3/8、@cosmeを運営するアイスタイルが上場し、初値は公募価格の2倍となった。未上場企業でもこうした有力なジャンル特化型CGMサイトがいくつかある中、類似業種比較でクックパッドを参考にし、ジャンル特化型CGMの成長要因について考察したい。*データは全て2012年3月8日時点でのyahoo finance、各社有価証券報告書、媒体資料より抜粋。
両社業績比較
■PLの比較
共に営業利益率が伸びていますが、クックパッドが50%近くに対し、アイスタイルは直近Qでも16%程度となっており、同じジャンル特化型CGMをベースとした事業展開とはいえ、利益構造に違いがあるがゆえの結果となっているだろう。
■事業上のKPIの比較
月間UUはクックパッドがアイスタイルの2倍だが、累計投稿数はアイスタイルがクックパッドの10倍にもなる。PL上ではクックパッドの方が利益率が全然高い。(投稿内容もレシピと化粧品の口コミでは前者の方が投稿ハードルが高いため、単純な比較にはならないが、一応参考までに)
■1投稿あたり利益の比較
1投稿あたりの営業利益比較は実に50倍にも上る。投稿ハードルの違いはあれども、現状の結果的には50倍もの差となっている。マネタイズはクックパッドの方が上手といわざるを得ないだろう。
有料会員事業が牽引するクックパッド
見ての通り有料会員事業の売上が2009年⇒2011年で10倍となっている。これが主にPC&ガラケー/月額294円やスマホ/月額350円のプレミアム会員による課金であり、有料会員事業の売上高を会員課金のみと定義すると、現段階では40-50万人近い有料会員をクックパッドは保有している。(こちらの記事によると60-70万人の間ではという説もある)
スマホ比率は公表されていないが、スマホでの月額課金サービスも提供しており、無料アプリは200万DLを達成。appstoreのトップセールスランキングの上位に定常的に食い込んでいることから、それなりの数の有料会員を獲得できていると推測できる。PC連動があるとはいえ、ガラケーとは異なり、月額課金文化の薄いスマホで有料会員を一定数獲得できていることは賞賛に値する。
プレミアム会員と普通の会員の最大の違いは「人気/話題レシピ」のコンテンツ検索権限の有無であり、これがキラーコンテンツとなるようだ。
料理からレシピを検索できるものの、投稿数の多さからレシピが埋もれてしまい、質の高くない投稿に当たってしまうことも少なくないとか。
コンテンツでの差別化による課金は、メディアのジャンルにもよるがCGM事業者がある程度サービスをインフラにした後に選択するマネタイズプランとして無視できず、最大の稼ぎ頭になり得ることをクックパッドが証明している。この辺の設計はサービス初期から意識したい。
有料会員事業以外も伸びて入るものの、2009年⇒2011年でマーケ支援は1.8倍、広告事業は1.5倍と有料会員に対するインパクトには欠け、広告関連が収益ドライバーになる構造とはならないことを示唆している点も重要な論点でしょう。
今後のアイスタイルの成長の壁となる有料会員事業
アイスタイルは事業別の営業利益も出ていたので詳細にデータを拾った。
事業性質上、メディア事業が一番営業利益率が高くなり、ECや店舗事業の営業利益率は比較すると芳しくない。クックパッドと異なる点は、メディア事業の詳細が開示されておらず、メディア事業の中に有料会員事業と広告事業があるはずであり、この辺の比率が読めない。
モバイル課金のプレミアム会員は294円でドコモで提供している(ニュースリリース参照)が、 まだiPhoneアプリは出ていない。営業利益率は伸びてはきているが、クックパッドの水準には達していない。
今後の伸びしろはメディア事業の中でも特に有料会員の獲得にかかってくると思われるが、@cosmeアプリなどで有料のフックとなるキラーコンテンツをどう見せるのかが鍵となる。だが、現在無料で見れているランキングがいきなり有料化するのか?など有料キラーコンテンツ作成のハードルは低くないと私個人的には見ている。
ジャンル特化型CGMで利益率が高いのは有料会員事業
扱う商材にもよるが、上記2社の比較から、CGMサイトはいかに有料会員を獲得できるかが収益に大きなインパクトを与えるといえるだろう。そしてその有料会員が課金するフックとなるコンテンツは何になるのかをサイトの成長途中で早めに見極めることが重要であろう。
CGMのマネタイズとして、①:有料会員ではなく、無料会員でもデータベースマーケティングで会員情報をtoBで販売。②:商材としてFromBからの広告単価の高いジャンル。この2点もあるということを補足しておくが、③:FromCの有料会員。この利益率の高さは見逃せないであろう。
よってジャンル特化型CGMの最大の成長要因は有料会員数の伸びである。ということができるだろう。
アイスタイルの時価総額:最大100-120億の間で推移
おまけで株価予測。上場銘柄ということでアイスタイルの株価に注目が集まる。2012/2QのPLから売上の緩やかな伸びと営業利益のそれなりの伸びが見込まれる。2012決算では最低7億程度の営業利益となるであろう。ただし、メディア事業の有料会員事業が今後大きく伸びるとは先述の理由で考えにくいため、爆発的な成長は見込みにくい銘柄といえるだろう。
初日で最高値ベースでは時価総額100億となったが、少なくとも今後1年は マクロ経済的な要因がない限りは最大100-120億程度の間で推移すると予測する。次年度決算予測の発表などでも、先述の理由で大きなサプライズはないと推測し、株価が大きく跳ねることはないであろう。よって3/9現在での投資判断はholdであり、もう少し下がってからのbuyを推奨する。