Chapter1-4:1号社員の採用

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Wantedlyでコンタクトした「コックパッド」に勤務する村上と、代官山蔦屋の『Anjin』で落ち合った。

はじめまして。梅田です。興味を持ってくださり、ありがとうございます。嬉しいです。しかし、コックパッドのような大手に勤めていれば安泰じゃないですか。キュレーションメディアに興味をお持ちとのことですが、なぜ興味をお持ちなんですか?

村上は淡々と、しかし鋭い意見を述べていった。

CGMのコックパッドの開発に携わっているのですが、投稿数が集まりすぎると逆に不便さを感じてきます。1つの商品に300もレビューがあっても全てに目を通す人は一握りです。それよりは記事単位で価値ある情報を発信した方が、ユーザーは使いやすいのではないかと。そういった新しいサービス作りに携わりたいですね。

あと、大手は安泰してはいますが、アップサイドが見込めないので、スタートアップで一発当てたいというのもありますね。

大手から抜け出して、スタートアップで一発当てたい。こんなサービスで億万長者になっているやつがいるんだから、自分でもできるはずだ。そんな気持ちは、自分がJPスタンレーを辞めて起業した時の気持ちと同じで、シンパシーを感じた。こんな優秀そうな人が最初から応募してくれるなんて、運が良い。

スタートアップの光と影 (1)

なるほど。わかりました。ぜひ村上さんにジョインいただきたいんですが、ご希望される条件はありますか?

スタートアップなので高い年収が望めないのはわかっています。現職より下がっても大丈夫です。ただ、株はほしいですね。

株か。村上は「コックパッド」に勤める33歳。多くの普通の会社員よりもその辺の事情には明るそうだ。

わかりました。少し考えさせてください。早めに連絡します。

まさか1号社員の採用段階から、資本政策の壁にぶち当たるとは思わなかった。資本政策に関する本や、人に話を聞いた限りでは「株式は血流のようなものであり、創業者の命の次に大事」らしい。一度割り当てた株式を買い戻したりする難易度は高いらしく、慎重にならざるを得ない。

上場前にストックオプションを主要役員に配布したら上場後多くの役員がすぐに去ってしまったという話や、エンジェル投資家の顔をして「共同創業」を持ちかけられ、なんとその株主に初期で30%強持たれてしまい、その後の金調達で行き詰ってしまった企業があったという話を記事で読んだこともあった。

しかし、自分一人で経営していくのが全く心細くないといえば嘘になる。村上は投資家なわけではないし、上場直前にストックオプションを発行するわけでもない。きちんと株を持ってもらったほうが、適正なインセンティブとなり、共に頑張ってくれるのではないか。熟考に熟考を重ね、10%持ってもらおうと考え、土曜日の22時にこうメールした。

村上さん、先日は有難うございました。会社自体はこれから登記する予定です。そこで、村上さんには10%株式を持っていただきたいと考えました。資本金は1,000万円で、僕が900万円、村上さんに100万円出資していただきたいです。給与は初年度は240万円でいかがでしょうか。ちなみに私は役員報酬は初年度は取りません。まだ売上も立たないわけですから。この条件で、ご検討頂けますと幸いです。

村上からは30分ほどですぐにレスが返ってきた。

承知しました。その条件でお願いできればと思います。現職を辞めるのに1か月かかりますので、来月からなら稼働できます。宜しくお願い致します。

あっさりしたものだった。村上にとっても大きな決断のはずだが、既に決心はついていたということなのだろうか。

男性向けキュレーションメディアを立ち上げることだけは決めていたが、サイト名も会社名もまだ決めていない。『Mary』みたいなシンプルな名前がいいだろう。何か強そうな名前がいい。そうだ『GORILLA』とかはどうだろうか。次回の打ち合わせで村上にも意見を聞いてみよう。



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