2013年1月組成のGlobis Fund IVは既に予想リターン4倍以上【ファンド・リターンズ②】

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非常に骨が折れるかつ執筆リスクも高いファンド・リターンズシリーズ2本目。前回のリターンがイマイチそうなIVPに引き続き、今回はグロービス・キャピタル・パートナーズ(以下GCP)の4号ファンドのリターン予測。

■ファンド概要

名称:Globis Fund IV, L.P.
組成:2013年1月(初回クローズ2013年4月、80億)
投資開始:2013年1月
規模:150億(予定・存続期間10年+延長期間2年と推測)
出典:グロービスHP
参考:Globis Fund Ⅲ(2006年組成、総額180億、存続期間10年+延長期間2年)
出典:グロービスHP

本来は3号ファンドのリターン予測をしたかったのですが、全ての投資先情報を拾うのがかなり大変そうだったため、まずは直近の4号ファンドから紹介。反響が大きければ3号もやってみますか。

ざっくり4号ファンドの所感を。

投資先:15社
予測IPO社数:6社
予測累計投資金額:42.5億
予測累計回収金額:196.5億
予測リターン:約4.6倍
期間:2013年1月〜2014年5月の投資先

多少、甘めに付けたところはあるかと思いますが、リターンは4倍程度と見込みました。ちなみにGCPはThe Startupの2013年VC of the Yearに選出されています。期待を裏切らなそうなリターン見込みです。

①:ランサーズなどスモールIPOと気になるnanapiの行方

スクリーンショット 2014-06-15 21.31.13■1:iQon

スタートアップ業界ではお馴染みのコーディネート投稿CGM。時価総額数百億円中盤以降にスケールするイメージが沸かないのですが、タイアップ広告などで売上を上げてきている印象。大手ECからの買収提案を断った噂もあり、その路線での買収がないのであればIPOを目指しているはず。とはいえ、上場時にはさほど時価総額は付かないと思う。100億前後で落ち着く感じで、アットコスメのアイスタイルと近しい規模感のイメージ。

■2:ネイルクリック

スタートアップではあまり馴染みのないサービス。僕ははじめて知りました。この市場はリクルートのホットペッパービューティーの市場がそれなりに大きいらしく、ネイルサロンの送客課金でそこそこのシェアを取れれば売上は上がるはずです。この辺、meryあたりはベンチマークすべきメディアでしょうね。グロービスHPにはレイター/Pre IPOフェーズとあるので、IPO確度が高いと予測。

■3:ランサーズ

The Startupでは触れてはいけない銘柄指定となっているはずですが、ここだけ外すわけにもいきません。大手証券会社や監査法人も付いていることから、上場確度が高いのだろうと踏んでいます。ただし、時期がいつになるかで、2015年中目処でしょうか。競合のあの会社が上場を急いでいるという話もあり、クラウドソーシング市場は目が離せません。社会的意義の高い銘柄でもあることから、ミニマムで上場時時価総額150億は付くと読んでいます。ちなみにクラウドソーシング市場ではリアルワールドの2014年中上場観測が出ています。

■4:nanapi

今回、判断に相当困ったのがnanapiです。nanapiは2010年に3号ファンドから3.3億の出資を受け、2013年7月に追加出資を受けています。3号ファンドの存続期間が10年であり、2015年中には高宮さんはnanapiをなんとかしたいはず。2年の延長期間はありますが。僕の見解ではあと2年そこらでIPOするレベル感まで持っていくのは難しく、携帯キャリアあたりへの売却になるのではないかと予測。nanapiの予測が今回最も難しかったです…。

②:スマートニュースのハイ・バリュエーションをどうする

スクリーンショット 2014-06-15 21.49.00■5:グリーンロードモーターズ

正直、クリーンテックやEV系は全然わからないんですよね。なので判断保留と置きましたが、この手のビジネスは当たれば大きそうですが、時間軸がよく読めません。テラモーターズなども同様ですね。メーカーなので初期投資がすごくかかりそうです。ファンド組成初期に投資しているので、存続期間ギリギリとなる2023年あたりで何とかなっていれば良いかもしれません。判断しかねるので、保留か回収不能としておきました。

