「月間利用者数100万人突破!」「月間PV5,000万を突破!」たしかにこうした定量的な指標は一つの参考にはなるのですが、ここを追いすぎるのはいかがかなものかと。
完全に被るサイトの比較であれば有意性はありますが、例えば先日のハフポと東洋経済オンラインかて若干異なるわけで。猫でアドオンした7,000万PVとエンタメ系も交えながらも長文気味な東洋経済オンラインの5,000万PV。表面的な数字だけ見て、ハフポの方が影響力があるとはいえないでしょう。大手メディアならほとんどやっているかと思いますが、PV稼ぎのための無駄なページ分割もユーザー体験を損ねるのでやめてほしいですね。
1PVは1PVという言説もweb上ではありますが、1PVが等価なわけないだろというのが以前から主張しております。田端さんの1PVと匿名ゴミアカウントの1PVはその後に与える影響を鑑みると等価なわけがありません。この辺の「PV論」に紐づく「メディアKPI」の話をUmeki Salonで展開したところ、かなり有益なコメントを拾えたので、記事化して共有しましょう。
特にバーティカルメディアではエンゲージメントが重要!
とあるバーティカルメディアを運営する大御所のコメントから、重要箇所を抜粋し、考察しましょう(ここ、テストに出ますよ!なんてね)
提供価値:雑誌のリプレイス
重要指標:DAU、継続率(この両方がエンゲージメントといえる)
記事分割:採用していない
マスメディアではなく、バーティカルメディアであれば対象読者層のボリュームがマスと比較して上限がすぐ来るので、闇雲にPVやUUを追うのではなく、どれだけそのメディアに愛着を持っているかというエンゲージメントが重要であり、それをブレイクダウンするとDAUや継続率に繋がります。
メディア百花繚乱時代で「キュレーションメディア」「バイラルメディア」「バーティカルメディア」など既存の「マスメディア」以外のものが登場しまくり、混乱している読者もいるでしょうが、メディアの本質的価値は「極力多くの固定読者を持つこと」と僕は捉えています。どの形態であってもベースは一緒です。
マスメディアの場合は読売でも朝日でも概ね似たような情報が多く、「どのテイストが好きか」という好みの問題である気がします。バーティカルメディアの場合はマスメディアと異なり、特定領域の情報に強いのが特徴で、固定読者が付きやすい傾向にあります。ゆえにDAUや継続率というKPIは至極真っ当。
The Startupの運営を鑑みても、昔はPVよりもGoogleリーダーの購読者数を心の中でKPIに置いていました。RSSの購読者は、記事がバズったりSEOで来た一見さんの読者ではなく、今後も継続的に読みたいという意思を持っている読者です。他のブログの購読者数も見れたので、「お!ついにIVPのあの人の購読者数を超えた!」とか、昔ひそかに喜んでいました。
PV規模よりも固定読者数の多さが、本質的なメディアパワーではないでしょうか。ちなみに僕のfeedlyに入っている各メディアで比較するとこんな感じです。これが実際の実力値に近しいのではないかと。
The Startup:約3,000
Venture Now:約3,000
とあるサイプロ:約3,000(最近あまり見かけませんが)
調べるお:約1,000
メディアパブ:約4,000
Market Hack:約6,000
サイバーエージェント藤田氏:約4,000
PV単価売りから滞在時間などに舵を切るメディア広告事情
UpworthyがPVに代わる指標「アテンション時間」のソースコードを公開
この話、かなり衝撃的でした。ようやく本質的な方向にメディア業界も舵を切ってきているなと。「本当に視られているのか?」という話は、動画広告DENNOOのViewable広告の概念と同じです。
PVが少なくとも、滞在時間が長くてよく読まれているメディアに広告を掲載すると、クリックされる確率は上がるという話でしょうか。メディア広告の販売手法もいろいろありますが、一次メディアの場合はアドネットワーク的なものをCPCやeCPMで回すよりも、純広で取りたいところの方がまだ多いのではないでしょうか。The Startupかて当然純広で取れた方が利益を確保できます。
