「先行者優位性があった」と特定の市場を後から分析すると言われることが多々ありますが、ビジネス戦略上「先行者であること」によって、莫大な優位性を築くことが可能であることは、MBAに通わなくても広く知られていることであり、ビジネス書によく出てくる話ではあると思います。
しかし、周りを見るとこの「先行者であること」にこだわりを持つ人をあまり聞いたことがありません。むしろ最後発からいつも登場するサイバーエージェントみたいな企業が国内のインターネット業界ではありますが、先行者であることにこだわっているところはあったでしょうか。あったら教えていただきたいです。
スタートアップ業界ではたまに「参入が早すぎた!タイミングが悪かった」という話や「やっと時代が追いついてきたか!」とドヤる経営者もいますが、たしかに早ければいいとも限らず、参入タイミングは難しいもの。
しかし、一つヒットが出たら後追いでサービスが乱立するとか、2011年のGroupon戦争を思い出すわけですが、結局Grouponとポンパレの2つくらいしか生き残れず、買収価格は非公開ですが高級路線に特化したルクサもKDDIに買収されています。このGroupon戦争とキュレーションメディア戦争にデジャヴ感があるわけですが、なぜヒットしたものを後発で真似るプレイヤーがこんなに多いのか、私には理解できません。
キュレーションメディアはGrouponクローン同様に参入障壁は低いですが、大資本があるくらい差別化できる優位性がないと先行者に勝てないと思うのです(結果、後発のポンパレが生き残っている)。
私は海外経験があるわけではないので、海外との比較ではないのですが、「誰もやってないことやって、失敗したらどうしよう」とか「あいつが上手くやれたんだから、俺だってできるだろ」的なリスクを取らずにフォロワー的な発想の日本人のメンタリティが、「先行者優位」って言葉は聞いたことがあるけど、それを体現できない人がほとんどであることと直結しているのではないかと思います。
先行者優位って実際すごいんですよ。サロンという謎な市場を生み出したシナプスとかって技術的にも経営的な優位性も全く何もないと僕は3年間のサロン運営を通して感じるわけですが、先行者だから市場拡大の恩恵を最も受ける。極論すると、能力が低くても先行者であれば勝率が上がるのです。
成功している人の真似をしても得られる果実は少ない。それよりは馬鹿にされても「先行者であること」にこだわった方がいいと思います。馬鹿にされるならされた分だけラッキーです、先行者を馬鹿にする方がたいてい馬鹿ですから、それを指標にしてもいいくらい。
事業としての成否は「先行者である」だけではなく「市場の成熟タイミング」を見極めた上で、市場拡大期の手前で入ることが適切でしょうが、もっと「先行者優位」について我々はビジネス戦略の中で優先順位を上げて考えるべきであろうと感じました。
批判されるのが怖い。ではなく、誰もやったことがないことを先行してやっていれば批判されて当然。くらいのメンタリティが必要であり、意識だけ高いというのは最悪であります。とはいえ批判に耐えうるメンタリティを皆さんあまりお持ちではないでしょうから、先行者が賞賛される社会になることが、優れた先行者を多く生み出す土壌となるのだろうと思います。
先行者が必ず勝つ。と主張したいわけではなく、先行者優位性のメリットを肌で感じている人が少なく、ゆえに戦略オプションとして案外軽視されがちなのでは?それは日本人的メンタリティが多分に寄与しているからである。という問題提起でした。