年末年始にサイバーエージェントがTVCMを投下して盛り上げている755。2014年4月のローンチ時にAmebaからの転換(著名人を活用した広告モデルから課金モデル)を予感させるサービスとして本誌でも紹介した。尚、同社の公式リリースによるとダウンロード数は250万突破したと発表した。
運営者インタビューはTheBridgeでも見てくれ。TechCrunchよりは全体像を掴みやすいんじゃないかと。
755の前にAmebaの現状整理:広告媒体としての魅力は?
755を語る前にAmebaの現状を見てみよう。2014年通期決算資料より下記を拝借する。
今期24億の黒字に対して2015年通期は80億の黒字を見込むという。たしかに課金と広告共に売上は伸びており、直近の四半期では15億の黒字を出している。しかしこれはAmebaの人員を半分リストラしたといわれる2014年8月の構造改革を受けてコストカットしたという要因が売上の伸びより貢献していると思われる。
ちなみに2011年は毎四半期10億程度の営業利益は上げていた。これはアメーバピグを中心とする課金売上が主力だったと思われる。
広告に関してはアメブロを中心としたAmeba媒体での売上を指すと思われるが、Amebaの直近のPVは開示されていない。LINEブログに著名芸能人が鞍替えするなどもある中、AmebaのPVはかなり低下しているのではないかという声も筆者の周囲からは聞こえてくる。
課金に関してはガールフレンド(仮)などのゲームが中心であろう。Ameba課金事業の有償化率は50%強で推移している。
価値軸は「コンテンツ」から「コミュニケーション」へ
本誌で2014年4月に紹介した際の論点を整理し検証してみよう。
■1:Ameba芸能人ブロガーをどれだけ投下できるかが鍵
AKBを中心にTVCMに合わせて大量投下してきています。既にAmebaで持っていた事業資産ですから、他社には簡単に真似できません。良いパワープレーだと思います。
アプリのチューニングが済んだと判断し、このタイミングで投下してきたのでしょう。厳密には論点としては「どれだけ早く投下」できるかが重要だったのではないかと思います。LINEブログやDeNAのshowroomも競合と見なされることから、外部環境要因により一気にマーケットで存在感を出す必要があったと思われます。
■2:Amebaで広告を追うか755で課金を追うかのジレンマ
未だに課金するつもりなのかはよくわかりませんが、Umeki Salonで議題にしたところ、「Amebaをスマホ最適化したら755になったのではないか」とけんすうさんからの指摘がありました。
今までもブログに対してユーザーはコメントすることができましたが、僕がよく「ワンツイート以下のアメブロ」と称するようにブログの内容自体は超薄かった。しかしブログであるがゆえ一定の投稿ハードルはあった。投稿ハードルをグッと下げたのが755。ブログよりtwitterに近しく、ブログのようなストック型よりコミュニケーションを中心としたフロー型の設計に見えます。実際にTheBridgeの記事でも「芸能人とユーザーとの新たなコミュニケーション体験」と謳っています。
ここが最も肝なのですが、Amebaから755に著名人が移動すると、AmebaのPVが下がり広告価値も下がる。ゆえにAmebaの売上が下がると僕は予測しており、イノベーションのジレンマだなと思っていました。こういう時最も良くなさそうなのは「中途半端にやること」であると思いますが、755はなんか気合いを感じますので、イノベーションのジレンマを越えそうな可能性を感じます。この辺は一時期スマホに集中的にシフトしたことで耐性が身についたのかもしれませんね。
メディアとプラットフォームの違いとは?
本論から少し逸れるのですがサロン内では「755はメディアなのかプラットフォームなのか」という議論があり興味深かったので紹介します。最初に言っておきますが、どちらの方がいいというのは重要ではないと思います。
メディアは1:N
プラットフォームはN:N
(田端信太郎氏談)
この辺はサロン内でけんすう先生がいろいろ語られていましたが、Amebaや755は「メディア」だと思います。著名人を早い段階で仕込んで、それを持ってブーストする。ゆえにアメブロといえば一般ユーザーによっては「辻希美」というイメージが付いている場合もある。良くも悪くも。
その後一般ユーザーによるブログ開設に裾野が拡がる。公開数字を知らないのであくまで仮説ですが、アメブロのPVは8:2で芸能人ブログがほとんどではないでしょうか。ゆえに「色」がついており、田端公式に沿うと「メディア的である」気がします。755もAmebaの立ち上げの公式をそのまま適用させるのではないかと見ていて思います。
一方のプラットフォームとは。Facebookが著名人を担いでプロモーションをしたことはないでしょう(最近気持ち悪いTVCMが話題になりましたが)。基本的にはN:Nとなるように設計してきたはずです。twitterも会員登録後のユーザーにおすすめアカウントを20人くらいレコメンドする施策をやっていましたが、それでもメディアよりはプラットフォームだなという気がします。
サロン内ではメディアの方がプラットフォームよりアップサイドが低そう(グローバル展開と相性悪そう)という意見もありました。メディアの方が芸能人などの投下でパワープレーで立ち上げやすそうですが、天井が低い。一方のプラットフォームは立ち上げ難易度が高いが、芸能人など使わずN:Nが成り立てば寿命は長くスケーラビリティもある気がします。
ニュースを自分事として捉えシュミレーションする
こんな話ははっきり言って世の中の99%のユーザーにとってはどうでもいいことです。なぜ本稿でこの話を扱ったのか。それはTheStartupのコアな読者層を「サービス設計者である」と想定しているからです。そうした方々にご覧いただき「メディアとプラットフォームか。自分はどっちを作りたいんだっけ。こういう施策はメディア的で、プラットフォームを志向するならやり方違うんじゃないか」とか思考錯誤(あえて当て字)する余地を残せるかもしれないと思い、こういう記事にしています。
本誌読者には「755か。ほえー」で終わるのではなく、自分が755のプロデューサーならどういう施策を打つのかとかどう設計するのかとかシュミレーションしてみて欲しい。そうすることで思考が養われるはず。ニュースを読むだけの読者はいらないという本誌からのメッセージです。
シュミレーションの重要性を説くために、あえてこの記事を貼って終わりにしておきましょう。そろそろアジアカップですしね。
尚、本日から1月一杯の期間限定でUmeki Salonは現役OBサイバーエージェント関係者のみ「無料」で案内するキャンペーンを始めます。リクルート関係者はけっこう多いのですが、サイバーエージェント関係者は少ないですね。あした会議とか社内ばかりではなく広い社外に目を向けて知見を養うべきですと、CAモバイル出身の私からのエールです。社外の方がヒントたくさん落ちてると思いますけどね。CAモバイル関係者も当キャンペーンに該当しますのでどうぞ。
最後に755が流行るか流行らないかという観点では、地方の暇人がターゲットかと思いますので、TVCMで認知させてAKBとかの著名人のアクティブ率がそれなりに高ければ、それなり以上にはワークしてAmebaを越えるメディアになることは想像に難くないと思います。施策レベルの鍵は「著名人のアクティブ率」と見ます。スタートアップ界隈の経営者も使い始めていますが、彼らはすぐ飽きていなくなるでしょう。
New!Umeki Salon、1月はサイバーエージェント関係者のみ無料キャンペーン実施中。サロンの感想は山崎ひとみさんに聞いてください。山崎割引もあるかもしれません。
内容の参考:GCP、EXITへの圧力がキツい?
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今日も適当にツイート中。 @umekida