Karteなど、注目のECマーケティング市場国内サービス3選

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本誌ではバーティカルコマースなどの単なるコマースには否定的な見解を示している。ジャンル特化したコマースでは売る商材が限られ、アップサイドが限定的であり、利益率もオリジナル商品にしない限りは高められない。

一方でECの周辺領域に最近注目している。ECのマーケティングチャネルとしては下記があるがこれはもう何年も変化していない。変化したのはYahoo!への出店が無料化したくらいだ。

1:自社サイトへの集客(リスティング、SEO)
2:モールへの出店(楽天、Yahoo!、Amazon)

国内のEC流通総額を約10兆円とすると、広告費はその5%程度約5,000億円が使われているという。この5,000億円は上記の1か2に投下される。

ちなみに「楽天市場」の売上は1,373億円。ここには初期および月額の出店料と楽天内のリスティング広告の売上が含まれる。

年商数億円レベルのECであれば自社サイト単独運用のみならず、各モールへも出店していると考えられる。そこで売上はたしかにあがるだろうが、楽天への手数料などのコストも比較的高く付く。モール出店に依存しない中小ECのマーケティング手法はないか。ここに潜在市場があるように思える。

ECマーケティング市場関連のプレイヤーが国内でも増えてきたので、まとめて3つ紹介しよう。

1:Karte(訪問客のデータからきめ細かい接客を実現)

スクリーンショット 2014-11-19 11.39.261つ目はプレイドが運営するKarte。オンライン上からサービスへのリンクはないが、実際のサービスを見せてもらうとこんな感じだった。

1:リアルタイムの訪問客のデータがわかる(何回目の訪問、取得できている場合は性別年齢も?)
2:訪問客ごとに細かくセグメントを分けてアクションできる(例:初回訪問客には「今買えば50%オフ」など)

実際には運用スキルが相当求められ、社内に専属で「Karte担当」を置かなくてはならないかもしれない。しかし、リアル店舗では店員が話しかけて接客した結果、売上に繋がることもあり(もちろん接客せずに売り上がることもある)運用次第では劇的に売上を上げる可能性を秘める。

Karteはマーケティングツールの中でも「訪問したユーザーに対して接客をし、満足度を上げた結果、APRUを上げる」というサービスとなる。

きめ細かな「ウェブ接客」を実現する「Karte」を運営するプレイド、フェムトから1.5億を調達(The Startup)

2:People&Store(EC版RSSリーダー)

スクリーンショット 2014-11-19 11.46.15続いてはPeople&Store。リリース当初に本誌では「雑誌風アプリ」と紹介したが、言い換えるとEC版RSSリーダーといえる。ユーザーは楽天やAmazon、ゾゾタウン、それ以外など買い物するサイトはある。しかし、「何かを買う」という目的が明確な際にサイトを訪れることの方が多い。

近年ではPinterestやFancyに代表される「セレンディピティコマース」のようなものもあるが、そもそも自分が知っている以外のECを知る機会が少ないし、知ってもブックマークしたり検索しない限り再訪することがない。

People&Storeはその名の通り「人」と「ショップ」アカウントがあり、「ショップ」をフォローしていれば、ショップが発信する情報をサイト上でタイムラインのような感じでチェックすることができる。気になったECアカウントをフォローしておけば、いちいち各サイトに行かなくても更新情報が得られるようにもなるし、「人」をフォローして自分が知らなかったECを知る機会も得られる。

これはECにとっては新規ユーザーの獲得と既存ユーザーのリピート率向上に寄与するサービスといえる。

雑誌風アプリ「People&Store」はEC集客ツールの超新星となる?(The Startup)

3:XZクローゼット(手持ち服に合う服の購買を誘う)

スクリーンショット 2014-11-19 11.55.09最後はXZクローゼット。一見、自分が持っている服を登録しておけというだけに聞こえなくもないのですが、構想をお聞きしてみると、登録アイテム数やコーディネート数が増えた後の世界観だとこういうユーザー行動が想定される。

1:梅木がトムブラウンのシャツを登録しておく
2:梅木と同じトムブラウンのシャツを登録しているユーザーがいる
3:他のユーザーのトムブラウンのコーディネートの仕方を知れる
4:なるほど!と思う
5:このトムブラウンに合いそうなジャケット買ってみるかと思う
6:XZ内にBEAMSのECがありそこでベルベストのジャケットを買う
7:もしくは他のユーザーが持っているジャケットをC2Cで買う

一見、XZのマネタイズはC2Cに見えるが、同じアイテムの着回しを見ることで、購買意欲が喚起され、XZ内に出店しているECで購入するというB2Cの展開もプラットフォームが大きくなればあり得る。

コーディネートCGMという分野ではiQonが有名ですが、XZの場合は実際に自分が持っているアイテムを登録するという点がiQonとは異なる。ゆえにアイテム登録のハードルは高いですが、登録されればその事業資産としての価値は高く、「持っている服に合うもの」が見つかれば購買へのCVRはそれなりの高さになるのではないか。

これもECにとっては新規ユーザーの獲得とショップアカウントのフォローによって既存ユーザーのリピート率向上が見込める。People&Storeと異なるのはユーザー体験の起点といえよう。

People&Store:ECのアグリゲーション
XZ:自分の手持ちの服に合わせる服を探す

3サービスをユーザー行動のバリュエーションにはめると

かなりざっくりですが、3サービスの強そうな点をECのユーザー行動のバリュエーションにはめるとこんな感じ。

スクリーンショット 2014-11-19 12.48.58
訪問したユーザーに対して接客してCVRやAPRUを上げるのに強いのがKarte、新規ユーザー獲得やリピート率向上に強いのがPepole&StoreとXZというのが僕の解釈。

この3サービスを活用すれば、モール経由ではなく自社ECでの売上を上げられる可能性はあると思う。そういった意味で広義で捉えるとこ、の3サービスの競合は楽天やYahoo!となる。モールへ支払っている手数料をリプレイスできれば、勝ちだ。

冒頭の通り、国内のECマーケティング市場規模は5,000億円なので、そこから1%でも取れれば売上は50億だし、プラットフォームやツール提供であれば、スケールしていけば利益率が上がっていく。

僕はただの野菜屋さんや靴屋さんやお洒落雑貨屋さんがスケールするとは思っていない。MDの独自性があればそれなりの売上になるという主張もあるが、それなり止まりであり、楽天やAmazonやゾゾタウンの牙城は崩せないだろう。それよりかは小売りではなく、ECマーケティング市場で楽天やAmazonを切り崩し、既存のECへ新たなマーケティングチャネルを提供するビジネスの方が、利益率も高く有望なように思える。

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