカバレッジをスタートします。2013/3Qの特殊要因であったニコニコ超会議の赤字等が4Qではなくなり、ポータル事業の利益水準が元に戻ると予測されるため、4Qの決算発表後の2013年11月上旬以降には再び上昇傾向となるでしょう。③によるイベント・ドリブン投資的な観点も忘れたくない点です。あくまでウルトラCですが。
別記事で、YouTube、Ustream、Hulu、ツイキャスなどの動画ストリーミングサービスの比較分析をしてみると面白いかもしれません。気が向いたら書いてみます。
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