マルチプル・バリュエーションという罠

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昨今の未上場企業の時価総額(以後バリュエーションと表記)高騰を受け、未上場で数十億円後半の資金調達や時価総額を付ける危険性という記事を書いたところ、そこそこ読まれました。

そもそも未上場企業はどうやってバリュエーションを算出しているのか。僕は投資銀行の出身ではないので専門的な突っ込んだ話は控えたいと思いますが、一般的にバリュエーションはDCF(ディスカウント・キャッシュフロー方式)とマルチプル(類似会社比準方式)の2つが使われる機会が多いと認識しています。

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(この本、学生時代にIBのジョブ前に読んでわかった気になるのが流行っていましたね…。僕は未だによくわからないw)

DCFは数年後の将来に稼ぎ得るであろう利益を元に現在価値に割り引いて算出する方法です。これは恋愛市場においては女性が男性を「あの人、医者だから40代には年収3,000万を越えて…だから現在の価値はこれくらいで他の女性からのアプローチもあるはずで…うーん、デートしとくか」というアプローチになります。

しかし、出来立てほやほやの未上場企業が将来稼ぎうる利益を推測する難易度、というかボラティリティは高く、上場企業ならまだしも未上場企業でDCFを元にバリュエーションを算出する例は減ってきているというか、あまりないというのが僕の認識です。

未上場企業ではマルチプルが採用される方が一般的かと思います。恋愛で喩えると女性が男性を「あの男、私の知り合いのけっこう可愛いA子と付き合ってるみたいだから、そんなに悪い銘柄ではないはず。なら口説かれてもまんざらでもないわ」という算出心理になります。

これは「グノシーのバリュエーションが100億なら、スマートニュースも100億でしょ!当然でしょ!」という世界です。結局他に良い算出方法がないので致し方ないのですが、未上場企業のバリュエーション算出は「ノリ」ですから、マルチプルの根拠となる類似会社のバリュエーションが「たしからしくない」場合が往々にしてあるのです。

恋愛で喩えると「けっこう可愛いA子が付き合っているから悪くない銘柄だと思っていた男が、借金まみれのDV野郎で、A子がダメ女なだけだった」となります。A子という価値を元にバリュエーションを算出しているので、A子の判断自体がたしからしくないとそのバリュエーションには狂いが出る。A子を過信することによるミスプライシングとなるということです。A子がダメ女であるというリスクも織り込んだ上でプライシングを考えるべき。

他に良い算出法がないから仕方ないともいえるのだが、前提が間違っている可能性を孕んでいるのが「マルチプル・バリュエーションの罠」といえる。僕も数短いVC経験時に「おい梅木、類似会社5社引っ張ってきてコンプス組め」と言われ、組んでいましたが、未上場企業各社のバリュエーションなんて「たしからしい」な世界なわけです。

一応マルチプルで見ること自体も必要ですが、本質的にはマルチプルに頼らずその事業の市場性や成長ポテンシャルを単独で見極める必要があるんじゃないかと思います。安易にマルチプルに逃げないことです。まあほんと、未上場企業のバリュエーションなんてノリと相場の世界だとは思いますけど。

もちろんプロの皆さんは多角的にデューデリした上でバリュエーションを算出されているかと思いますが、未上場企業のバリュエーション算出のプロセスや相場観はこうなっている。そして案外最後はマルチプルで決めちゃってるんじゃないのという意見で、それは結構危険ですよね。という話でした。

ファイナンス好きな方で、異論ある方いらっしゃればお待ちしております。

Gunosy木村さんも参加する、会員数252名突破のUmeki Salon
内容の参考:Gunosy木村氏の降臨、野村證券の近未来的なIPO時価格算定方法など

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