上場承認が降りたリクルートのセグメント別売上と、スタートアップが付け入る隙

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リクルートの上場承認が発表されました。一の部を元に直近の決算資料を読み込み、本誌読者に関係ありそうな点に絞りご紹介。

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まずは連結全体のPL。売上高1兆円企業です。粗利率も50%前後と高利益率体質。対前年比で2%営業利益率が下がっていますが、買収費用やのれん償却でかさんだようです。

リクルートホールディングスではセグメントを「販促メディア」「人材メディア」「人材派遣」「その他」の4つに置いています。本誌はネット関連のメディアなので人材派遣は割愛し、その他を深堀りします。

ライフイベント領域と日常消費領域の事業別PL

「販促メディア」は「ライフイベント」「日常消費」の2つに更に細分化。ここがリクルートの中では他のネット企業やスタートアップとも関係してくるので、詳しく見ていきます。

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まずライフイベント領域。グラフの一番左がライフイベント領域全体の売上で、このセグメントは「SUUMO」「ゼクシイ」「リクナビ進学」「カーセンサー」の4つがありました。売上高の開示があったのはSUUMOとゼクシイのみ。

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次に日常消費領域。これも同様に一番左はセグメント全体。「じゃらん」「Hotpepperグルメ」「Hotpepperビューティー」「ポンパレ」の4つに分かれます。ポンパレのみ売上非開示でしたが、日常消費領域全体から残り3つのセグメントの合計を引いて一旦算出。

スクリーンショット 2014-09-11 9.55.24「販促メディア」セグメント全体ではセグメント全体利益も開示。セグメント利益率は約30%。全体の営業利益率が10%であることを踏まえると、ここが稼ぎ頭。人材派遣セグメントは今回紹介しませんが、営業利益率5%程度。次項では「リクナビ進学」「カーセンサー」以外の6媒体をもう少し深堀りします。

ライフスタイル系主要6メディアvs類似他社メディア

■1:SUUMO vs HOME’S(不動産)

スクリーンショット 2014-09-11 10.03.47866億の売上のSUUMO。この市場はネクストのHOME’Sがありますが、ネクスト自体の年間売上高は140億で営業利益22億。SUUMOの圧勝といったところですね。SUUMOは前年同期比でも+10%成長。マスプロモーションによるパワープレイが効くのでしょうか。

スタートアップでも不動産関連サービスは出てきていますが、SUUMOの牙城は簡単に崩せそうもないし、買収してシナジーのありそうな事業もあまりないですね。マンションノートのようなCGMをどう捉えていくかというのは、本稿の最後に詳述しますが、一つの課題ですね。

■2:ゼクシイ vs みんなのウェディング

スクリーンショット 2014-09-11 10.10.07結婚関連。ゼクシイ売上高533億に対し、今年上場したみんなのウェディングは売上高10億。かなり開きがありますが、ゼクシイは前年同期比1.8%成長で、詳細を見た6媒体の中では最も成長性が低い。あの分厚い雑誌に広告出稿しても効果が薄いことをクライアントが気づき出した感じでしょうか。ユーザーに利便性があるのはCGM型だと思うので、みんなのウェディングに頑張っていただきたいですね。

■3:じゃらんvs楽天トラベル

スクリーンショット 2014-09-11 10.38.09じゃらん売上は484億(前年比+8.7%)。対する楽天トラベルは346億(同+11.8%)営業利益130億(同+5%)と共に伸びており、楽天トラベルが差を縮めてきています。ちなみにグルメも含むので単純比較とはいえまえんが、一休は売上55億営業利益20億です。楽天トラベルと一休を見る限り、旅行メディアは単価もそれなりに高いため高収益体質を作りやすいのかも。

■4:Hotpepperグルメvs食べログ

スクリーンショット 2014-09-11 10.14.22Hotpepperグルメの売上は335億、最も対抗馬になるであろうカカクコムの食べログ年間売上は約77億。食べログは利益率高いでしょうが、規模はまだ1/4程度。本来であればHotpepperグルメの純粋な競合にはぐるなびを置くべきで、ぐるなびの年間売上305億とHotpepperグルメとさほど変わらない。

ユーザーとしてはHotpepperとか見ないのですが、地方でゴリゴリ営業して数字を積み上げているんでしょうね。オワコンメディアと思いつつも、まだ前年比+6%の成長がある。

■5:HotpepperビューティーvsOZmall?

スクリーンショット 2014-09-11 10.28.05Hotpepperビューティーの売上は339億。楽天も楽天サロンというのがあるようですが、決算資料のどこにも見当たらず、上手く立ち上がっていないと推測。最も近いのはOZmallでしょうか。純粋な比較にならないよなと思いつつ、参考までに数字を紹介。OZmallを運営するのはスターツ出版。同社セグメントの「東京マーケティング事業」の売上が30億、セグメント利益が3.5億。

それにしてもHotpepperビューティーの前年比+23.5%はすごいですね。この市場において主な競合がいないか、いても楽天サロンのようにイマイチなところが多い市場なのでしょうか。

■6:ポンパレvsGroupon

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2010年頃脚光を浴びたフラッシュマーケティング事業。ポンパレのセグメント売上は開示されていませんが、本誌の算出によると最大で289億の売上。下記の記事が参考になります。

