インフルエンサーのビジネスモデルの未来:YouTuberの有料サブスク化も

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2019年もインフルエンサーの勢力が増していく年になるかと思います。ポジショントークでもなく、「個が強くなる」こと自体が不可逆な流れです。

HEY!HEY!HEY!!

インフルエンサーは大別すると、アウトプットの種類に応じて3つ存在します。今後は「音声系」も入ってきそうですが、まだ時期尚早かなと。

・テキスト系:twitter、ブロガー、note、オンラインサロン
・写真系:インスタグラマー
・動画系:YouTuber、SHOWROOM

全てやっている人もいますが、自分が最も得意なアウトプット手法や、これをベースに発展していった。というスタイルがあるかと思います。

テキスト系が最も歴史が古く、写真系や動画系はここ近年の話です。

インフルエンサービジネスのほとんどは広告収益モデルです。

インフルエンサー=トラフィックを持つメディア、と捉えることができるので、メディアビジネスと同じモデルが適用できます。

そうなのであれば、課金モデルも適用できるはずです。

一部のファッショニスタ系インスタグラマーは、自分のブランドを持ち洋服を販売しています。メジャーどころは、佐々木希さんのアンティミテとか。

こういう物販モデルが今後どんどん出てくるかと思います。今回は論点からズレるので深くは触れませんが、インフルエンサーによるスモールビジネスの勃興も、Shopifyのスケールを後押しするでしょう。

物販だけでなく、コンテンツそのものを売るサブスクリプションモデルで成功しているメディア企業は国内でもいくつかあります。

インフルエンサービジネスをメディアビジネスとして捉えると、収益源がバランスよく多角化できていた方が好ましいですが、個人的にはサブスクをベースとして広告と物販でアップサイドを取るモデルだと理想的です。広告と物販に比べて、サブスクの方が収益が安定しやすいからです。

本稿ではインフルエンサーがサブスクモデルで成功するにはどんな思考過程である必要があるのか。将来的にサブスクモデルで成功するインフルエンサーはどうやったら増えるのかなどについて考察します。

8,000文字以上のボリュームがあるので、有料記事にしても良かったのですが、多くのインフルエンサーがこれを読み、自らの戦略の参考にしてくれたら嬉しいなと思ったので、無料で出します。

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☆目次

1.ビジネスモデルに基づくコンテンツ量による価値の問題
2.NewsPicksが儲かっているのにオリジナル記事を増やさない理由
3.twitter→サロンCVRは梅木がはあちゅうの10-25倍程度
4.YouTuberの有料サブスクチャンネルが開設される?
5.まとめ:インフルエンサーが考えておくべきこと

☆ターゲット

メイン:中級以上のインフルエンサー
サブ:インフルエンサービジネスの未来に関心がある方

ビジネスモデルに基づくコンテンツ量による価値の問題

インフルエンサーは何かしらのコンテンツを発信しており、それを定期的に視聴したいユーザーがいる。ゆえに、インフルエンサーはある種のメディアビジネスです。

冒頭で述べたとおり、ほとんどのインフルエンサーは広告収益モデル。

広告収益モデルとは、純広タイアップが取れない限りは、アドセンスによるページ数や再生回数に応じた収益がメインです。アフィリエイトなどもあるでしょうが。

インスタグラマーの場合は、フォロワー数に単価が掛け算されて広告費が決まります。10万フォロワーなら、単価0.8円掛けて、8万円。

インターネットの場合、「誌面の都合」がないため、広告スペースは無限です。コンテンツを作れば作るほど広告機会が生まれ、広告収益が伸びるため、広告収益モデルのインフルエンサーは「コンテンツの量産」という罠に陥りがちです。

この「コンテンツの量産」というのは、実はユーザー視点で考えると「量が多いことは必ずしも良いことである」とはならないと私は考えます。

ユーザーも日々様々なコンテンツに触れているため、いくらお気に入りのインフルエンサーでも、コンテンツ量が多すぎると「ウザいな」と感じたりするのではないでしょうか。私は感じます。

インフルエンサー視点で考えても、コンテンツの量産は自身の広告ポテンシャルを最大化する行為ではあるのですが、その人自身のコンテンツの希少性が損なわれるため、「価値」という観点では目減りしていくリスクも抱えています。

NPが儲かっているのにオリジナル記事を増やさない理由

インフルエンサーの話から、メディアビジネスに次元を昇華させて考えてみましょう。コンテンツ量が多いメディアが成立して、コンテンツ量が少ないメディアは成立しないのでしょうか。

