インターネット事業モデルはざっくり3パターンに類型化される。
1:モノを売る(コマース)
2:場所を売る(広告)
3:情報を売る(コンテンツ)
コマースの場合はモノを扱うからどうしても利益率が下がる。一方の広告は場所の価値が上がれば売上が伸びるし、コンテンツは1人が読もうが10万人が読もうが制作コストはさほど変わらない。課金して消費する人が増えれば増えるほど利益率は上がる。
最も美しい収益の成長曲線を描くのがコンテンツ課金。課金モデルには主に2つある。CGMとキュレーションだ。
クックパッドや食べログは数百万件のレビュー数という圧倒的な情報量をベースにサイト上でランキングなどキュレーションし直すことで課金価値を生み出そうとしている。圧倒的な情報量をベーストとした集合知であり、これはこれで価値がある。
一方のキュレーションの方は食べログのようなCGMではないので比較すると相当情報量が絞られる。その代わり厳選したコンテンツを届けることで、cakesとschooであれば月500円、NewsPicksであれば月1,500円という価格設定でサービス提供をしている(schooと比較して動画でいえばニコニコ動画はCGMに入るといえよう)。
ここまでの話は本誌読者であれば当然のように理解できる話だ。本稿の肝はここからである。キュレーションコンテンツでの課金軸を「感情」という軸で取ってみるとこうなる。
「温度」と表現したが、これはそのサービス内でのコミュニケーションの有無、といえるかもしれない。
ここで取り上げたサービス群の中で、旧来型メディアの代表といえるのはcakes。これは記事を読むだけで課金させるという仕組みだ。そういった意味ではNewsPicksも同様であるが、記事に対するコメントが付加価値のこのサービスはCGM的な要素もある。ただし、そのコメントの閲覧は現状では課金対象とならない。堀江さんのコメントを読むなら課金とか、有識者のコメントを読むなら課金というスキームはあって良いかと思うが。
NewsPicksのユーザー数は微増しているようだが、現状のスキームで数万人単位の課金ユーザーを抱えるようになるとは思えない。私も今月はじめて1,500円課金したが、次月は課金しないだろう。正直、そこまでの価値を感じないのだ。
schooは若干サービスに温度がある寄りのプロットとした。講義を通して先生とコミュニケーションが取れ、そこにはワクワク感がある。厳密にはライブ授業は課金されず、アーカイブ課金のため、現状ではコミュニケーションに課金しているという感覚はないだろう。
上部の「温度が高い」象限に話を移そう。手前味噌だがサロンビジネスは上記3つのサービスと比べると「温度が高い」といえよう。Umeki Salonを例に挙げると「情報の質」という点ではNewsPicksに負けているであろう。ただ、1つの投稿を軸に様々な起業家がコメントしてスレッドの価値が高まったり、しょうもないコミュニケーションもある。それを閲覧することに楽しみを見出す。というユーザー心理があるかもしれないと仮説を立てる。
たしかに記事のような形でまとまっていなくとも、価値の高い情報がサロンに転がっていることもある。だが「情報価値」という点だけではなく、コミュニケーションが介在し、そのサービスや場に感情を多少なりとも抱くから、ただのコンテンツ配信サービスより定着率が高いのかもしれない。この点はUmeki Salonよりユーザー数を有するちゅうもえサロンの方が「場に所属するという価値」という感情価値は高いであろうと推測する。参考記事。
実はスタートアップではなく大手インターネット企業がそこを軸に設計したかは知らないが「感情価値での課金」の可能性を感じるサービスを展開する。DeNAは地下アイドルなどの生ライブを配信するSHOWROOMを始めている。これはユーザーとしてライブに参加し、課金して前列の方にいくとコメントが読み上げられる可能性が上がるなど、ソーシャルゲーム時代に蓄積したであろうユーザー心理分析を巧みに活かした設計になっている。
こんな感じ。平日の昼間(金曜17時)にこういうライブにこれだけ人が来るのか・・・。従量課金だが「このアイドルとコミュニケーションしたい!」とか「このアイドルのためなら!」とリアルなライブやファンクラブに近しい仕組みだろう。ライブも席によって価格が違う。バーチャルな世界でも最前列でコミュニケーションを取ることは、課金するほどの価値があることをユーザーが示している。
最近話題の755も課金は開始していないが、文脈的には感情課金が成立しうる。コンテンツの質ではなく、AKBからいいね!されることに課金価値があるということだ。SHOWROOMの課金がある程度成り立つことにより、握手会がバーチャルの世界でも金脈になり得ることが証明される。
以上、コンテンツ課金にはCGMとキュレーション型があり、キュレーション型であればただコンテンツを配信するのではなく何かしらのコミュニケーションや感情を揺さぶられるコンテンツがないと課金ラビリティが低いのではないかと本稿では仮説を立てる。
先日から私が始めた東京カレンダーWEBではファクトのみならずストーリーコンテンツによる感情の揺さぶりをまずは考えているが、コミュニケーション要素というのも上記の仮説の元に考えていきたいと思っている。
コミュニケーションが発生する課金を「感情課金」と本稿では呼んだが、ジャンルを拡げるとLINEのスタンプは「感情課金」といえる。単なる情報配信ではなく、いかにユーザーの感情を掴むのか。炎上するブロガーがごく一部で評価されるのは、それだけ多くのユーザーの感情を動かす力があることに対しての評価であると推測される。
「役立つ!」より「かわいい!」「頑張れ!」が課金されるのではないか。現に私はサロン運営を通して、たまに「色々言われてると思いますが、頑張ってください!」と本誌の読者であろう人からエールをいただくことがある。「頑張れ課金」であり、応援の意思表示である。
購入したWEBコンテンツを通じた、自分と誰かの関係に課金するのではないか。人は案外、論理だけでは動かない。
New!Umeki Salon、1月はサイバーエージェント関係者のみ無料キャンペーン実施中。サロンの感想は山崎ひとみさんに聞いてください。山崎割引もあるかもしれません。
内容の参考:ネットの未来を予測するには歴史を学ぼう、動画分科会を始めてみた
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Umeki Salonの神8名の人生を変えた書籍8冊。
梅木雄平が選ぶ珠玉の書籍40冊。
今日も適当にツイート中。 @umekida