伊勢丹のオウンドメディア「FASHION HEADLINE」にみるオンラインメディアと雑誌の構造の違い

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2012年12月から多数のオンラインメディアを手掛ける株式会社イードと株式会社三越伊勢丹ホールディングスの共同出資により、FASHION HEADLINEというファッションニュースメディアが登場した。
参考:プレスリリース

このFASHION HEADLINEは事実上伊勢丹のオウンドメディアと称して良いであろう。従来のこの種のメディアはファッション雑誌に引きずられて「ファッション雑誌をweb化しました。以上。」的なものが多かったように見受けられる。未だにリアル世界の雑誌以上に影響力を持つファッションオンラインメディアは国内では私の知る限りでは存在しないといえる。

ちなみに写真集化までされているファッションスナップ・ブログメディアのThe Sartorialistは別格。ファッション系にも関わらず(読者のITリテラシーがそれほど高くはないと思われるにも関わらず)Googleリーダーの登録数は4万人以上。(ちなみにTech Crunch Japanでも登録者は3万人くらいだ)大学時代愛読していたことを覚えているので、相当な老舗メディアですね。ここの写真集が家にあったりするとお洒落だな若かりし頃に思っていました。

ちなみにThe Sartorialistはかなり前からあったからこそ成り立つメディアであり、ポストinstagramの時代においてはinstagramでいいじゃん的なコンテンツなので、2010年くらいに出てきていたら、instagramの超人気ユーザー。くらいの位置付けで終わったかもしれません。プラットフォームの上に乗るか乗らないかで明白に結果が異なるであろう良い事例といえますね。

雑誌とオンラインメディアの構造の違いによるコンテンツ

かつて雑誌オタクであり、今も自分がターゲットとなるであろうメンズ雑誌にはそれなりに目を通す私は、ファッション(というかライフスタイル)系のメディアをやってみたいという想いは学生時代からありました。
まずは紙のファッション雑誌の構成要素を考えてみる。

■ファッション雑誌の構成要素

・特集(P20-P40くらい?)
・コラム(連載)
・ニュース
・記事タイアップ

一方でオンラインファッションメディアはどうか。今回はFASHION HEADLINE以外に2004年頃からある老舗のHOUYHNHNM(フィナム)をベンチマークしてみた。

■オンラインファッションメディアの構成要素

・ニュース
・コラム(個人ブログみたいな体が多い)
・カテゴリー

注:MECEではないが、カテゴリーの押し出しが目立つので敢えて明記

一番の違いはファッション雑誌は特集によるインパクトが強いこと。特にブルータスやPenのようなライフスタイル誌はファッション雑誌よりも特集のインパクト比率が高いでしょう。一方のオンラインメディアは紙の雑誌と比べて、カテゴリー分類がやけに目立つなという印象。紙の雑誌ではおまけ的に入っているといえる、ニュースやコラムがメインのコンテンツ構造に見えますね。

■雑誌 vs オンラインメディア

▷中心となるコンテンツ構造
雑誌=特集:オンラインメディア=ニュース&コラム

▷読者の読み方(メディアの消費の仕方)
雑誌=パッケージ:オンラインメディア=記事単体の集積

この違いは面白いなと。オンラインメディアの場合はニュースやコラムで記事を大量生成した方がPVが伸びやすく、PV連動で広告価値が上がるでしょうから、ビジネス的な理由でそういう構造になっているのでしょうか。そうであれば、まだまだ改善の余地がある分野といえそう。一方で雑誌は特集というフックを武器に部数を伸ばす必要がある。だからインパクトのある特集企画を作り、読者の目を引く必要がある。

パッケージ商品としての雑誌。
記事単体の集積といえるオンラインメディア。

構造の違いからコンテンツの力点が異なる。のだろうか。

ちなみに雑誌の販売部数と広告売上は連動しそうに見えるが、一概にそうとも言えない。現にLEONの販売部数は落ちているようだが、分厚さ(要は広告の入り)はさほど変わらない。読者を上手くセグメントしていれば(富裕層向けなど)部数の割には高い収益性を確保できるのだろう。

雑誌もオンラインメディアも世界観が最重要なのでは

特集企画がメインコンテンツの雑誌、記事の集積であるオンラインメディアという分け方をしたが、現時点で私が影響を受けてきて、心を奪われてきたのは雑誌の方である。エッジの利いた特集企画に心を動かされ、気づけば毎月その雑誌の発売を楽しみにしていたこともあった。期待して、期待に応えて。という積み重ねがその雑誌に対する信頼や忠誠心を高め、世界観を理解し、惹かれるようになっていった。

このような恋心をオンラインのファッションメディアに持つのは構造上不可能なのだろうか?ニュース記事の蓄積ではこのような恋心は育まれないであろう。一方でThe Sartorialistのような多くの人の心を奪うオンラインスナップメディアもある。

いつものメディア論に戻ってしまいますが、要は編集長の世界観がダイレクトに出るメディアの方が読者に深く刺さるんだろうなと。読者の心を大して動かさない記事を多く積み重ねても、PVは上がるかもしれないが、それは「オーセンティックなコンテンツ」であると言えるのだろうか。

もちろんHOUYHNHNMにも面白いコラムコンテンツはあるし、FASHION HEADLINEの最新ニュース情報は実際に助かるし、伊勢丹で売っているモノに関する情報であればO2O効果は見込めるであろう。

PVが経営に直結する構造になりやすいオンラインメディアにおいては、PV至上主義ではニュース比率の高いコンテンツ構造になり、ファッションやライフスタイル分野において、紙の雑誌と同等もしくはそれを超える恋心を読者に育ませるメディアを成立させることは難しいのであろうか。

この分野には、まだチャンスがあると思う。僕がもう一人いれば、この分野やりたいかも。そして今年こそはピッティに友人と行きたいです。

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