■6:ホープ

企業と自治体の間に入るメディアを運営。正直、スケーラビリティがよくわからない。展開的に地方紙のようなローカルメディアのネットワークとかが可能になるのかも。とはいえ、IPOするほどのスケール感にはならない気がするので、そこそこの金額での売却と予想しておきます。事業モデルがわかりにくいので、HPから下記の図を貼っておきますのでご参考に。

スクリーンショット 2014-06-15 22.17.57

■7:スマートニュース

スマートニュースのハイ・バリュエーションをどう説明するか?というのは2013年スタートアップ業界のホットイシューでした。この質問は各々プレイヤーの考え方を知るのに良い踏み絵です。競合のグノシーが広告で売上をガンガン上げているのに対して、広告が上手く入る余地がなさそうで、広告を意識した設計ができていなそう。課金で取れるとも思えず、ここはかなり大胆予想ですが、上場後のグノシーへの株式交換での売却と予想します。売上を立てるためのロジックを持っていなそうです。売上予測を立てにくい中で、スマートニュースのハイ・バリュエーションを正当化するロジックは僕には見出せず、えいや!なディールな気がします。

■8:イタンジ

不動産領域のスタートアップは2013年から増えてきており、イタンジは調達額ではトッププレイヤーともいえます。ただ、HOME’SやSUUMOの牙城を崩せるほどスケーラブルなサービスとは僕には思えず、上場後のリクルートすまいカンパニーがさくっとM&Aしてくると予測しておきます。いくら動きがとろいリクルートといえども、SUUMOのような劣悪なUXのサイトがいつまでも繁栄するとは思っていないでしょう。イタンジの行く末はどんな感じか、文字通りイタンジの伊藤さんからコメントいただきたいところ。(伊藤さん、Umeki Salonでお待ちしておりますw)

③:メルカリの世界的爆発力に期待age

スクリーンショット 2014-06-15 22.32.37■9:ワンオブゼム

前回のIVP編でも厳しめのEXITで見積もったので、同様の評価を適用。gumiへの売却はあるのか。しつこいですが、国光さんのコメントをお待ちしております!w nanapi同様シリーズAは3号ファンドからの出資のため、早めに片を付けたいはずです。

■10:Viibar

動画クラウドソーシング。東洋経済オンラインでも予想EXITを発表していますが、動画制作市場は特殊な市場であり、総合型クラウドソーシングでは内包できないという見立ては以前から変わりませんが、とはいえ単体で上場できる規模感にはならないと思います。東洋経済オンラインではぬるめのレーティングで2018年くらいの上場とぼかしましたが、敢えてGCPの投資先であるランサーズが上場後に株式交換で買収と大胆予測しておきます。クラウドソーシングはバーティカルではキツいという見解はThe Startupでは以前から一貫していますが、動画制作だけはいけるかと思いましたが、規模感がやはり疑問。

■11:Quipper

この案件もシリーズAは3号ファンドから。経営陣が凄そうで、本社はロンドンベースですが、The Startupでは分野として懐疑的なEdTech領域です。EdTechはレアジョブのしょぼそうなIPOに代表されるように、上場する規模までにはならなそう。グローバルでよほど当たれば別ですが、課金イメージがあまり沸かず。KDDIと連携したアプリもあまり当たっていなかったとか。追加出資を4号ファンドから受けていますが、ベネッセからも既に出資を受けているため、良くてベネッセからの優先株で利益が出る感じの価格感での買収と予測。

■12:メルカリ

2014年のスタートアップ業界ではトップクラスの爆発力を誇るメルカリ。テラスハウスのキャストが出演するTVCMが地方の暇人層にぶっ刺さり、300万DL突破は記憶に新しい。14億調達のシリーズBではシレッとリードかコ・リードの位置を取り、高宮さんが社外取締役をゲット。実際は国内だけではなく、既に進出を始めている海外展開の成否が命運を握っているのでしょうが、進太郎さんならやってくれるはずだと信じ、予想上場時時価総額500億を付けました。かなり多くのVCがシリーズBで参画したので、これ1発でGCPのリターンはさほど多くはないでしょうが、後世に語り継がれるディールになることを期待しております。

④:Globis Fund IV最大のリターンはゲームのアカツキ?

