国内教育系スタートアップへの注目度が日増しに高まっているのを感じます。この分野を米国ではeducation+technologyで「EdTech」と呼ぶようですね。国内でもEdTech Japanというイベントが行われており、今後市場が加熱して行くことが予想されます。旧くは「eラーニング」と呼ばれた分野ですが、本稿では国内教育系スタートアップのプレイヤーの紹介、および事業運営上のポイントを考察します。
月額課金が王道の語学系スタートアップ
まずは教育といえば王道の語学系からです。レアジョブに代表されるSkypeオンライン英会話の類似サービスが増えています。
レアジョブに関しては本誌でも2011年2月という本誌立ち上げ直後くらいの時期に「コスト構造や月額課金モデルから考察するレアジョブのビジネスモデル」という記事を発表しており、裏話としては一時期はこの記事が検索ワード「レアジョブ」で10位以内だったこともあり、トラフィックを稼がせていただきましたw
レアジョブに関しては来年辺りのIPOも噂されており、私の周りでもユーザーが実際それなりにいるので、手堅くIPOするのではないかと思われます。同様のモデルでラングリッチとGroupon vs ポンパレを思い起こさせる熾烈?なプロモーション合戦は記憶に新しいですが、ほぼ事業モデルが同じなので、レアジョブがIPO後にTVCMに資金投下すれば、あっさり勝負がつきそうだなと。先行者優位性が活きるモデルかと思います。同様のスキームのスペイン語会話のサービスもあったのでご紹介までに。
■その他英語学習
・Best Teacher
この中では異色なのがBest teacher。「自分で教材を作るオンライン英会話」がコンセプト。いきなりオンライン英会話というのではなく、英会話前にスクリプトを作ったり、会話後にログを残してPDCAを回すなど、会話を構成する要素のSpeaking&Listening以外のReading&Writingも通した総合英語学習で語学を上達させようという試み。少しプロダクトが複雑に見えるため、エントリーハードルは高いですが、会話を軸にPDCAを回すという学習方法はたしかに理に適っていると思います。今後のスケールに期待です。
ワンショット課金が現在は主流の知育系スタートアップ
「知育」という言葉を使われている場合は、幼児〜小学生低学年くらいが利用者のイメージがありますね。小さい子供のおもちゃとしてiPadが相性が良いからか、iPadアプリでこの分野を攻めている企業が目立ちます。
・スマートエデュケーション (おやこでリズムえほん)
・ファンタムスティック(Kinderpan:10月末リリース予定のアプリ)
これらのiPadを中心としたアプリサービスはフリーミアムモデルで、スマートエデュケーションの「スマほん」を見たところ、デジタルコンテンツ課金ですね。絵本をその音読も含めたデジタルコンテンツにして課金させる仕組みです。ファンタムスティックのKinderpanもデモを少し見せて頂きましたが、非常にクリエイティブのレベルが高く驚きました。
クリエイティブリッチなサービスが多い印象がありますね。年少の子供は
月額課金よりもデジタルコンテンツの従量課金の方が相性が良いのでしょうか。スマほんの例で考えると、デジタルコンテンツ利用し放題にしてもアプリの月額課金だと1,000円以上は全ジャンル的に支払うハードルが高い気がします。結局は従量課金にした方が、売上を立てやすいのかもしれません。この辺はアプリベースとwebベースという違いはありそうです。
トランザクション課金が主流?習い事系スタートアップ
習い事系では世界的なCtoCサービスの権威であるCytaも含み、Online to Offlineとなるサービスが多いようですね。Onlineで先生を見つけ、Offlineで習いに行くという感じ。
Cytaがトランザクションベースでの手数料モデルに対し、私も最近知ったサービス、趣味なびはシステム利用料として月額の広告モデルを展開し、全国8,000カ所くらいの教室を押さえているとか。
習い事は継続性が高く、LTVが伸びればトランザクションベースで課金し続けるのはなかなか美味しいモデルです。月額の広告もスケーラブルなプラットフォームとして機能していれば十分アリだなと。
ユニークなモデルのその他教育系スタートアップ
実は他にプレイヤーが少ない(いない?)ためカテゴライズしきれない教育系スタートアップがこの分野では面白いと考えています。
まず有名どころでいうとschoo。オンライン動画授業プラットフォームで「WEBに誕生した、新しい学校のカタチ」がコンセプト。
バラエイティに富んだ講師が多く、授業の感想を授業のページに皆でコメントし、受講者間で学びを共有することで、学習効果を見込む。(視聴者⇒コメントの転換率はわりと高いと聞いている)という点も好評。
このモデルはコンテンツプロバイダーである魅力的な講師をどれだけ獲得して講義を展開できるかがポイントでしょう。全体をパッケージングして月額課金に持っていくといいのではないかなと思います。cakesの動画ラーニング版のイメージ。受講者数を低減してゼミのような形態も面白いかもしれません。ゼミ的な形態は、私もサロンの次の打ち手として考えているところです。
Codeacademyもよく名前を聞きますね。あ、これはNY発だったようですねw ドンマイということでシレっと入れておきます。日本語対応も一部だけしてますしね。「コードの書き方をインタラクティブに学ぶ」というプログラミング家庭教師みたいなものでしょうか。エンジニアの需要も急拡大する中、エンジニア教育という分野には大きな成長ポテンシャルを感じますね。
最後にmana.bo。まだあまりメジャーではないでしょうが、KDDI無限ラボの3期に採択されているようです。「オンタイム学習プラットフォーム」と謳っていますが、オンライン家庭教師(中学生高校生向け)のプラットフォームといえます。先生は大学生で生徒は中高生。既存の家庭教師市場をオンラインでリプレイスを図るというモデル。一度話を伺ったことがあるのですが、オンライン英会話と違い、家庭教師はほぼ固定制の方が生徒にとっては良いと思うので、できるだけ固定の先生とマッチングできた方が良いかと思います。数学の難問などにワンショットで答えるQ&Aサイトにも見えるのですが、どちらの方向に進むのか注目しています。
教育系スタートアップ、ベストなマネタイズモデルは?
教育というと我々は幼い頃からしまじろうくんに馴染みがあり、習い事も月謝制が多いため、月額課金に抵抗のある方は少なくないのではないだろうか。ゲームなどのエンターテイメントと異なり、特に大人であれば教育への投資に対する明確なROIを求めて、合理的な投資判断をする人が少なくないでしょう。
結局はそのサービスを受けながら自分が努力しないと成果は得られにくいでしょうが、教育というものに対して人は投資しやすく、課金ハードルが低い習性にあると思います。Cytaのようなトランザクションベースの手数料モデルも良いですが、月額パッケージ課金にしてLTVを伸ばしていくのが王道のマネタイズではないでしょうか。
どうにかして月額パッケージ型に持ち込める余地はあるか(無理にとはいわず、他の良いモデルがあればいいですが)市場規模は十分か(教育分野は既存市場が大きいので注目度が高いのだと思われますが)。最近注目され始めているのは、技術革新といえばiPadくらいで、ソーシャルメディアの浸透と今回ご紹介したビジネスモデルは親和性のない場合が多く、なぜ最近増えてきているのかは説明しきれません。
そんな中で「ソーシャルラーニング」に関して私は期待しています。schooやCodeacademyはソーシャルラーニングの一種といえるでしょうが、ソーシャルを活かし切る余地はまだまだあると思います。ソーシャル×教育で革新的なサービスが出てくるか否か、今後、注目していきます。