身近な例として面白いと感じるのは、NewsPicksです。推計も含めた事業数値は下記の通りです。

☆NewsPicks事業

有料会員数:約8万人
月額課金額:1,500円
月商:1.2億円(上記3つはIRから)
月のオリジナル記事本数:約200本(下記5つは推計)
記事制作単価:平均3万円
内部編集者数:10名
編集者人月単価:70万円
制作コスト合計:1,300万円(記事600万円+編集700万円)

厳密いうと、WSJなど提携媒体への支払いがあるはずなので、売上原価はもっとかかっているはずです。

しかし、オリジナル記事の制作原価を2倍確保して、コンテンツを量を2倍にする余力は全然ありそうです。

ですがNewsPicksはコンテンツ量を2倍にすることはしないと思いますし、私が運営していてもコンテンツ量を増やしません。クオーツを買収したことで、クオーツのコンテンツが増えるというのはあるでしょうが。

実はコンテンツ量を増やしたところでさほど急激に会員は増えません。むしろ継続不能なペースでコンテンツを量産して既存ユーザーの期待値を上げてしまうと、本数が減った時に満足度下がり、解約され、ライフタイム下がるる予想します。

個人的には、「腹七分目」くらいの量がユーザーにとっての適量であり、ライフタイムが最大化されるのではないかと思います。

喩えるならば、提供される料理の品数が多いレストランが必ずしもユーザー満足度が高いわけではないという話で、美味しい料理でも量が多すぎると食べたくなくなります。

ユーザーエンゲージメントを高めるための施策も、サブスクモデルでは重要なわけですが、インフルエンサーの広告ビジネスとコンテンツ量という論点で比較した時に、「量が多いことが必ずしも正解ではない」という事例として、NewsPicksの分量は参考になるのではないかと思いました。

サロンCVRは梅木がはあちゅうの10-25倍程度

インフルエンサービジネスにおいて、仮にサブスクモデルを採用したくとも、相当数のフォロワー数や購読者数がいないと難しいのではないかと思う人もいるかと思います。

実はこれは必ずしもそうではありません。私が身を以って証明しています。

バイネームの比較で恐縮ですが「はあちゅう」と梅木で比べてみましょう。

☆はあちゅう
twitterフォロワー数:約20万人
サロン会員数:200-500人(ちゅうもえ時代に2人で1,000人の時代があり、そこも参考値とした)
サロンCVR:0.1-0.25%

☆梅木
twitterフォロワー数:約2万人
サロン会員数:500名(ここ数年ほぼ500名)
サロンCVR:2.5%

もちろん、フォロワー数が少ない方がゴミアカウント比率も少ないため、結果的にCVRが高めに出やすいかと思います。それでも、10倍程度の差はあると言えそうです。

数十万人単位のフォロワー数がいないと、サブスクモデルは無理だ!ということにはなりません。上記の数字はおそらくnoteでも同じ感じだともいます。私はnoteの月額マガジン会員数は400名台前半で、CVR2%となります。

このCVRの差は主に二つの要因が考えられます。

1.ターゲットジャンルの違い

読者の方ならお分かりかと思いますが、私は主にスタートアップ業界をターゲットユーザーとしています。はあちゅうはほぼオールジャンルといえるでしょう。戦う市場が違います。

もちろん、フォロワー獲得スキルなどの力量がはあちゅうの方が圧倒的にあるとはいえ、私はオールジャンルターゲットはやりたくない。ニッチに絞った方がCVR自体が高まるというのは、普通の話だと思います。

2.コンテンツ量の違い

インフルエンサービジネスにおいて、今回一番伝えたい点です。

広告モデルのインフルエンサーは、コンテンツ量が多すぎることで自らの課金価値を毀損している可能性がある。という仮説を私は持っており、そのことにインフルエンサーは気づいていないのではないか。と思っています。

無料コンテンツを増やしすぎたことにより、コンテンツ量が多すぎて希少性が下がる。露出数は増えたので、課金コンテンツを出しても低いCVRでもそれなりのボリュームは取れるが、「フォロワー数の割に、この程度なの?」と疑問を感じる。というループにハマるのではないかと思います。これは、サブスクにトライした人じゃないとわからない話ではあると思いますが。

無料コンテンツは、多くの人に読まれたい!(ついでに広告収入欲しい!)というインフルエンサー心理があります。多くの人に読まれたいという気持ちは私にももちろんありますが、多くの読者に読まれることより、少ない読者でも役に立ったと感じてもらえることの方が嬉しいかもしれない。

