メディアコングロマリットのイードが上場承認:成長性はM&Aの成否次第

Pocket


知る人ぞ知るメディアコングロマリットのイードが上場する。RBB TODAYやレスポンスなどの老舗メディアを中心に、HPを見ると現在は23のメディアを運営しているようだ。

イード

本誌でも紹介したことがある伊勢丹との協業メディアであるFASHION HEADLINEのような自社で立ち上げたメディアもあるが、多くのメディアをM&Aしてきている。4つのメディアを抱えるオールアバウトエンファクトリー買収が直近では大きめの案件か。

スクリーンショット 2015-02-19 0.46.18上記はイードのHPから引用したものだが、メディアを軸にリサーチとECも展開する。決算上の事業セグメントは「CMP」「CMS」の二つに分かれ
上記でいう1と4がCMPに、2と3がCMSに分類される。

高い成長力を示すメディアはなく、業績は微増予想

スクリーンショット 2015-02-19 1.04.55まずはイードの主な事業数値を見よう。通期売上は36億で営業利益5億を予想している。メディア企業の割に営業利益率が13%程度と低めなのは、CMS事業の利益率の低さが響いている。

イード最大の特徴として、買収したメディアを全社共通のCMP(コンテンツマネジメントプラットフォーム)にぶち込み、ローコストオペレーションで買収後24ヶ月以内に単月黒字化を目指すというのがある。

昨今流行りのキュレーションメディアなどは傘下になく、上記に挙げた主力メディア3つもやや古臭いWeb2.0っぽいモノばかりだ。これらの主力サイトが来期2倍のPVを叩き出すことは想定しづらく、ゆえに2014通期から2015通期の1年での成長率も微増(売上110%営業利益115%程度)に留まる。

スクリーンショット 2015-02-19 1.09.09上記がイードの全メディア合計の月間PVなどの事業数値。

正直、上場して劇的な成長が見込まれるとそうでもなく、成長余力の観点から、比較的高いPERが付きやすい(インターネットメディア関連上場企業PERは30倍前後が多い)メディア銘柄であるにも限らず、IPO銘柄にありがちな「PER100倍」などには高騰しにくいであろう。下記をファイナンス予測数値と本誌では置く

■イード:ファイナンス予測数値

来期会社予測経常利益:3.2億円
公募株式総数:347,000
上場時発行済株式総数:4,787,100
本誌予測PER:40倍
本誌予測公募価格:2,650円
公募時時価総額:約120億円
調達額:約9億円

既存メディアの伸びは限界:M&Aに成長の活路を見出す

上記の事業数値から、既存保有メディアだけで数字を伸ばしていくには限界があり、「上場後はM&Aで頑張りたいっす!」と一の部にも記載がある。

直近Qの保有キャッシュは約15億、IPOで約10億前後のキャッシュが入ってくるが保有キャッシュ25億では10億台の買収を仕掛けるには心許ない。

イードの体質上バイラルメディアやキュレーションメディアは買収しないと思うが(手堅いものを好みそうで、法的リスクのあるメディアの買収は控えそう)一桁億前半代のメディアのM&Aを仕掛けて積み上げて行くのか、じげんのように借入も辞さずM&Aにぶっこむか、どのようなM&A戦略を取るかに注目したい。

だが、イードのメディア合算のPVは月間1億ほどであり、単体で1億PVを越えるキュレーションメディアなどもあることを考えると、単純なPVマルチプルで見ると単一メディアでイードのバリュエーションを越える事業価値が付くというロジックも全くないわけではない。今後、どういったキュレーションメディアが各社に買収されていくのか、イードによる買収もあり得るのかは興味深い。

一方で「コンテンツマーケティングカンパニー」と称するのであれば、コンテンツ制作力を強化するために、オウンドメディア関連のスタートアップであるサムライトやイノーバを買収するという選択肢もあり得るが、両社を買収するには10億以上のバリュエーションじゃないと難しそうに思えるため、イードがよほどリスクを負わない限りはその路線の買収はなさそうだ。

M&Aにはもちろんリスクがつきまとう。既に買収したシネマカフェを2,500万円の減損処理を行うなど、イードかて全てのM&Aが成功しているわけではない。クロスワードパズルを展開する小型出版社も最近買収している。大型M&Aの失敗は企業の屋台骨を揺るがしかねないので、M&A頼みの成長を志向するとなると、足下は手堅いが、アップサイドはややリスキーともいえる。

リードVCはグロービス3号の21%:3号ファンドEXIT続く

イードの資本政策は相当複雑なので、詳細はSBI&サイバーエージェント研究会様のブログをご覧下さい。

イードは元々日産からのカーブアウト案件であり、DeNAによるみんなのウェディングのカーブアウトに似たスキームをグロービスが取っていると思われる。グロービスファンド3号で21.65%を保有。2014年12月のカヤック上場もGCPファンド3号銘柄であり、ファンド満期も近いことから、2015年はGCP銘柄の上場ないしは売却が増えてくるかもしれない。

2位の株主はFASHION HEADLINEで協業している伊勢丹三越で13.51%。他にもエキサイトやマイナビなど協業先は安定株主として保有し続けそうな気がする。

メディアコングロマリットは紙媒体では海外ではコンデナストなど有名どころがあるが、インターネット企業でのメディアコングロマリットはあまり聞かない。イードのような企業は株式市場でどういった評価を受けるのか。本誌では将来性はM&Aの成否次第であり、評価は据え置きとしたい。

  • Umekisalonバナー プロフ写真入り

New!Umeki Salon、2月は3,000万以上の資金調達を実施した起業家は無料とするキャンペーンを実施中。

New!サロンメンバー西村氏による紹介記事:なぜUmeki Salonには月額4000円でも払い続けるのか?オンラインサロンならn対nで

月刊Umeki Salon:シードステージでのキーマン雇用条件交渉など

広告出稿をご検討の方はこちらをご確認下さい。

Umeki Salonの神8名の人生を変えた書籍8冊

梅木雄平が選ぶ珠玉の書籍40冊

今日も適当にツイート中。 @umekida

 šƒoƒi [RGB -72dpi i685 ~65)_



Pocket

コメントを投稿する

「メディアコングロマリットのイードが上場承認:成長性はM&Aの成否次第」に対してのコメントをどうぞ!