ミスチル最新アルバムの曲「常套句」のPVは奥が深い

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変化球の音楽ネタです。もはやThe Startupではありません。最新アルバム[(an imitation) blood orange] が先週発売されましたね。

CDでわざわざ買うこともあまりないご時勢で、ituneにないこともあり唯一CDで僕が購入するアーティストです。

音楽鑑賞は表現力を鍛えるとても良い素材です。他分野で表現について学んだことは僕の現在の本職である文章を書くことにも応用が効きます。今回のアルバムに関して、着目した点をいくつかご紹介します。

「常套句」は想像の余地が広いがゆえに難易度の高い楽曲

今回のアルバムの中でいくつかkeyとなる曲はあるでしょうが、今のところ一番面白いと思っている曲は「常套句」です。スローバラードとしてのテイストは「365日」とかに似ていそうですが、ある意味においては真逆の楽曲です。おそらく何も考えずに聞くとすぐに飽きる曲でしょう。そして何回か聴くと気づくのです。歌詞がシンプルすぎて描写がほとんどないことに。歌詞はリンク先で見てみて下さい。

ボーカルの視点だと、描写が歌詞にないということは、自分なりの世界観を構築して歌う必要があります。歌詞だけだと手掛かりすらなくて世界観の構築に苦しむでしょう。そこで面白かったのが「常套句」のPVです。アニメですが、常套句の世界観の大きな参考になります。2人の関係性や「会いたい」という気持ちの表現、愛の形のヒントがある。おそらくこのPVを見てから歌ってみると、一段深くなり、楽しめる。理解を促進するという意味合いでの「プロモーション」ビデオとしての質は高い。

365日」と対照的と表した所以は、365日の歌詞がかなり具体的であり、感情移入のしやすい曲だから。目を瞑れば描写が浮かびやすい楽曲です。一方の「常套句」は自分で描写を構築する必要があり、歌い手であれば聴き手にその世界観を少しでも伝える必要があります。おそらくオーディションにかなり向く曲でしょう。表現力に圧倒的に差がつきます。「カラオケ」と「プロ」の差は表現力なのです。「カラオケ」は音を追っているだけ。「プロ」は相手の気持ちを揺さぶることができているはずです。

「常套句」では例えば、ブリッジ部分の「嬉しさと悲しみの間を揺れいている 狂おしいほど」をどう表現するか。嬉しさと悲しみの間が「狂おしい」なのか、それとも他の感情があるのか。単調な歌詞の中で一番と二番の展開にどう差を付けるか。シンプルであるがゆえに表現の幅が広いのです。これはハマればハマるほど楽しい。「君に会いたい」という常套句で塗固められた「常套句」にどう色付けするかは歌い手の自由なのです。

「Marshmallow day」は2013年的な楽曲

おそらく今回のアルバムの目玉曲と思われる「Marshmallow day」。大抵の音楽アルバムにおいて、2-4曲目にそのアルバムの核となる曲が入ってきます。前作だと「擬態」、前々作だと「エソラ」でしょうか。「youthful days」に似ているという説もある「Marshmallow day」ですが、ズバリこれは歌ってみると純粋に楽しい曲です。耳馴染みのない感じのサウンドは近未来です。

最近のミスチルはアルバムに必ず1曲は近未来的な楽曲を入れてきている気がして、それがアルバムの核となっている場合が多いような気がします。今までに聴いたことがないんだけど、メジャー感がある。でも深みがあるというよりかは、あくまでアイコン的な位置づけな気がします。

1曲目の「hypnosis」は草原を思わせる壮大なナンバー

ここ最近のミスチルのアルバムの1曲目は、極端にいうとアルバム内から浮いているくらい常識はずれな楽曲が多い印象です。(アルバム内に他にも捉えどころのない曲は少なくはないのですが)「終末のコンフィデンスソング」も「I」もなかなか捉えどころがないながらに、ハマってみると面白いです。ボーカルにとってはこの独特な感覚を掴むのに少し時間は掛かりますが。

今回の「hypnosis」は逆にわりとストレートで壮大な曲ですが、サビが今までに余りないテイスト。まだあまり聞き込んでないですが、これも歌うの難しいんだろうなと…。解き放つ感がかなり要求される感じ。「エソラ」とかも慣れるまでは難しかったのですが、エソラの比にならない解放感。うーむ。PVも草原でしたしね。

ミスチルって他のPVも面白いんだよ

アーティストがアルバムを出すごとに「前の方が良かった」とかそういう声も聞くものですが、そういうものは個々人の好みでもあるのでどうでもいいとして、ミスチルの場合はPVを見るのが面白い。今回の「常套句」以外にもアニメーションの興味深いPVはたくさんあります。実写映像よりもアニメーションの方が様々な物事を示唆していて、それを読み取るのが面白いです。

ということでミスチルのPVでも見てみて下さい。Mr.Children Tour 2009 ~終末のコンフィデンスソングス~ [DVD] あたりだとライブDVDですがPVもライブ中に差し込まれていて、結構楽しめます。このDVDは相当クオリティが高いと仲間内では評判でした。

音楽は「ファーストインプレッション」で楽しめる曲もあれば、スルメイカ的な楽しみ方ができる曲もあります。どれだけその楽曲を楽しめるかは自身の「耳と感性と脳」次第だと思います。今回のアルバムに関しては、何かの雑誌のインタビュー記事で小林武史氏が「いつもより深いところまで潜れた」と評していました。味わってみる価値はありそうなアルバムですね。[(an imitation) blood orange]



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