mixiに節税効果はあるが、MUSE&Coに17億の買収価値はない

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mixiによるファンション系フラッシュコマース「MUSE&Co」の17.62億円での買収がスタートアップ界隈をざわつかせている。

このEXITに関しては本誌で2014年5月に発表したIVPファンドのリターン予測と大幅なズレがない数値だ。この記事の中でのMUSE&Coの項目を下記に抜粋する。

バーティカルコマースのアップサイドはかなり限定的なのでは?と本誌では以前から指摘しています。現に上場しているOisixでも売上高100億台前半のラインでコマースなので利益率もとても低い。上場ゴールになりやすい分野がバーティカルコマースで、未上場でのバーティカルコマースの筆頭といえるロコンドが上場してくるか否かに注目が集まります。

楽天やZOZOによる買収シナリオも想定しにくく、出口を求めにくい案件という印象。とはいえ回収に強いIVPです。強引に20-30億で売却を成立させ、2-3倍のリターンを手堅く出してくるのではないか。

出典:IVPファンドリターン予測記事(The Startup)

この「ファンドリターン予測シリーズ」は関係玄人各者から「読みが甘い」「優しすぎる」という指摘を受けています。1記事めだったこともあり、緩めにざっくり20億での売却予測ですが、今回は17.5億ということでシナリオ的にはほぼ想定通りです。

本誌ではコピペクランチのようにニュースリリースでは終わりません。この買収の妥当性について検証します。

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買い手側:17億の価値ある事業ではないが、節税効果ある

まず買い手となったmixiの視点で考えます。mixiはモンストのヒットもあり、2014年度の通期純利益だけで320億、現預金は2014.12時点で420億あり、要はお金持ちで金の使いどころがなくて困っていると思われる。

それどころか、MUSE&Co.は累損が約6億円ともいわれており、微々たるものではあるが、買収によって連結対象で累損を付けることができるため、ささやかな節税効果はある。

◆参考:花王のカネボウ買収による1,000億の節税効果

まず金持ちのmixiは節税したいというのと、儲かりすぎて17億など大したインパクトではないため、デューデリが緩めになったのではないかと本誌では仮説を立てる。

私はスタートアップのM&Aの実務に携わったこともあり、メディアとしても昨今のバリュエーション情報は毎日耳にする。その肌感覚を持って、事業シナジーは見込まずに単純な将来の期待値で図ると、MUSE&Coは17億で買収する価値がある事業とは到底いえないと断言する。

2014年3月期の売上は7.96億と発表されており、2015年3月期はそれを上回ることが予測される。ただし、コマースであるがゆえに利益率は相当低く、営業利益率にして先行投資期間が終わっても良くて20%程度だろう。既存のmixi自体はほぼ死んでいるためシナジーがあるとも思えず、この事業単体の期待値としては5年かかっても買収額の17億円の利益を回収することはかなり難しい。

節税やシナジーを加味して、Muse&Co関連でいくらの利益を回収できればこの買収は成功だったといえるのかはmixiにしかわからないが、事業単体としてみた時に17億円の利益は到底回収できないだろう。ただし、mixiはタレントバイが好きな会社だ。買収した会社の経営陣を前CEOの朝倉氏のように有効活用できれば、17億円は安い買い物であるという見方もできる。

売り手側:直近の時価総額は上がってない。苦しい状態か

次に売り手側の視点から考える。元々MUSE&CoはIVPが立ち上げたスタートアップだ。株主の構成比率はリリースに出ていたので貼っておく。

スクリーンショット 2015-02-19 18.31.29また、登記簿から各投資ラウンドのデータを集めた。

スクリーンショット 2015-02-19 18.41.52この辺から予想リターンも算出。

スクリーンショット 2015-02-19 18.47.332014年6月と12月のラウンドでは、公表されていないですが、TBSやアドウェイズが参加しているという噂を耳にしています。最後の方に入った株主は買収時にバリュエーションがほぼ据え置きであることから、雀の涙的リターンですね。

ちなみにIVPリターン予測の時に甘くしたなと思い、ITVリターン予測時には「回収不能」に分類していました。20億と回収不能の間くらいでDoneしたということで、本誌の予想はそこそこだったと思っていただければとw

IVP立ち上げディールのため社長の久保さんは大株主にはいません。一説によると保有比率は5%以下とのこと。成長企業であれば直近のバリュエーションから価格が上昇した上で売却され、既存株主全てにリターンがあるはずです。後期のラウンドはほぼ優先株で株主はダウンサイドリスクは回避していたものの、投資時とバリュエーションほぼ据え置きでの売却は、最低限既株主に損をさせないようにとのmixi側の配慮もあったと思われます。

こういった資本政策後期のバリュエーション推移からの売却時バリュエーションを見ると、mixi側も将来性を高く評価したわけではないといえます。

2014年6月12月に2億ずつの調達を繰り返したのが気になります。おそらくプロモーションに投下して溶かしてしまったのでしょう。Fab.comを彷彿とさせますね。

このディールでの最大のポイントはやはりIVPです。かなり厳しいディールでも、必ずプラスでクロージングする点に、生命力を感じます。ジモティーも似たような状況でした(まだ保有しているが事実上オプトに売却)。回収不能の負けディールを出さないことは重要です。

IVPの中国およびfreeeでの一発回収を祈りながら、筆を置きます。

バーティカルコマースのドナドナ売却案件が増えそうな2015年ですね。

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