ユーザー視点で考えても、無料コンテンツは有り難みを感じにくい。同じコンテンツでも、有料か無料かでユーザーの態度や感じ方が違うのではないでしょうか。そのコンテンツから吸収しようという姿勢が違う。

これは、書籍を自腹を出して買うか、立ち読みや借りて読むだけか。というので学びに違いがあるという指摘と同じロジックです。結果的に、有料コンテンツの方が(数は少ないですが)ユーザーのためになることもある。

なので、オールジャンル系のインフルエンサーでも、無料コンテンツ量をコントロールすることで、サブスクへのCVRは上げられるのではないか?という仮説を私は持っています。

コンテンツの大量生産は、インフルエンサーの「吉野家化現象」を引き起こしています。誰でも安価にコンテンツにありつけるということです。

一方でサブスク型を採用すると、必ずしもコンテンツ量を増やさなくとも、ターゲットにとって刺さるという意味で質が高く、広告売上のために量産する必要がありません。多くの客を取る必要がなく、高単価で利益率が高いモデルを確立するということで、「予約の取れない鮨屋」的なモデルになりえます。サブスクで重要なのは「期待値コントロール」です。

これらの考え方を極端にわかりやすくいうと「はあちゅうは吉野家、梅木は鮨さいとう」という真逆のビジネスモデルを取っていることになります。

これをタイトルに持ってこようと思ったのですが、刺激が強すぎるのでやめておきましたw disっている訳ではなく、ビジネスモデルの違いであり、吉野家も利益は出ているはずです。オペレーション大変そうだけど。。

YouTuberの有料サブスクチャンネルが開設される?

広告モデルが主流なインフルエンサービジネスの中で、サブスクモデルを追求するプレイヤーは多くありません。

私はたまたまサブスクが好き、かつニッチジャンルのためサブスクが向いていたのですが、おそらく日本のインフルエンサー(自分で言うのは嫌なんですが)の中で売上に占めるサブスク比率は最も高部類に入るのではないかと思います。

私のサブスクは「オンラインサロン」と「note」ですが、サロンでもこのTheStartupでも一部広告は入っていますが、おまけ程度ですね。

テキスト系インフルエンサーのサブスクモデルとしては、古くからは「メルマガ」がありましたが、もう衰退していっている気がします。

昨今は「オンラインサロン」(強調しろと言われたので頑張って強調しますが、「オンラインサロン」自体、私が最初です。2012年4月から)と「note月額マガジン」(2016年3月からやっていますが、単価高いマガジンとしては参入がかなり早いです)の二つが主流です。

しかし、写真と動画系のインフルエンサーによるサブスクモデルはまだほとんどありません。

InstagramとYouTubeが課金サービスを提供してくれる可能性もあります。

ですが、おそらく両プラットフォームにとっては、課金手数料より広告費の方がスケールしそうな気がします。冒頭で述べたとおり、メディアの理想のビジネスモデルは「収益源の多角化」ですが、プラットフォームの動向は読めません。YouTubeが広告スキップなどができる「YouTube Premium」を出したことは、インフルエンサーにとって朗報です。

仮に人気YouTuberが月額チャネルを開始したら、メディアの課金CVRは一般的に1-2%程度なので下記のような収益性が成り立つと考えます。

☆チャンネル登録数10万人のYouTuberの場合

★広告モデル
再生単価:0.15円
月間動画本数:30本
1本あたり平均再生回数:10万回
月間再生回数:300万回
月商:45万円

★課金モデル
月額課金単価:300円〜980円
月額課金登録CVR:1%
購読者数:1,000人
月商:30万円〜98万円

広告と課金、いい勝負ですね!w

厳密には再生回数は、過去動画のストックが多ければ加速していきますので、アップサイドがあります。

しつこいですが、メディアビジネスの理想は「収益源の多角化」です。

なので、全てのコンテンツをペイウォールで閉じなくても、8割のコンテンツは今まで通り無料で、2割をペイウォールへ。みたいにやると、広告収益が落ちるダメージを最大限にして、課金でアップサイドを取れます。

YouTuber、インスタグラマーは広告をベースとしたビジネスモデルが起点になってしまっているので、課金から始めることは難しくて、アップサイドを課金で取りに行く。というイメージで良いとは思います。

参考程度のサンプルですが「YouTubeチャネルの有料化」は全然あり得るのではないでしょうか。

YouTubeでYouTuberへのサブスク機能提供が始まった時、いち早くサブスク移行できるインフルエンサーはどれくらいいるのか。

サブスクに舵を切れるのは、広告収益にとらわれていない人。言い換えると、一時的に売上が落ちてでも、収益構造の転換のために長期的な視点を持って取り組める人です。

インフルエンサーは上場企業ほどの外圧がないでしょうが(事務所の外圧はあるかも)、目先の広告収入が目減りしていくことはなかなか耐え難いと思います。株でいう損切りと似た心理で、なかなかできることではない。

