ファンドでも、VCでも、エンジェル投資家でもなく、「共同創業」

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最近またスタートアップ界隈の資本政策ネタがホットな話題のようである。
「投資家がスタートアップに出資して得る株式シェアはどれくらいが適切か」という談義をよくみかける。そこで今回はベンチャーの創業支援に携わるブレークスルーパートナーズ(以下BTP)の赤羽雄二氏に話を伺った。

あくまで「投資家ではなく、共同創業」

今回、私が赤羽氏に取材を敢行した背景には「株式の取得比率が高い」という噂を耳にしたからである。赤羽氏は「投資家」ではなくあくまでも「共同創業者」というスタンスを取っているようである。終始、投資家という表現を好んでいなかった。

直近では近日正式ローンチ予定とされるソーシャル婚活サイトのFriggに共同創業者として名を連ねている模様である。

今回、赤羽氏はブレークスルーキャンプby IMJというインキュベーションプログラムの実施を発表したが、受託開発力の高いIMJによるアプリやデザインの指導を受けやすい環境を整備するようであり、この点には私は好感を持った。

インキュベーションプログラムでは何社かのスタートアップが同じ空間を共にして切磋琢磨し時にはナレッジを共有することが期待されているが、実態ではその期待に応えることができていない場合も多いと聞くことがある。

特にエンジニアリングでのコモディティのナレッジ共有(例えばForsquareのAPIの導入の仕方)などは上手く実現すれば価値になり、スタートアップの時間の節約に寄与するであろう。

今後のインキュベーション内容の実現具合に注目が集まる。

赤羽氏などBTPの株式持分比率は最大で30%

通常のよくある国内のスタートアップの資本政策では、例えばファウンダーが100万円の資本金で創業して次のラウンドで300-500万円の資金をシードアクセラレーターから出資してもらう。この場合の投資家の持分比率はだいたい10-15%くらいが多いであろう。

赤羽氏の「共同創業」の資本政策では文字通りではあるが、例えば300万の資本金で創業する場合にファウンダーが210万で70%、赤羽氏が90万で30%を持つという形で創業し次のラウンドでシードアクセラレーターなり他のVCなりから資金を調達する。

赤羽氏は自分の志向とは裏腹にマーケットからは「投資家」と見られる場合があり、投資家として前者のケースでの持分30%であれば「たしかに比率が高い」と思われるだろう。共同創業により赤羽氏の手厚いサポートが得られるという。この「手厚いサポート」に関しては、私の客観的な判断に基づくと、他のシードアクセラレーターと大きな違いがあるかというと、そうとは判断し切れない。

「共同創業で得た株式を資本政策を重ねる度に売るつもりはあるのか 」と赤羽氏に訪ねたところ、次のラウンドではおろか、IPOしてもあまり売りたくないという。(シードアクセラレーターの中には例えば15%取得して、次のラウンドで半分売るというケースもある)あくまでも「世界で戦えるベンチャーの育成」がビジョンであるとのことだ

持分比率が高いとExit時に儲けたいのだろうとの推察が容易にできるが、私の感覚では不思議と日本のベンチャー投資家(ひいては共同創業者)には悪い意味でのキャピタルゲインに対する執着を感じない。

キャピタルゲインはあればあったで実績になり、特にファンドでは人の資金を運用しているため良い成績を出すことが求められる。しかし、お金以上に社会に対するインパクトを追求したい投資家が多いように思える。お金を稼ぎたいだけであれば投資銀行や上場株ででも稼げばいいだろう。(自由裁量で稼ぎたければ大きい額のファンドを回して管理報酬が充実する方を好む人もいるだろう)

よって赤羽氏のような個人での共同創業の場合は、持分比率は儲けたいというよりかはコミット(気合い)のようなものなのかもしれない。

共同創業者の持分比率は資本政策に影響を与えるのか?

初期の投資家(あるいは共同創業者)の持株比率が高いことによって、次のラウンドの資金調達のネックになることがあるという話もある。次のラウンドで投資する投資家が初期の投資家の持分比率が高すぎること(30%など)を好まないケースがあるということだ。

この件については私も一理あると考えており、ファーストラウンドやセカンドラウンドで投資する投資家に対する「万人ウケ」は期待できないであろう。

赤羽氏の共同創業実績によると、ソーシャルゲームのイストピカdangoが資金調達を成功させているようであり、必ずしも初期の共同創業者や投資家のシェアが高いからといって(実際のシェアは非公表)次のラウンドの資金調達ができないわけでないことの実証となっている。本当に良いスタートアップであれば、とにかく投資したいという投資家は山ほどいるであろう。

しかし、共同創業者や投資家の持分比率が高いことを好まない投資家もいることは事実であり、創業期のこうした資本政策によって中期や後期のラウンドでの機会を狭めている可能性が高いということは言及しておきたい。資本政策の不可逆性は心に留めておきたいところである。

蛇足:俺はこう思う

この手の株式シェアの話は起業家界隈では盛り上がる話ではある。資本政策如何では会社の存亡を大きく左右しうる。赤羽氏は「共同創業は結婚」某著名VCは「ファイナンスは結婚」という表現をしている。起業家は自分の会社を大きく飛躍させるために、どんな共同創業者や投資家と付き合えば良いのか。

起業家によっては複数のメンターにお世話になりたい場合から、1人のメンターに強力にバックアップして欲しい場合もあるだろう。もしくは資金だけ出してもらえればいいという場合もある。起業家にとって会社を飛躍させるために最適だと思える人から投資を受けるなり、迎え入れるなりをすればよいと思う。当たり前の話ではあるが、相性の問題である。

投資家からの投資ではなく、支援者との共同創業という形も存在する。次のラウンドでの資金調達の可能性は狭まるという見解を私は持ってはいるが、それを鑑みても共同創業で支援してもらいたいと感じるのであれば、良い選択肢ではないのだろうか。通常の投資家よりも手厚い「会社の一員」としてのサポートは得られやすいはずである。

起業家にはどの選択肢が自社にとって最適なのかを慎重に考えた「婚活」をオススメしたい。



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