純広の価格設定ロジックは類似メディアのCPCやPVをベースにするくらいしか今までは考えられなかった気がしますが、クリックが全てではなくブランド認知の側面も多分にありますので、滞在時間が長くなることで広告に触れる時間も長くなる。そこにクリックが仮に発生しなくとも、認知効果は十分にある。という言い分も通用するようになるでしょう。
クリックだけで効果を図られたのでは、メディア側としてはたまらないのですが、現実では純粋にクリック数だけを見る広告主も少なくありません。
先程の項の「固定読者数、DAUなどに紐づくエンゲージメント」や「滞在時間」はPVに取って代わる指標に十分なり得るかと。この価値をThe Startupを例にわかりやすく伝えると「固定読者層は起業家や投資家や意識の高い会社員が多く、土日にがっつり時間をかけて読んでいただいているメディアです」となる。PVが少なくても、この層にピンポイントで刺したい広告主はいるはずです。
PVが取れるメディアではなく、ブランド力でPVを取る
PV論の最後に。そのメディアが今獲得できているPVはそのメディアのブランド力に紐づいているのか否か。現代はニュースキュレーションアプリやソーシャルメディアを通して記事を読む機会が圧倒的に多いでしょう。
あなたのメディアは、ニュースキュレーションアプリやソーシャルメディアで記事がバズった時だけ訪問され、直帰されるメディアでしょうか?これは固定読者数の話とも紐付きますが、特にバイラルメディアの猫のような「猫が見たくてハフポを読む」ではなく「ただ猫が見たかっただけ」という要因でPVが取れていたとするならば、そのメディアには十分なブランド力が備わっていません。
メディアのブランド力を図る指標としては、UUあたりPVになるでしょうか。サイトトップから入って、どんなコンテンツがあるのかとカテゴリーや関連記事で回遊する。そうすることで読者はそのメディア上で体験を積み、メディアを認知するようになり、お気に入りやRSS登録というアクションに至ったり、ニュースキュレーションアプリやソーシャルメディアで流入したとしても、「最近読んでなかったから他の記事も覗いてみるか」という気になる。回遊が上がれば滞在時間も伸びる。すると広告主などへのトラフィックを供給できるようになる。
この辺に関するUmeki Salon内での有識者のコメントを一部引用します。
メディアの本当の力はトップページからどれくらい他のコンテンツへユーザーを流せるかだと思う。ほとんどのサイトがトップページにユーザーが居ません。だから、あまり売上が上がらないのだと思います。SEO依存では価値が低い。(グノシー木村氏)
メディアの「集客力」は、一般的にメディアの「ブランド力」に比例するし、メディアとしての「ブランド力」を持たずに、検索エンジンやSNSなどの他のメディアの「送客力」にフリーライドするようなメディアは、非常に脆い構造となるんだよね。(Voyage宇佐美氏)
SEO対策などで結果的にPVが取れたとしても、そのPVをメディアがブランド価値に転換できないと、結局上手くマネタイズできないのではないか。という話です。固定読者が付くことでブランド力が上がれば、後から収益は付いてくるのではないかと。
この辺のテクニカルにPVを取りにいくというのは、昨今のキュレーションメディアやバイラルメディアによく見られそうな傾向なので、メディア運営者はこの概念は頭の片隅に叩き込んでおくことをお勧めします。メディア設計や運用は奥が深いですね。
【The Mediaシリーズ】
1:女性誌市場をリプレイスする可能性を秘める、女性向けキュレーションメディア
2:「ハフポで猫が見たい」ではなく「猫が見たい」だけ:バイラルメディア3つの問題点
Gunosy木村さんも参加する、会員数290名突破のUmeki Salon
内容の参考:強者メディア運営者が集うメディア論の良スレ、Talentioがイケてる件など
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今日も適当にツイート中。 @umekida