久々に結構気合入った記事です。
2016年においては、AIやIoT、FinTech、動画あたりがバズワード化していますが、スタートアップ業界では毎年何かしらのバズワードが出てきて、それに付随する企業が生まれてきました。そこで本誌開始の2011年から2014年までのバズワードと思われる6業界に対して、2016年7月時点での戦績を実績ベースでの記載と今後の予測、そして当時の本誌予測の成否を検証します。
対象業界:6分野
対象企業:当該分野での億調達企業ないしは本誌が勝手に考えるリーディングカンパニー
写真:8社中2社はM&Aだが真の勝者はゼロ
まずは写真サービスから。2012年の億単位調達が多かった気がします。主要プレイヤーは下記。
:右側の額はざっくりの予測累計調達金額。企業順は、IPO、売却、調達額順。
コミュニティーファクトリー:yahooへ売却
ビットセラー:KDDIへ売却
リプレックス:8億
Snapeee:6.5億
TOLOTO:5億
miil:2.4億
シナモン:1.5億
papelook:1.2億
関連記事:CAスマホアプリ vs スタートアップ :群雄割拠の写真アプリ編(2012.7.2)
上記記事より一部抜粋
単独でIPOまでいくほどの収益を確保するのは難しく、プラットフォームへのトラフィックエンジンとして役割を果たすとことを期待され、プラットフォームへの売却路線が適当であろう。
当時の予測通り、良くてM&AでのEXITでした。Instagramがここまで当たっていることを見ると、決して全くマネタイズできない市場ではなかったはずですが、「ぶっちぎりの1位」とならないと、勝てない市場だったのではないでしょうか。
EdTech:14社中、IPO1社、M&A4社だが…
何気にプレイヤー多かったですね。
レアジョブ:IPO
Quipper:リクルートへ売却
コードキャンプ:フューチャーアーキテクトへ売却
Tech Academy:ユナイテッドへ売却
ベストティーチャー:代ゼミへ売却
スマートエデュケーション:20億
スクー:5億
スタディープラス:4億
アオイゼミ:4億
マナボ:3.3億
ライフイズテック:3.1億
ストリートアカデミー:2.5億
okPanda :1.5億
FLEMDS:1億
関連記事:しまじろうは、ゾンビ化するEdTechたちを買収するだろうか(2014.4.5)
一部抜粋。
市場が細分化されているのでユーザー層が限られますし、収益モデルも月額課金以外スケーラブルなものはありません。(以下略)多くのEdTechサービスが会員数などのKPIが思うように伸びず、シリーズAに進めないと読んでいます。進めたとしても「俺たちの〜」的なファンドからの調達になるでしょう。
案外シリーズAには進めたという点は予測が外れていますが、「スケーラブルではない」という点は間違っていないかと。
IPOやM&Aはあったものの、大勝ちしているとは言い難いこの市場。まだEXITしていないプレイヤー群からも、IPOで時価総額100億以上付けそうなところは正直見当たらない。ポイントとしては、valuationを上げすぎずに10億くらいで売却できるか。20億以上のvaluationが現時点でついていると、出口に苦しみそうな印象。
C2C:100億売却2社、有望IPO1社
今回の6分野で勝率が一番高そうな分野はここでした。
エウレカ:IACへ売却
チケットキャンプ:mixiへ売却
Cyta:クックパッドへ売却
ネットマーケティング:IPO取り消し
メルカリ:125億
フリル:10億
Creema:9億
ジモティー:7.6億
ココナラ:7億
チケットストリート:3億
10sec:1.5億
C2Cというと「フリマ」が代表的に見えますが、チケット売買やデーティングもC2Cカウントになります。
今回選定はデーティング2社、チケット2社、フリマ2社、その他5社。メルカリはIPO確実、10secは清算済みか。最近気になるのは、Creema、ジモティー、ココナラの3社。C2Cは時間かかるといわれており、いずれも2012年ごろからあるサービス。しかしここにきて調子が上がってきているという説を耳にします。
一般的に時間がかかるといわれているのに、メルカリがこれほどのスピードで立ち上げた凄まじさが際立ちますが。上記3社は当時私は回収不能予測を出していますが、その予測が覆るか、楽しみにウォッチします。
バーティカルコマース:M&A2社、IPO見込みは3社か?
ルクサ:KDDIへ売却
MUSE&CO :mixiへ売却
ラクスル:58億
ロコンド:40億?