実はいまだに市場拡大が続くグルーポン系サイト - クーポン共同購入サービス、グルーポン・ポンパレ・ルクサの奮闘

この記事によると2013年度ポンパレ売上172億、Grouponジャパンは148億となり、2強でよく争ってVentureNowあたりで毎月フラッシュマーケティング事業者の売上高速報が載っていた気がしますが、一旦はポンパレが僅差で勝利している感じでしょうか。Groupon側はとにかく人の流出が激しく、ネット企業の中でもこれほど人を使い捨てする企業もないんじゃないかというほど。元Grouponの人が市場にわんさか出てきていますね。

ただ、フラッシュマーケティングなので単体での利益率には疑問符。リクルートの場合は他メディアのアップセル商材になる点が、既存事業とシナジーがあり、Grouponと競り勝てた要因といえるでしょう。

スタートアップは「広告情報提供型」ができないサービスを

ライフイベント領域は「リクルート住まいカンパニー」「リクルートマーケティングパートナーズ、」日常消費領域が「リクルートライフスタイル」の管轄のようです。これらの領域に対して、本誌らしくスタートアップのどのようなチャンスがあるのか考えてみましょう。

■1:不動産領域

CGM型のマンションノートや祝い金型のリブセンスのdoor賃貸やキャッシュバック賃貸などが出てきていますが、ブランド認知とSEOの牙城が高く、スタートアップがSUUMOを倒すのは容易ではない。何かニッチに振り切った価値提供をしないと、勝てる隙がなさそう。

■2:結婚領域

ここは前項で述べた通り「情報提供型」vs「CGM」の戦いで、CGMにじわじわとユーザーが寄っていくイメージ。

■3:旅行領域

全方位型のじゃらんや楽天トラベルがある中で、高級旅館予約サイトreluxにリクルートが3.3億出資というニュースが最近ありました。高級限定などニッチの予約を取りにいく、ないしは予約時のみではなく定常的にトラフィックが発生するキュレーションメディアに需要があると見ています。TripAdviserがありますが、国内初の強力なCGMがまだないので、旅行系CGMは穴場かもしれない。

■4:グルメ領域

ここも「情報提供型」vs「CGM」で食べログがどこまで伸ばしてくるか。スタートアップではRettyなどもありますが、ここも高級限定などのニッチに振って予約と定常的なトラフィックが発生するメディアに需要がある。旅行とグルメは少し似ているかなと。

■5:ビューティー領域

ここはまだ唯一青い海かもしれません。ヘアサロンやネイルサロンへの掲載課金か送客課金と思われますが、meryのようなキュレーションメディアからの送客や写真アプリによるCGMでネイルサロンに送客という潜在市場があります。ここはスタートアップが攻める余地が一番大きい。

■6:フラッシュマーケティング領域

ここは2010/2011年にレッドオーシャン化し、落ち着いた背景があるので今更新規での参入はあまりないでしょう。リクルートにとってはある意味競争優位性を築いた市場といえますね。

リクルートはほぼ広告モデルの情報提供型メディアなので、それに対して市場を崩す打ち手は「CGM」か「コンテンツの質が高いメディア」になると思います。リクルートは広告モデル型のメディアの規模が大きすぎて、CGMに時間をかけて取り組めないというイノベーションのジレンマがあるはずで、そこをスタートアップや他のネット企業が突いていくべきですね。

普通すぎる回答で申し訳ないですが、ビューティー領域にチャンスあり。ということは断言できますね!

リクナビを擁する「人材メディア」はまだ好調!?

一応、おまけまでに「人材メディア」「その他」の話も。

スクリーンショット 2014-09-11 10.49.27人材メディアの国内は「リクナビ」「リクナビNEXT」「リクルート エージェント」「フロムエー」「タウンワーク」の5つの事業を内包。リクナビとか散々叩かれているのに、ここでも前年同期比+17.8%です。恐ろしい。。ただ、エージェントの売上が伸びてリクナビなどは下がっている可能性もあります。この辺の詳細は載っていなかったので、リクルート関係者の方々からのNewsPicksなどでのコメントをお待ちしています。

海外はindeedの買収がそのまま寄与しています。4つ目の大きなセグメント「その他」にはR25が入っているようです。今年度は「主要サービスにおけるユーザーIDの共通化の投資」により115億の赤字ですが、前年も33億の赤字だったようです。

「ユーザーIDの共通化」は他の事業部の数字をよく見せるためにこのセグメントに強引にくっつけられた印象がなきにしもあらずですが、R25は今は儲かっていないということだけは言えそうです。数年前に発行頻度も隔週になりましたよね。直近はよく知りませんが。

以上です。リクルートは楽天と比べて優秀な人をソルジャー化するのに長けた企業というのが私の印象です(楽天の新卒離職率は高いので)。スタートアップ業界にいたら普通に起業したりCクラスとして活躍できそうな人が多いのに、リクルートに留まっているのってもったないよなと。現にリクルート出身の優秀な起業家はすごい多いです。

ということで本稿をご覧いただいているであろうリクルート関係者のみなさまにおきましては、この記事をもう一度ご覧いただき、ストックオプションを行使してとっととリクルートを辞めてぜひスタートアップしてください。

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内容の参考:スタートアップ起業家の家賃に迫る

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