以前から注目している法律Q&Aサイト、弁護士ドットコムが資金調達を完了した模様です。引受先はデジタルガレージグループのDGインキュベーション。DGインキュベーションって、twitterやpathにも投資しているんですよね。デジタルガレージグループはかなり謎の多いグループであると昔から思っておりました。約1億円前後の調達とのこと。
弁護士ドットコムには以前より下記の3つの観点で注目しておりましたので、このタイミングでご紹介します。
テクノロジーでユーザーの法律コストの最適化を可能に
法律という重い分野に関して、手軽なQ&Aというソリューションを提供するという市場が面白いかと思います。悪い例ではありますが、出会い系サイトを少しだけ見てしまった後に、ものすごい金額の請求がきた経験があった際に、誰に相談すれば良いのでしょうか?実際に弁護士に聞くと高額だし、そこまでのフィーを支払うほどの内容の相談でもない気がする。そんな状況で気軽に質問し、回答を得られるのが弁護士ドットコムです。
個人である一般ユーザー向けの弁護士ドットコムを現在はメインで運営しているようですが、私は法人向けサービスである「弁護士ドットコムビジネス」に可能性を感じています。法人市場では弁護士と顧問契約をしている企業が大多数で、大企業は顧問弁護士が必要であるでしょうが、中小企業の顧問弁護士市場を弁護士ドットコムビジネスでリプレイスできる可能性があると私は考えています。
法科大学院生の友人にも聞いてみましたが、法人向け弁護士サービスは案件の条件に応じた個別化が必要である場合が少なくないという意見もありましたが、汎用的に通用するソリューションもあるかと思います。私が考える中小企業の弁護士顧問契約は保険料のようなもので、テクノロジーでコストカットが効く分野であると考えています。顧問契約から弁護士ドットコムビジネスにシフトし、複雑な個別案件の場合は有料オプションで従量課金という体系が、中小企業の法律対策のコスト最適化になるのではないかと思います。
世界的に珍しいQ&Aサービスでの月額課金制に注目
主な収益モデルがQ&Aサービスでの月額課金である点も注目に値します。一般ユーザー向けの弁護士ドットコムでは、弁護士にオープンに質問し、回答がもらえるという機能を利用できる無料会員は約20万人。(弁護士回答率は98%)無料機能に加えて、自分の質問に限らず、他者の質問に対する弁護士の回答がより見やすくなる機能などを含んだ有料プランがあり、会員は約2万人とのこと。モバイルで月額315円、1,050円のプランがあり、1.050円のプランではオプションでPC版の閲覧も可能。
法人向けの弁護士ドットコムビジネスでは、具体的な会員数は非公開ですが、有料プランは7,980円となっています。先述の市場性の話で触れましたが、私はこのサービスは中小企業の顧問弁護士市場をリプレイスできるポテンシャルがあると考えているため、このサービスの有料会員数が今後どこまで伸びるかに注目しております。
個人向けでは有料会員料金が315円、法人向けでは7,980円と、約25倍の価格差ですから、弁護士ドットコムビジネスで法人会員をどれだけ伸ばせるかのインパクトはオーセンス社にとっては大といえるでしょう。
Q&Aサービスは OK waveや世界的にはQuoraなどがありますが、ユーザー課金主導モデルで大きくスケールしたサービスは世界的にもまだないのではないでしょうか。法律のような専門性に価値を見出し、対価を支払うユーザーは一定数いるでしょう。他のどのような分野であれば、有料Q&Aサービスがスケールするのか、どのような機能があれば課金ハードルが下がるのかなど、有益な研究対象になるでしょう。
気になる旬な時事ネタが売りのコンテンツマーケティング
弁護士ドットコムでは「弁護士ドットコムトピックス」という時事ネタを法律的な観点から解説した記事を多数配信しています。いわゆるコンテンツマーケティングの一種といえるでしょうが、時事性も相まって読みたくなるタイトルのコンテンツが多く、絶妙です。例:楽天「kobo Touch」の予約購入者は、書籍数の不足を問えるか
旬な時事ネタに対して法的にグレーなゾーンを解説していくという切り口は、読者が知りたいニーズを的確に捉えています。法的観点であるという側面はあるものの、このネタはThe Startupでは切り込めないなあというネタもあり、ペナルティエリア内を好む私でも踏み込めないような内容の切り口が満載です。
その絶妙な切り口のネタは相性も相まってか、BLOGOS内でもわりと読まれているようで、最近は比較的BLOGOS内で見かけることも多いです。 このコンテンツを通して弁護士ドットコムを知った方も多いかと思います。コンテンツマーケが上手く機能している好例といえるでしょう。
弁護士ドットコムから、月額課金モデルの「有料機能プラン」の作り方やコンテンツマーケから学べることはあるでしょう。特に月額課金モデルは私はウェブサービスとして利益率の高いエクセレントなモデルであると思っているため、月額課金サービスには今後も目を光らせてウォッチしていきたいですね。