大企業からスタートアップに転職しても、また大企業に戻る?

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物議を醸し出しやすいキャリア論です。ここ最近、大企業からスタートアップへの転職に興味を持つ人が増えているようですね。Retty CFOのカルロスさん(三菱商事出身)のFacebookウォールでもそんな話を見かけました。

僕もごくたまに転職相談に乗ることがあるのですが、大企業からのスタートアップ転職、けっこう難しいよなと思っています。どこかの記事で「地球から月へ移住するようなもの」という表現を見かけ、言い得て妙だなと思いました。

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前提としてケースバイケースでもちろん大企業からスタートアップに転職して成功される方もいると思うのですが、スタートアップに馴染めず結局大企業に戻る。という事例もいくつか見ているので、そのケースを掘り下げて考えます。今回の話は、比較的エリート気味な大企業出身者。GSなどの外資系投資銀行やマッキンゼーなどの外資系コンサルティングファーム、DeNAなどの大手インターネット企業ビッグ5からの転職と仮定します。

HBS出身者が群がる業界は斜陽だ。に近しい感覚

■ケース1:外銀、外コン出身の場合

30歳前後でも余裕で年収1,000万を超えている人たち。外銀出身の方に聞いた話によると、スタートアップ転職で給与ダウンは致し方ないとは思っているものの、2,000万が700万になる?1/3かよ?俺のマーケットバリューしらないのかYO!OMG!となる場合も少なくないようです。

CFOなどのCクラス人材であれば1,000万前後出すよというところもあるようですが、Cクラス以外ではどんなポジションがあるのか。投資銀行出身者はM&Aなどの財務には強いもの、ネットサービスに詳しいわけではありません。地頭良くてもプロデューサーはいきなりは無理かと。そこで「ビジデブ」という魔の何でも屋さんになるか、「実質経理担当」的なものになるしかないんですよね。外資コンサル出身者も同様で、「経営企画的な何でも屋さん」になるくらいでしょう。

外銀のセールス出身で、営業が必要なスタートアップの場合はセールスという手もありですが、スタートアップのセールス職で年収1,000万なんてあり得ませんからね。何人かの話を聞いていると、モメンタムが良いから。的な感覚で転職希望している人が多い気がします。スタートアップ業界も「HBSの卒業生が群がる業界は斜陽産業だ」の手前に来てしまっている気が。

外銀、外コン業界では花形だった職種の人々は、スタートアップ業界ではほぼ花形にならないんですよね。スーパーCFOとかにでもならない限り。

転職しても、ビジネスサイドは結局手詰まり

■ケース2:大手インターネット企業の場合

DeNAや楽天など、大手インターネット企業出身者は30歳前後で700-800万前後の年収が多いでしょうか。ネットサービスに馴染みがあるので、外銀や外コンの方ほどは違和感はありません。

ただ、ビジネスサイドの場合は同様の問題を抱えており、スタートアップでの職種は「プロデューサー及びディレクター」か「バックオフィス」か「マーケティング」か「セールス」くらいなんですよね。

プロデュースができる人は最も市場価値が高く、特にB2Cなら比較的良い待遇で転職しやすいんじゃないですかね。サイバーエージェントのプロデューサー経験ある人材を欲しがるスタートアップはたくさんいると思います。転職したい人いたら、僕に声かけてくださいw

実際に楽天市場の営業をやっていて、スタートアップに転職したという後輩がいたのですが、楽天市場の営業経験だけではスタートアップではほぼ価値を出せないと嘆いていました。正直、彼のエージェントだったら僕はかなり困る。当てる先がなくて。

こういう人材は結局大企業に戻っていく気がします。僕が身近で知っているだけでもこんな例があります。

大企業⇒スタートアップ⇒リクルート
大企業⇒スタートアップ⇒カカクコム

僕かて「スタートアップに転職しろ」と言われたら困り果てますよ。会社員に向いていない上に、能力的にも極めて使いにくいですからね。なので、こういうネット企業出身の方には中途半端にスタートアップに転職せずに、起業してほしいですね。起業願望もないんだけど。といわれちゃうと困るんだけど。

ビジネスサイドはCクラスじゃないとまたキャリアに迷う?

僕はフリーランスとして2011年に独立して2013年に法人化して今に至ります。独立して良かったなと思うことの方が圧倒的に多いですが、「キャリアどうしよう。転職どうしよう」という悩みから解消されたのはすごく良かったです。

独立時にも転職活動を1社だけしたのですが、「うーん、梅木さんはフリーの方が向いていると思うから、うちではいりません」とニコニコしながらサクッと落とされましたね。いやー、先見の明がある経営者です。

僕も会社員時代は「希代のCMOになるぜ!」とか粋がっていたものですが、「雇われる=他人にコントロールされる」ことと、会社員という市場の中で相対的に自分を周囲と比較してしまい「あいつは出世、あいつは出向か」という半沢直樹的な世界に疲れてしまいました。

どんなに優秀な人でも、会社員ならではの市場感は気にしてしまうと思います。市場原理であるがゆえ、GSで年収3,000万だった人でも、スタートアップでは年収3,000万どころか、年収300万の提示もあり得るわけです。そのリスクを取れるのは創業者か、そこそこの待遇で迎え入れられるCクラス人材くらいであり(後の株のアップサイドを見込むから)平社員で入って「アップサイドは執行役員くらいですよ。SOPはなしね」だとまたキャリアに悩んでしまう人が出てくると思う。そして1,2年で大企業へ戻っていく。

強調しておきますが、もちろん大企業からスタートアップに転職して成功している方も多いと思います。しかし、同じくらいかそれ以上に「やっぱスタートアップなんて行くんじゃなかった!」といって大企業に戻っていく人の方が多いんじゃないですかね。

やりたかったことをやってみて、やっぱダメだった。という挑戦自体は良いと思います。ただ、安直に「流行ってる業界だから」と後乗りで転職すると失敗すると思いますよ。

大企業出身の方は、スタートアップに転職ではなく、スタートアップを起こしてほしいですね。それはそれで困難ですが、自分でやる方が面白いですよ。向き不向きはあるので一概にはいえませんが。

大企業からスタートアップに転職して成功した(っぽい)人に主にメディアで焦点が当てられているので羨ましく思い、転職したくなる気はわかりますが、それ以上に現実は「大企業⇒スタートアップ⇒大企業」というスタートアップ不適合者が多いという事実をお伝えしたかったのです。皆様のキャリアの参考の一助になれば幸いです。

Gunosy木村さんも参加する、会員数294名突破のUmeki Salon
内容の参考:強者メディア運営者が集うメディア論の良スレ、Talentioがイケてる件など

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