ざっくりいうと…
1:CocoPPAバブルで株価暴騰だが、四半期で売上は1億円程度
2:きせかえ市場はスマホシフトで縮小し、グローバル展開しても月額課金がAppleの仕様上難しければマネタイズのアップサイドは限定的
3:スマホで強いRTB事業は堅調に推移しそう
上場企業分析第三弾はユナイテッド。スマホきせかえコミュニティCocoPPAがグローバルでブレイクして2013年7月には米国を中心に1,200万DLを突破。このCocoPPAバブルによるユナイテッド株の暴騰ぶりはガンホーと比較しても目を見張るものがある。
■ガンホー
年初来安値:7,960
年初来高値:163,000
20.4倍■ユナイテッド
年初来安値:210
年初来高値:9,320
44.3倍出典:Yahoo!ファイナンス
明らかにバブルですね。有価証券報告書を元にすると大株主はDACの45%を中心に(P53)62%程度で1,400万株。最近のデイリーの出来高は700万株前後で推移。すごい流動性ですね。浮動株を投機家におもちゃにされて株価が乱高下している印象を受けます。ちなみに過半数を持つDACの株価自体はあまり上がってないですね。それでも年初来安値⇒高値で5倍程度にはなっていますが。
CocoPPAへの株式市場の期待の高さが伺えるユナイテッドですが、2013年1Qは先行投資期間と位置づけて戦略的な赤字となっているようです。赤字でも株価が上がっていくのはAmazonの事例などもありますから、一概におかしいとも言えないのですが、CocoPPAをLINE的なものだと思い込んだ投機家のよる短期のトレーディングで不当に株価が上がっているように見えます。期待値が高すぎる、ともいえるでしょう。そんなユナイテッドの決算を見ていきましょう。
各資料の出典:ユナイテッド2013年1Q決算資料
全体感:メディア事業と広告(主に)RTB事業の二本柱に
ユナイテッドといえばヴェンチャー投資で有名だったネットエイジ⇒ngiがmotionbeatへと名前を変え、広告事業が主であったスパイアを2012年12月に吸収合併し、ユナイテッドへと社名変更したという複雑な沿革があります。ヴェンチャー投資(インベストメント領域)はmixiの保有株を全て売却し終え、ノンコア領域となったとの発表もあります。
メディア事業と広告事業の二本柱ですが、今後の注力事業はメディアはCocoPPA、広告はスマホRTB(PCにも今後参入)をコア事業としており、ここのポテンシャルがどれくらいあるのかを見極める必要があります。
CocoPPaの売上は四半期で1億円程度?:月額課金が鍵?
上記によるとスマホメディア事業の売上が今Qで1.5億。スマホメディア事業はCocoPPa以外にもDeNAが提供するGroovyと連携したアフィリエイトメディアであるビートプラスなど複数を保有している(Groovyは流行っているようには現状は見えませんが)よってCocoPPaだけで1.5億とは推測しにくいので、1億程度は売り上がっているのではないかと思う。広告収益のみとありますね。
CocoPPaのDL数推移と国別利用者比率は下記。
米国42%はすごいですね。決算資料のP22-P24にCocoPPaの今後のマネタイズ施策について触れられています。「きせかえ」に関してはガラケー時代も一時期熱い市場なのではと謳われたことが2009年くらいにありました。私が僅かながらにCPに在籍してコンテンツ周りを担当していた時代です。ガラケーの公式サイトとCocoPPaが異なる点はiOS比率が高くグローバルでのDL数が多い点と、投稿型のCGMである点です。現在はアイコンと壁紙素材をユーザーが投稿できますが、リニューアル後はホーム画面も投稿できるとのこと。
■CocoPPAの想定されるキャッシュポイント
1:有料きせかえ素材配信(法人提携:例.サンリオ)
2:広告(アドネットワークの枠として)
3:CtoC課金(課金実装難易度が相当高い)
4:月額課金
