IPOしたコロプラ:単なるSAPではなくO2Oも見据え、buyを推奨

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本誌では注目のIPO銘柄の今後の展望も時折お送りしている。師走は毎年大型銘柄を輩出する。昨年はリブセンス、今年はコロプラ。既に400億円近い時価総額となっており、注目度の高さが伺えるコロプラの今後の可能性を本稿で探る。

まず前提条件として、コロプラは単なるSAPではない。「コロニーな生活」を中心とした位置情報ゲームで取得してO2Oやビッグデータ事業への参入を視野に入れている。SAP+O2O銘柄として見るべきであろう。

本稿はコロプラの「成長可能性に関する説明資料」(本稿では「コロプラ成長資料」と略す)を読み解いて執筆した。元大和総研の著名アナリストである長谷部氏がCSOを務めるだけあり、株価対策は万全というところであろうか。この資料は投資判断にとても役立つものであった。コロプラ成長資料を別タブで開いた上で、本稿を閲覧することをお勧めする。

一部では時価総額が高すぎるという声もあるが、株価はあくまで将来の期待を込めて形成されるものであり、現在の業績だけが形成材料ではない。

The Startup投資調査部の4時間に渡る(執筆に掛かった時間)調査を鑑み、下記のレーティングを発表する。

■コロプラ社:レーティング(2012/12/17)

投資判断:buy
目標株価:6,500-7,000円(2013年内を目標と置く)
判断理由:自社PFであるKuma the Bearを活かした相対的に安定性の高いSAP事業+O2O&ビッグデータ関連の最先端企業としての可能性

SAPとしての今後の方向性:Kuma the Bear PFとは?

まずはSAPとしてのコロプラを他社と比較してみよう。SAP関連銘柄はここ最近動きが激しい。

相対的に見てKlabの時価総額の低さが気になるが、来期の2Qまで赤字予想となっており、通期で営業利益50億の予想となっている。来期の3Qと4Qで何が起こると想定しているか読み解き難いが、来期予測の確実性に嫌気が差され、株価が低迷していると思われる。エイチームはSAPとして良いベンチマークとなるだろうが、SAP事業以外も手掛けるため、純粋な数字比較はし難い。

コロプラはmobageやGREEというSNSではなく、あくまでiOSとAndroidを主戦場している点が他のSAPと比較して特徴的だ。Google米国本社から「トップディベロッパー」の称号ももらっている(日本企業では珍しいようだ)米国のみならず今後は積極的に海外展開していく模様だ。

SNSプラットフォームに依存しない代わりに、自社でライトゲームを集めたKuma the Bearというプラットフォーム(略称:PF)を構築し、ここを広告媒体と位置づけている(コロプラ成長資料P20)。Kuma the Bearからオンラインアプリでマネタイズするという絵だ。この戦略はサイバーエージェントの「コミュニティアプリを客寄せパンダに、ソーシャルゲームで課金」の図とよくに似ている。

他のSNSに依存しないプラットフォームが上手くワークすれば安定的な収益源となるであろう。一見、同じSAPとしてエイチームやKlabと比較されそうだが、他のSNSに依存していない点が大きく違うと強調しておく。他のSNSに依存するSAPよりも収益の安定性の高さを見込めると判断する。

Foursuaqreの最新の資金調達は苦戦:アップルのM&Aも

SAPとして相対的に盤石になり得る構造を持つコロプラだが、「コロニーの生活」から出発したコロプラの真のオリジナリティは「位置情報」である。コロプラ成長資料P26にO2O、P27にビッグデータ関連戦略が掲載されている。すぐの収益化が難しいからか、P28の「今後の事業展開」でもここに該当する「リアル関連・新規事業」の売上比率は控えめである。コロプラのO2O・ビッグデータ事業を深堀する前に、位置情報の類似サービスといえるFoursuaqreの現況をおさらいしょう。

■Foursuaqreの現況

時価総額:約500億円($600M)Series Cで$50M調達(2011/6)
ユーザー数:2,500万(2012/10時点)
総チェックイン数:10億回(2011/9時点)

■Foursuaqreに関する注目ニュース

チェックインではなく閲覧するだけのユーザーが増えている(2012/3)
マルチプルにYelpを置かれ、Series Dの交渉が苦戦中?(2012/11)
Appleによる買収の噂(2012/12)

twitterにおいても「ツイートするユーザーからツイートを見るユーザーが増えた」という行動の変化が2009年に起こったことを指摘し、Foursuaqreにおいても「チェックインするユーザーからVenue情報を閲覧するユーザーが増えた」という指摘が上記の記事④にある。

地域情報の閲覧という観点でのVenue情報は米国においてはYelpと近しいとされ、マルチプルでおいた際にYelpの時価総額は$1.23B(2012/12/16現在)となっており、記事⑤を元にした数字を比較すると下記となる。下記の数字を元にすると、Yelpと比べてFoursuaqreは割高であると判断され、Series DのValuationに難色を示す投資家が多いという。

Yelpは売上$121M、EBITDAは$-11.2Mとなっている。明確なマネタイズモデルが見えないFoursuaqreに対して、類似のYelpでも厳しそうなんだからねえ…という気持ちは理解できる。そこで記事⑥のアップルによる買収の噂も出ているわけだが、この買収の可能性は高いのではないかと私は考える。世界一の画像のトラフィックエンジンであったinstagramをFacebookが買収したパターンとかなり似ており、iOSにfoursquareの情報を組み込むシナジーが期待できる。現状はYelpの情報をAppleは使っているようだが(この辺、記事に書いてある通りではあるが)

マルチプルと収益モデルの観点でファイナンスが行き詰った今、Appleがいくらで買うのかに注目が集まる。Series Dは実施されず、買収になるのではないか。

コロプラの位置情報データの換金可能性

Foursauqreの状況を鑑みると、位置情報自体に価値はあるものの、それ単独での収益化が如何に難しいかという貴重なレッスンとなった。しかし、コロプラの位置情報やO2OはFoursauqreと異なる展開となるであろう。両社の特性を比べてると下記となる。

同じ位置情報関連サービスだが、わりと真逆の性質を持っていることが伺える。ゲームを起点としたO2Oで提携拠点への送客で既に売上を上げているだろう。今年東急百貨店吉祥寺店で催されたコロプラ物産展には初日だけで1万人の来場があったという。大型の提携先からは上手くマネタイズできそうだ。ただし、スケーラビリティがどれほどあるかは未知数だ。

一方でFoursauqreはメイヤーへの店舗からの特典があるものの、現状ではVenue(店舗)から上手く課金する仕組みを上手く作れていない。今後、ここに着手するのかが見物だ。(Appleに買われると私は思うが)

ビッグデータに関してはコロプラはまずCSR的にデータを提供していくという。ビッグデータの活かした方はコロプラに限らず悩ましいが、このデータをどうマネタイズに活かすか注目していきたい。「O2O・ビッグデータ関連」の事業の成否がコロプラの伸び白を左右するといっても過言ではない。不確定要素が高いが、過去の送客力を鑑みて、マネタイズ・ポテンシャルが高いと判断する。ちなみにこの「リアル分野」では「未来の収益化を目指す」とコロプラ成長資料P7に明記がある。

以上です。業務委託などでインターネットセクターの個別銘柄のレポーティングや投資顧問の展開も検討中です。ご興味のある方はFBでYuhei Umeki宛にご連絡下さい。

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