ですが、下記のアドビのような売上曲線(短期的に下がって、中期的に構造転換を経て売上が伸びる)を目指すことが、インフルエンサーのライフタイムバリューの最大化に間違いなく寄与するはずです。

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まとめ:インフルエンサーが考えておくべきこと

長くなりましたので、重要な4つの点をまとめましょう。

1.インフルエンサーのビジネスモデルのほとんどが広告であり、サブスクは少ない。だが、サブスクの方が安定性が高く収益源を多角化すべきである。

2.インフルエンサーによるサブスクが成り立つ条件に「ジャンル」と「コンテンツ量」が挙げられる。「コンテンツ量のコントロール」は全インフルエンサーに共通する課題であり、コンテンツの大量生産と無料ばら撒きで自らの価値を毀損している可能性がある点を認識した方が良い。(過激な言葉でいうと、ビッチなインフルエンサーに価値はない)

3.無料ユーザーの母数とサブスクへの課金CVRの相関はない。ゆえに、フォロワー数が一定規模に達していれば十分サブスクが成り立つ可能性がある。Mr.サブスクリプションの梅木が身を持って実証済み。

4.現在はテキスト系が主流だが、写真系と動画系にもサブスクの波は訪れうる。現実的にはYouTubeの有料チャンネルができ、無料チャンネルで10万人以上の登録者がいるYouTuberはサブスクが成り立つと予想する。ゆえに、サブスクの波が来た時に、すぐ対応できる準備をしておくべき。

ちなみに、YouTubeの有料チャンネル提供の開始時期の予想ですが、YouTube Premiumが日本で2018年12月から提供され、最初3ヶ月は無料開放。その後有料に転換しますが、 YouTube Premiumが一定の手応えがあれば、2019年末や2020年に入ったあたりで、ローンチしてきてもおかしくないと考えます。

ちなみに、イケハヤ氏はそれを見込んでいるのかわかりませんが、YouTuberシフトを進めており、月100万単位の広告費を突っ込んでいるそうですが、登録社数が数十万人いけば、その広告費は長期的にサブスクでペイできる可能性があります。

加えて、写真系動画系でいうと、Instagram、YouTubeと言うプラットフォームの外にサブスクサービスを作ってしまう手もある。

オンラインサロンの場合、サービスは外にあって、Facebookグループを使用したのが、スケールにおいて最大の重要な要因と感じる。

これが、Facebook外の独自プラットフォームの場合、そこをわざわざ訪れなければならず、サロンのためだけに訪れるようにはならない。Facebook上で展開されているから、アテンションを惹きつけることができ、結果的にユーザーは継続した。と私は考える。

noteに関しては写真や動画も対応しているので、インスタグラマーやYouTuberが「サブスクの実験場所」としてnoteをチョイスするのは良いと思う。

ただ、InstagramやYouTubeという慣れ親しんだプラットフォームでインフルエンサーのコンテンツを楽しんでいるユーザーにとっては、他プラットフォームへの移行というのはよほどのファンではないと難しく、ごっそり移行する場合は、相当な離脱率を覚悟しなければならない。

以上、インフルエンサーのビジネスモデルの未来の考察でした。

現状もモデルに胡座をかかず、自分にとって理想的で然るべき収益モデルは何なのかを考え抜き、いち早くそれを実現するためのステップを踏み出せる人が勝者になるのではないでしょうか。

私はほとんどのインフルエンサーが広告モデルを取っていたことに対し、(たまたまですが)逆張りでサブスクモデルで地道に取り組んできました。

こういったご指摘もありますので、サブスクの中でも、「インフルエンサーのサブスク化」に関するご相談があれば、お受けしようかと思います。ビジネスとして。ご関心ある方は、私のFacebookメッセージ宛に。

twitterアカウントも「Mr.サブスクリプション」というサブネームをつけておきましたw

相談するまでではないけど、実数値を知りたいという方は、過去記事ですがご参考までに、私のビジネスモデルの「中身」です。未だに売れますね。ご関心のある方はどうぞ。

インフルエンサー関連ということで、インスタグラマーの収入に関する記事も置いておきます。

・投下労働時間と株式会社TheStartup2017年度決算から見る、梅木雄平の生産性:リンク

・10万フォロワーのインスタグラマーは◯◯◯万円稼いでいる!その収入だけで生活できるのか?:リンク



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