スクリーンショット 2014-06-15 22.37.01■13:あそびゅー

リニューアルするんでしょうが、あまりUXが良いとは思えないサービスなんですよね。レジャー体験の予約サイトのような感じですが。メディアパワーを増せば送客課金で売上は立つのでしょうが、ちょっと現状のサイトはイマイチだなと素人目には見えます。これでかなり売上が立っているようでしたらごめんなさい。化けるかもなので、判断保留/回収不能と予測。

■14:スマイルワークス

グロービスHPによるとミドルステージの案件ですが、この手のB2Bサービスは手堅く売上が上がる印象。手堅く150億規模のIPOにはなるのではないかと踏みましたが、そこからのスケール感に疑問はあります。B2B全般にいえることですが、手堅いのですが爆発力はB2Cと比べると弱い印象。ちなみにこのサービス、はじめて知りました。

■15:アカツキ

最近、大型調達を実施。投資家がGCPとリンクアンドモチベーションのみで14億なので、GCPがリードでけっこう大きい額を入れたと推測。アカツキはIPO観測も耳にしており、IPO前のラストファイナンスでゲーム会社なのでTVCMに突っ込むと推測。レイターである程度の規模感と推測し、ゲームか今後爆発するか否かのボラティリティが高いですが、上場時時価総額をミニマムで200億程度と予測。

GCP投資先の半分以上はメディア。広告・コマースはゼロ

投資先15社のジャンル別投資件数を見ると傾向が掴めます。

■Globis Fund IVジャンル別投資先

メディア:5件(nanapi、ホープ、スマートニュース、イタンジ、あそびゅー)
メディアコマース:2件(iQon、ネイルクリック)
ゲーム:2件(ワンオブゼム、アカツキ)
クラウドソーシング:2件(ランサーズ、Viibar)
C2C:メルカリ
B2B:スマイルワークス
EdTech:Quipper
EV:グリーンロードモーターズ

メディアに集中的に張っている印象。僕のいう「メディアコマース」はやや定義が曖昧で、アフィリエイトや送客課金でのマネタイズを想定していますが、そう考えるとイタンジやあそびゅーもメディアコマースに分類できるかもしれません。クラウドソーシングに関しては総合型とバーティカル型でポートフォリオを組んでいる。

面白いのが広告やコマースの案件が1つもない点。インターネットサービスは「広告」「コマース」「コンテンツ課金(ゲームはここに入る)」と3つのキャッシュポイントがあると言われていますが、純粋なアドテクやコマース銘柄にGCPは張っていません。バーティカルコマースにはシリーズAラウンドのプレイヤーは軒並み1件は張っているのですが、オイシックスに3号ファンドで張っており、上場後に時価総額が伸び悩んでいるのを目の当たりにし、コマースは美味しくないことを悟っているのかもしれません。

現状のファンドポートフォリオではThe Startupの予測IPOは6件。アカツキ、メルカリ、ランサーズでの回収金額を20億以上と想定し、メディア関連ではプレIPO案件などの二塁打で地道に稼ごうという印象です。スマートニュースあたりが化けるとまたアップサイドがあるのでしょうが。ポートフォリオは上手く分散されており、想定から1、2社転けても、他で十分回収できる確度の高さです。僕がLPだったら確実に入れたいファンドです。

GCPはたしか日本国内に特化したファンドで、海外案件はありません。ファーストクローズで80億。ファイナルクローズで150億規模の予定とのことですが、実際のファンド規模はどれくらいなのでしょうか。まだ募集していたら、LPの皆さんは突っ込んでおいた方が良いとThe Startupからは推奨します。現状は40億強の投資金額で、堅めに見積もって4倍程度のリターンは出るだろうと踏みます。

さて、次はどこのファンドを予測しようかな…

【注意事項】

存続期間後に延長期間2年と推測すると、3号ファンドの2015年内EXITは急がなくても良いかもしれません。現実的にはEXITが難しいディールは株式譲渡でのEXITガ想定されますが、本予測においてはわかりやすく何かしらの形でのEXIT(売却の予測はけっこう強引)としております。

【免責事項】

本稿はThe Startupによる独自の予測であり、グロービスからの情報提供を受けた上での予測ではございません。あくまで予測に過ぎないことを、強調しておきます。

nanapiけんすうさんも参加する、会員数266名突破のUmeki Salon
内容の参考:Gunosy木村氏の降臨、野村證券の近未来的なIPO時価格算定方法など

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