女性誌市場をリプレイスする可能性を秘める、女性向けキュレーションメディア【The Media①】

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今後、様々な分野のキュレーションメディアやバイラルメディアが乱立してくると思われますが、本稿では女性向けキュレーションメディアに焦点を当てて掘り下げます。

女性向けキュレーションメディアはスタートアップではmeryが爆走しているらしいと噂ですが、あやたん☆に怒られるので、詳細は触れません。それ以外にも4meee!という4コマメディアも出てきています。キュレーションメディアを乱発するサイバーエージェントからはVERYチックなSELECTYというメディアが登場しました。

広告主の顔しか向いていないリクルートのホットペッパービューティーのような広告メディアではなく、コンテンツを重視しているように見えるWEBの女性向けメディアは老舗ではオズモールくらい。女性誌のリプレイスといえるこの市場はかなりチャンスがあると本誌では捉えました。

女性誌の市場:そこそこ売れてる女性誌の年商は約40億?

まずは市場概況から。かなりの種類の女性誌が存在します。少し古い資料ですが、この図が市場を把握しやすい。

スクリーンショット 2014-06-23 11.03.41出典:ここもガラパゴスなのか? 女性ファッション誌ポジショニングマップ

次にこれは比較的新しい資料ですが、ファッション誌販売部数ランキング(一部男性誌も含まれる)

スクリーンショット 2014-06-23 11.06.46出典:ファッション誌の発行部数ランキングに見る今後のファッション誌の動向

非常にざっくりですが女性誌は50誌前後は存在し、上記の上位25誌だけでも販売部数ざっくり500万部(月間)あり、下位まで拾っていくと700-800万部はあると見積もれる。対象層となる10代後半から40代女性の国内人口はざっくり約2,500万。対象層の3人に1人が月に何らかの雑誌を1冊は買っている。というのは感覚値として大きなズレはない。

雑誌1誌でどれくらいの年商になるか算出しましょう。VERYの月間広告費が3.7億いくとすげえ!と言われているらしいので、コンサバに見て月間広告費2億と見ましょう。販売部数は20万部で定価800円と仮定。

■そこそこ売れてる女性誌の推定月商

広告売上:2億
販売売上:1.6億(800円×20万部)
合計  :3.6億

年商換算:43.2億

販売売上から取次や書店などの流通原価と制作費を引いても20%は手元に残るのでは?雑誌はかなり制作費かけている印象はあるので、販売売上だけだと人件費引くと赤字になる可能性もあり、収益のアップサイドは広告に大きく依存するモデルといえるでしょう。

広告主の一例を見てみましょう。

■そこそこ名が知れたアパレルの広告費

年間予算:1億(アパレルでは売上の3%程度)
内訳  :カタログ2割雑誌8割
雑誌  :4〜7誌に振り分けて出稿
1媒体あたり出稿額:1,000〜2,000万

meryなどはそこそこ売れてる雑誌並の規模と影響力を得れば、アパレルクライアントが年間1,000万の予算を配分してくることも十分あり得るのです。広告主はアパレルに限らず、美容や旅行のレジャー系も十分ある。女性向けに広告を打ちたい広告主はかなり数は多く、潜在需要がある。

雑誌からスマホへ:コンテンツ接触手段の変化

出版業界の知人にヒアリングしたところ、やはり雑誌の売上は基本的には右肩下がり。一部が善戦しているだけで、今後全体のパイが盛り返すことはないでしょう。特に女子高生や女子大生層はスマホネイティブで、雑誌よりスマホの接触時間が長いことが容易に想像が付きます。そこでいかにスマホに最適化された女性向けコンテンツを出せるメディアを育てていけるかが鍵になります。

もう少し先な気もしますが、タブレットも十分あると思っていて、ビジュアルがリッチなコンテンツを扱うメディアはスマホよりタブレットの相性が良いはずです、VOUGEのようなハイファッション系は明らかにそうでしょう。ハイファッション系は紙の雑誌を電子書籍化するのではなく、タブレットに最適化されたUXのメディアを作ればまだまだ需要がありそう。

女性向けメディアに関しては「市場がもともと大きい」「雑誌からスマホへという時代感」から、今でしょ!的な事業領域なんですよね。

キュレーションメディアは編集長を起用し記事の質を上げろ

キュレーションメディアの課題を考えましょう。伝家の宝刀・ポジショニングマップです。

スクリーンショット 2014-06-24 21.48.10二軸を取るまでもないことはわかっているのですが、雑誌の質の高さは高コスト構造に支えられています。(編集コストのわりに質がイマイチな雑誌ももちろん存在します)キュレーションメディアは従来の寄稿を募るタイプのWEBメディアよりも制作コストが格段に安い。寄稿者による独自コンテンツではなく、編集部が時にクラウドソーシングを駆使して一定のルールを元に記事を量産していく構造も見受けられます。

meryは女子大生、4meee!女子大生読モを駆使してコンテンツを量産しているイメージです。いつの日かペロリ社に遊びにいった際に溢れんばかりの女子大生がいましたが、少なくとも当時はコンテンツを内製していたと思われます。女子大生が読者目線で書いているとはいえ、プロの雑誌コンテンツに質で敵わない。よって現状は上記のポジショニングにあるといえます。