スターフェスティバル:21億
Origami:20億
oh my glasses:13億
漫画全巻.com:4.7億
MONOCO:3.6億
ダイヤモンドヘッド:2.7億
LASO:2億
関連記事:バーティカルコマースが加熱する理由(2013.6.5)
一部抜粋。
だが、ジャンル特化ではどこまで伸びるのか(スケール)が論点。IPOまではいくがその後の成長戦略は海外展開か商品の横展開という形になり、IPO後のエクイティストーリーが描きにくく、機関投資家の資金が集まりにくいと推測する。
2013年ごろの大型調達が目立ちました。ルクサやMUSE&COはサービスの使われ具合を見ると、成功したM&Aには思えません。IPO見込みとして、一応このジャンルにカウントしたラクスル、そしてロコンド、スターフェスティバルの3社が想定されます。
当時このジャンルの記事を書いた際に、「投資家が金を突っ込んで最低限IPOまで持って行きやすそうだから」投資するのではないか、というロジックでした。一定の広告を投下すれば、回収しやすいという、方程式があらゆるジャンルの中で最もシンプルでイージーである、と私が判断したためです。
一方で上場企業軍では、BUYMAのエニグモが300億前後の時価総額から、今後抜け出せるかが論点(BUYMAはC2Cカウントできなくもないが)で、オイシックスは時価総額100億前半から上がってくる気配が見えませんね。上記3社の上場後のエクイティストーリーに注目です。他企業のIPOは上記に記載している企業群からはないと予想します。
クラウドソーシング:クラウドワークスのIPO後は…?
クラウドワークス:IPO
Gengo:約20億
ランサーズ:12.5億
Viibar:10億
うるる:6.6億
ココン:4億
MUGEN UP:2.5億
八楽:1億
Distty: 1.8億
AdFlow:1億
関連記事:クラウドソーシング2強、勝つのはどっち?(2013.12.27)
一部抜粋。
新しい働き方を実現するクラウドソーシングサービスの社会的意義は高いが、マッチング手数料ビジネスであり、ビジネスモデル上は利益が出にくい。ゆえに市場のスケールとともに市場シェアを拡大したトップの事業者1、2社が勝つような市場構造であると思われる。
昨今は全く触れることがなくなった、クラウドソーシングネタ。上記東洋経済オンラインへの寄稿記事通り、クラウドワークスがいち早くIPOしたが、その後時価総額は80億前後と奮わない。先行者の状況を鑑みてか、ランサーズのIPOが近いという説はあまり耳にせず、ジャンル特化型クラウドソーシングサービスも苦戦していると聞く。
ここの市場は今後ランサーズがどういう資本政策を取ってくるのかと、地味なうるるが案外サクッと上場してリアルワールド的な立ち位置(それでも時価総額50億前後)となるかもしれない。しかし、トッププレイヤーでも時価総額100億付かない現状なため、この市場への期待値は低いと思われる。文字通り「バズワード」だった感が否めない。
キュレーションアプリ:GunosyIPO、他IPO見込み2社?
Gunosy:IPO
スマートニュース:80億
antenna*:20億
NewsPicks:10億
Vingow:数億
カメリオ:0.5億
サービス名で記載しました。この領域、プレイヤーは少ないですが2014年に局所的に一気に立ち上がりました。antenna*は上場以降なし、NewsPicksは親会社のユーザベースでのIPOが見込まれますが、スマートニュースの行く末が気がかりです。
2016.6にまた36億の資金調達を実施しましたが、既存株主のGREEがこのラウンドで少し売却している説もあり、Gunosyより売上は低いと言われている中、未上場でGunosyの2倍以上のvaluationが付いているロジックが私には理解できません。無事IPOまでいけるのか、行けた際の時価総額は?
キュレーションアプリは基本この4社の戦いで、2014年当時からその位置付けに大きな変化はないでしょう。
以上です。最初、8分野をお届けしようかと思いましたが、「クラウドファンディング」はプレイヤー数のわりに、ビジネスとしてスケーラブルなところが皆無。本誌でよく登場する「キュレーションメディア」は、MERYが首位で、Locariを提供するワンダーシェイクが追い上げる構造(直近では4.4億調達で推定時価総額27.8億)となっているというくらいで、目新しいトピックはなかったので割愛しました。
最後に総括として、6分野の市場的な魅力を。
C2C:A(50%越え?)
→時間はかかるが今回の調査ではもっともスケールが効く分野だった
キュレーションアプリ:A(50%越え?)
→競争激化前に資金調達合戦で勝者が出た。必要性が高いサービスで、広告売上もつきやすい
バーティカルコマース:B(20-30%程度)
→M&Aは成功とはいえないが、上位3社はIPOまではいければ(VCにとっては)悪くはない市場
EdTech:C(ビジネスとしては0%に近いが、VC回収できてそうなのは30%程度)
→残り銘柄からIPOで100億以上時価総額がつきそうな企業は見当たらない。マネタイズが厳しい市場
クラウドソーシング:C(10-20%程度)
→市場の規模感とそこに付随するマネタイズボリュームが乏しく、厳しい
写真:D(0%に近い)
→ほぼ勝者がいなくて論外な市場
以上です。
2016年におけるバズワード分野、AI、IoT、FinTech、動画、以外にありましたでしょうか?その辺も今後考察していきますので、この分野も流行ってそうだよね。というのがあれば是非ご一報ください。
バズワード分野は、上位は数社の勝者が出ますが、下位は1社も勝者が出ないことは、教訓にしておいて良いのではと思います。