1に関してはユーザーから課金しつつも企業からも公式アカウントとして課金できる。ここはLINEの公式アカウントに若干近い考え方といえよう。2はトラフィクが増えれば比例して伸びる。3は実現できれば面白いと思うが、決済などの課金周りの実装難易度が高いため現実的ではないかも。4は現在無料でDLし放題なのを制限をかけて全部DLするには月額課金というスキームに持っていく。ここは設計次第ではマネタイズの香りがする。
■きせかえ市場の予測
1:きせかえの買い替え需要
⇒頻繁ではないと推測され、ゆえにAPRUの高騰も限定的
*参考:フューチャーフォン時代のきせかえ市場は国内で100億円前後
出典:モバイルコンテンツフォーラム(2012/7/20発表)
スマホシフトしたからといって、需要の観点から国内市場が一気に伸びることは考えにくい。それどころかフューチャーフォン時代の月額課金はスマホでは機能しにく、ワンショットの買い切り課金型にシフトしているため、課金ビジネスだけで見ると縮小している可能性が高い。
2:トラフィクの伸びへの疑問符
⇒CGMではあるがコミュニケーションではなくツール系サービスのため、LINEなどのようなDAU率は期待できない。ゆえにトラフィックが爆発的に伸びることは想定しにくい
*実際のユーザーヒアリングなどをできていないので、その辺も調査できるとより確度が上がると思われる
■結論:DL数スケール後に月額課金を導入し有料化率に期待したい。but…
ゆえに日本発グローバルサービスとしてポストLINE的な見方を株式市場は期待しただろうが、LINEと比較するのはさすがに酷であろう。決算資料の今後のマネタイズ施策に明記はないが、私ならDL数スケール後に月額課金を導入し、安定収益を取りに行く。
しかし、iOSの月額課金の審査が昨今厳しいらしく、更新性のあるニュースアプリのようなモノじゃないと月額課金はApple側から弾かれるという説がある。月額課金は最も美しいモデルだが、実現可能性は低いんだろうな…。
月額課金できないとなると、ワンショット課金と広告のみではそんなにスケールするイメージが沸きませんね。現状の四半期1億円程度の売上からはもちろんぐっと伸びるでしょうが、アップサイドは限定的かと思います。
成長市場であるRTBのスマホDSPとSSPを手掛け堅調に推移
スマホに強いDSPであるadstirとSSPであるBypassからなるRTB事業が牽引。四半期で2.5億円程度の売上があるので、通期では10億円超えてくるでしょう。これは先日のサイバーエージェントのレポートでマイクロアドに触れた際には通期予想の売上は60億円程度でした。下記の資料によるとPCよりスマホの方がまだ全然市場が小さいようですね。
今後はPC分野にも参入とありますが、DSPはマイクロアドやフリークアウト、SSPはジーニーやKauliという先行者がおり、既存クライアントからのアップセルを狙うにしても、そこに対してどれだけ市場シェアを奪えるかは予測を立てにくいですね。
とはいえ確実な成長市場ですので、スマホRTBの強力な競合が出てこなければ(逆にPCで強い業者がスマホでどれだけ強いのかは調査する必要がある)堅調に伸びるのではないでしょうか。
結論:ユナイテッド株は現状は投機的な状況といえる
ファンダメンタル的にはCocoPPAとRTB共にアップサイドは十分あり、1Qは赤字ですが決算資料にあるように通期では黒字に持っていけると思われます。ゲームみたいにヒットが出るか否かというギャンブル性はなく、それなりに手堅く伸ばせるのではと。
テクニカル的にはどう見ても株価はバブっています。The Startupのカバレッジは「売り推奨」でスタートしますが、一時期の8,000円前後から2013年8月2日現在は2,000円まで落ちてきていますが、それでもbuyというには割高な水準でしょう。1,000円くらいまで落ち切ったところで買いを入れると、その後のファンダメンタルの予測から、株価が再度上がるというシナリオはあり得そうです。
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