関連記事ネットワークのOutbrainで、これからの「コンテンツ流通」の話をしよう

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日本国内ではGunosy、SmartNews、NewsPicksなどによるキュレーションサービスによるコンテンツ流通の話は昨年からくどいほどしてきた。こうしたキュレーションサービスによる良質な記事のPVが伸びやすい下地ができてきている。

米国のOutbrainというサービスの名前を知っている読者は相当業界の事情通であろう。知らなかったので調査してみた結果、Ourbrainはコンテンツ流通に革命を起こすことを私は確信した。いや、既に米国では革命になっているのだろう。

スクリーンショット 2014-01-12 21.14.58簡単にいうと、各メディアの記事下の関連リンクに他メディアの記事を表示させるサービスだ。メディアの記事下の関連リンクが主にCPCベースの広告枠となる。少しわかりにくいが、下記がCNNの記事下のoutbrain表示だ。

スクリーンショット 2014-01-12 20.22.55(上記画像をクリックすると記事に飛ぶ)右下のRecommended byがOutbrain。CNNの記事だが、左の関連リンクはNYTや日経の記事が並ぶ。右はCNN内の関連記事だ。

収益機会としてのOutbrain:関連記事は高CTRが見込める

まずメディアがOutbrainを導入した場合の話をしよう。例えばThe StartupでOutbrainを導入し、gumiに関する記事を書いたとしよう。すると記事下にはTHE BRIDGEやTech Crunchのgumiに関する記事が関連記事として並ぶことになる。(注:実際に関連記事として表示されるのはOutbrainのクライアントメディアとなる)

ヤフトピの関連リンクを閲覧するようなイメージだ。ヤフトピは提携メディアAから記事を引っ張ってきて、関連リンクはAの記事ではなくBやCの記事を並べる。(勿論Aの記事を並べることもある)

表示した関連記事に対して主にCPCでメディアには収益機会が発生する。関連記事のCTRを仮に1-3%で平均2%程度と置くと、1万PVで200クリックが発生する。ここの平均CPCがいくらか実際にわからないのが、この記事でOutbrian側が推奨するCPCが$0.15でありざっくり日本円でCPC15円とすると3,000円の収益が発生する。

これはアドセンスのようなリタゲ含むバナー&テキストと異なる収益機会を提供でき、バッティングするとはあまり言えない。関連記事枠はメディアにとって新たな収益機会となり、下手すればアドセンスより儲かるかもしれない。これは我々のようなメディア運営者にとってはお涙頂戴ものの革命だ。記事本数が多ければ多いほど収益機会が増える。Outbrain導入によりブログメディアの収益性がグッと上がれば、外部メディアに寄稿して原稿料を得るよりも収益性が上がるかもしれない。

ちなみにMakerZineの記事によると下記のような米国の主要オンラインメディアが既に導入している。

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記事流通措置としてのOutbrain:買える貴重な流通手段

記事を提供する視点で見てみよう。記事を提供する側にとっては、当然ながら1記事あたりのPVを最大化したい。これはどのメディアも思っていることであり、ライバルメディアの関連リンクに表示させてでもPVは欲しい。Outbrainへの出稿金額とそのトラフィックによる自社媒体の広告費増のバランスを取る必要はあるが。

記事流通措置としてのOutbrainに注目するのはいわゆる旧来的なメディアではなく、オウンドメディアの方かもしれない。企業が運営するオウンドメディアが今後増えていく流れにあるのは間違いがないが、コンテンツ量が爆発的に増えていくなかで、良質なコンテンツを創ることと同様に、コンテンツの流通チャネルも戦略的に押さえる必要がある。

良い記事を書けば勝手にバズってくれるというような、お祈りマーケティングではなく、露出を増やしたい記事を設定しOutbrainを利用して積極的に仕掛けていく。既にFacebookページでも特定の投稿を広告費を払って露出を増やすという仕組みがあるが、あれに近しいイメージだ。

日本でいうとGunosyやSmartNewsに載るために対策することは現状ではほぼ不可能といえるが、OutbrainやFacebookで金で買って露出を増やすというのは自分たちでコントロールが利く露出方法であり、ニーズは高いと思われる。記事露出のベストケースとしては、リリース後にOutbrainやFacebookで露出を掛け、GunosyやSmartNewsに飛ぶという形であろう。

蛇足だが、記事の露出機会を意図的に増やせる時代においては戦略的にこの記事の露出を増やしにいく。という観点ではネイティブアド(記事広告)の価値も向上しやすいのではないか。極論するとOutbrainへの出稿額とネイティブアド執筆者へのPV連動成果報酬の差分がマイナスにならなければ良い。

2014年にIPOも噂され、日本展開も開始予定

最後にユーザー視点でOutbrainを見ると、そのメディアの記事だけではなく幅広いメディアの関連記事が表示されることは読者にとって明らかに有益である。メディアも広告主も読者もトリプルウィンな良いビジネスである。

そんなOutbrainだがCrunch Baseによると2013年10月にシリーズEで$35Mを調達しており、累計では$99Mを調達している。この記事では2014年中のIPOも噂されている。アドタイの記事によれば既に日本法人を設立しており、2014年春から日本展開を予定している。

私もOutbrainの春を享受したいと、ZipファイルをDLしてWPプラグインで入れてみた。おそらく日本語のメディアでは関連記事表示も日本語メディアで出す必要があり、Outbrainのクライアントメディアが表示される(であろう)ロジックなので、クライアントメディアがいない状態では他メディアの関連記事表示ができないのであろう。

自社メディアの関連記事は表示され、Outbrain経由で侮れないトラフィックがある。しかし、関連記事を選ぶロジックは相当適当で、関連あるのかよというレベル。しかも毎回関連記事が変わる。だが記事下の関連記事表示はテコ入れの余地があるので、導入しないよりはお勧めか。

ちなみにOutbrainはMarkeZineで「ネイティブアドのネットワークでしょうか?」と質問されていてそれを否定しているが、英語記事では「コンテンツ・ディスカバリー・プラットフォーム」と紹介されており、その一部にネイティブアドネットワークとしての側面もある。という理解が正しいように思える。

とにかくOubrainやコンテンツ・ディスカバリー・プラットフォーム(本誌ではわかりやすく、記事タイトルを「関連記事ネットワーク」としたが)の到来は我々メディアの人間にとっては春を意味するであろう。是非この分野の知見があるであろうCyberTimesの柴田さんにもこの辺のネタを記事化して見解を伺いたいものである。

僕らの未来は、そんな悪くないよ。


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