スクリーンショット 2014-06-24 21.55.45しかし、仮説として「本当に雑誌コンテンツの質は高いのか、いやゴミもたくさんある」と僕は思っています。雑誌は従来のフォーマットに捉われすぎて、「夏にキメたいピンヒール100!」とか意味もなく数を並べることにこだわっていたり、読書体験が良いとは言えないコンテンツも多い。そして販売部数低下で広告費も低下していくと、今までのような高コスト体質を維持できなくなります。

一方のキュレーションメディア側はコンテンツの質を上げていく必要があります。現状のNAVERまとめ風な記事を量産して、webは記事本数に比例してPVも伸びるという原則がありますが、より読者に中毒性を持たせ、「mery読者」として染めるには、今程度のコンテンツレベルでは弱いと僕は考えています。そこで必要なのが強力な編集長です。

強力な編集長を置き、ガッツリ資金調達した上で、1本あたりのコストを上げてでも高品質の記事を出していく。従来の1本数百円記事路線とは別で、1本単価数万円のリッチな記事も交えて、コンテンツポートフォリオを最適化していく。

いち早くこの流れに着手したのが、CGMからオウンドメディアも持とうという路線のiQon。元ELLEgirl編集長を引き抜いたことが話題になりましたが、僕は紙の雑誌出身の編集長がWEBメディアを上手く最適化できるとは思いません。紙の雑誌出身でWEBメディアの立ち上げやそれを成長させた名物編集長はまだ存在しないと思います。強いて言えばLINEの田端さんが「R25の立ち上げ」を経て「livedoor News」「BLOGOS」というWEBメディアをスケールさせており、「メディア野郎」の称号を欲しいままにしています。

雑誌とWEBでは全然トーン&マナーが異なり、雑誌経験がWEBメディアの展開においてはむしろ足枷になることも多いと思います。そこを乗り越えて良いメディアを作れれば本物かと思いますので、僕の「紙出身のWEB編集長のメディアはWEBに上手く最適化できない」という仮説を覆していただければと思います。

話が逸れましたが、meryや4meee!は「編集長」を置いてリッチコンテンツも揃えることでメディアのブランド価値を向上させていくべきです。とはいえ、WEBメディアの編集長ができる人材は本当に限られているので、NewsPicksの佐々木編集長みたいな人材をリクルーティングするか、ないしは社内で強力な編集者を育成する必要があります。

「雑誌とWEB」に関しては僕も水面下でプロジェクトを進めているので、WEBネイティブな僕が雑誌に手を加えてどうWEBで見せるかという手法は、そのうち世に出るかと思います。

出版社が買収か、「出版社化」し上場か

最後に収益性の話。女性向けキュレーションメディアは単独で上場できるほど売上利益が上がるモデルなのでしょうか?これは運営方法により異なるでしょう。1メディアのスケールを追求するか、複数のメディアを持ち出版社化するか。

既存の出版社はどこも複数のメディアを持っています。宝島社ならINREDとSWEETという風に、大手出版社は年代ごとに女性誌を持っており、1社で4-5媒体持っていることも少なくない。1媒体の年商が25億として4媒体あれば100億、営業利益20%程度は出る。と考えればその規模感の上場もなくはない。WEBメディアの場合売上のスケール感はもう少し落ちそうですが、売却するなら1メディアでも成立するが、上場して持続可能な経営を志向すると複数メディアを持たないと成立する規模感にならないでしょう。

この手のメディアの買い手は誰になるかと考えると、真っ先に挙げられるのが出版社。紙の人たちはWEB業界の人々の想像以上にWEBに疎く、紙の人たちでWEB事業を立ち上げるのは事実上不可能です。

売上や利益が下がってきているとはいえ、彼らは不動産や現預金で資産をかなり持っているはずです(未上場が多いので具体的な数字は今回は拾いませんが)既に講談社がスタートアップに投資を始めているという説もあり、出版社は女性向けキュレーションメディアの有力な買い手となるでしょう。それ以外でも通信キャリアが興味を持ちそうだという説もある。

とはいえ100億以上で買うとも思えないので、ストレッチして30-50億レンジでの売却を狙うか、複数メディアを立ち上げて既存の出版社モデルを目指して上場を狙うかの二択といえそうです。

あやたん☆率いるペロリはmery事業を伸ばして売却にいくのか、ペロリ社なだけに「ポロリ」という新サイトでも出して出版社的な経営に舵を切るのか。どう転ぶのか楽しみにしております。

Gunosy木村さんも参加する、会員数275名突破のUmeki Salon
内容の参考:Gunosy木村氏の降臨、野村證券の近未来的なIPO時価格算定方法など

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230席ほぼ満席なんだけどね。キュレーションメディアサミット。
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